発掘ニュース

No.034

2014.11.28

情報番組

『松下幸之助ライブラリー』から“お宝”!

『経営の神様』と呼ばれた松下幸之助さん。その松下幸之助さんが出演した数々のNHK番組を提供いただきました!

これまでご紹介してきたビデオテープとはちょっと違う「DVCPRO」という形式のテープです。主に放送や業務に使うことの多いこのテープ、一般的なVHSと比べると…

ご覧のように、かなり小さいのが分かります。
提供してくれたのは、松下さんが創設した、出版事業を主に行っているPHP研究所です。松下さんご本人が『話上手になりたい』という理由から、社内会議や講演会、頼まれた他の会社のスピーチまで全ての話を記録するよう指示していたとのことです。

最初は自らの会社で作った録音デッキを使い、6ミリテープやカセットテープで音声のみを記録。それ以前は速記をとりチェックしていたそうです!ビデオができてからは映像も残すようになりました。

今回提供していただいた中で、一番古い番組はというと…

今から48年前、1966(昭和41)年の『勤労感謝の日』11月23日に放送された「あすは君たちのもの 汗と笑顔-私たちは働く-」という番組です。この番組は毎週水曜日の午後6時から、子供たち向けに放送されていたもので、これまで1本も保存がありませんでした!

画面の四隅を見てみると黒い部分があります。この映像は、テレビ画面をフィルムで撮影した“キネコ(キネレコ)”という方法で残されたものだと考えられます。

冒頭、司会の阿部喜充アナウンサーが「今日は勤労感謝の日ですね。皆さん働くっていうことについて考えてみたことありますか?」とテレビの前の子供たちに語りかけます。

そして松下幸之助さんの登場です。
阿部アナ「松下さんは日本の産業界の第一人者でして、家庭用電化製品の大きな会社を経営していらっしゃいます。小さい時から働くということをご経験なさっている、いわば働くということについての大先輩です。この11月27日で満72歳のお誕生日を迎えられます。」

まず“働く”ことについて、スタジオに出演している子どもたちの体験を紹介します。

東京・墨田区の町工場で生まれ育った小学3年生の女の子は、モーターの部品づくりの仕事を手伝っています。家族そろって和気あいあいと仕事をしている様子が描かれ「私がお手伝いをする時、とても楽しいのです」と作文を読み上げます。

そして新聞配達をする横浜の小学6年生の男の子です。「初めてのお給料…すぐ封筒を切った。500円だ!折り目一つない新品の500円札だ。初めて自分の体で新聞配って稼いだこのお金、おれが自由に使えるんだ!…」

幼いころの自分と同じように、すでに“働く”喜びを感じている子供たちに感心する松下さんが語りかけます。

「人間というものは働くということ自体が喜びなんです。ずっと遊んでいなさい、お金をあげますからという立場になっても決して楽しいものではない。…人間というものは勉強するか働くか、そういうように出来てるんです。そしてその働きにはお金も儲かるようになっている。お金よりも働くことが楽しいんです。」

さらに私たちが注目した“お宝映像”はというと…

この番組です!「70年代われらの世界」

冨田勲さん作曲の「青い地球は誰のもの」というテーマ曲を覚えている方も多いかもしれません。子供たちが駆け寄ってくる印象的なオープニングです。

70年代から21世紀にかけて予想される様々な問題を世界的視野で取り上げた大型番組で、毎月1回、5年半にわたって放送されました。残念ながらNHKには多くが保存されていません。

提供いただいたのは1975年11月27日放送の「大学卒~高学歴社会と職業~」という回です。
番組は、学問の神様として知られる東京・湯島天神の絵馬からスタートします。

「天神様といえば学問の神様と決まっていますが、今年はどうしたことか就職祈願の絵馬がさがること、さがること。拝んでいくのが、これすべて大学生でございます。」

えっ?!これって、もしかしてつい最近の放送??…と思ってしまいました。

内定率は42%!近年の“就職氷河期”と比べても驚きの数字です。
70年代ならではの特徴はこちら…文科系、理工系別の内定率。

ナレーションは、「いわゆる高度経済成長の波に乗りました理工系ブームというのが、ここにきて下火になったのではないかと考えられています。」と続きます。

司会は鈴木健二アナウンサー。
大学進学者が激増していることを“人口爆発”ならぬ“大学爆発”だと例えたうえで、そうした人たちの卒業後の受け皿が社会には無いことを明らかにしていきます。

大学で地理学を専攻し建設会社にいったん就職、その後、職業訓練校に通って自動車整備工の技術を身に付けた男性や、商学部出身で焼き鳥店の店員として就職した男性などを取材。さらに各種学校の人気が高まっている現状を伝えます。

日本の先を行くアメリカの取材では…

閉鎖された大学や…

職業教育に力を入れたコミュニティーカレッジをリポート。取材した公立の短期大学では様々なコースがあり、学生の平均年齢は33歳。一度社会に出て再び勉強している人が多いといいます。

いかがですか?『歴史は繰り返す』…そんな言葉が40年前の社会問題を取り上げたこの番組を見て頭に浮かびました。

この番組でも松下幸之助さんが意見を求められ、「大学に行くのは5人に一人程度が良いのではないか」という持論を述べています。

このほか提供いただいた番組は…
●「経済展望 国際化時代と企業経営」<1967年>
●「これからの中小企業 企業経営へ提言する」<1967年>
●「総理と語る 第15回 明治百年に思う」<1968年>
●「経済展望 国際化社会の企業経営」<1969年>
●「視点 インタビュー わたしの危機脱出論」<1978年>
●「スタジオ102 新国土創成論について」<1980年>
●「ニュースワイドきんき 松下さん米寿」<1981年>
です。

『経営の神様』と呼ばれた松下幸之助さんが出演された番組は、どれも時代の最先端の話題そして問題点を取り上げています。

その時代の社会問題を切り取った番組の「発掘」は、歴史とともに、現代を映す鏡としての「発見」があると感じた今回の発掘でした。

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