ページの本文へ

NHK青森WEB特集

  1. NHK青森
  2. 青森WEB特集
  3. カメムシ 家への侵入防ぐには?

カメムシ 家への侵入防ぐには?

  • 2022年01月20日

青森市のペンネーム、らいあんさんと、十和田市の澤田久子さんのお二人から去年(2021年)10月に投稿が寄せられました。

私はカメムシというと、臭いにおいを放つ昆虫という程度のことしか知りませんでした。まずは、カメムシに詳しい専門家を探すところから、取材はスタートしました。

取材に協力してくれたのは…

今回、取材に協力してくれたのは、殺虫剤などで知られる大手製薬会社のアース製薬です。
忠臣蔵の赤穂浪士で有名な兵庫県赤穂市に、カメムシをはじめ、さまざまな害虫を飼育している施設があると聞き、見学させてもらいに行きました。

出迎えてくれたのは、殺虫剤の効果を確かめるために使うゴキブリやハエなどの害虫の飼育に20年以上携わってきた有吉立さんです。この飼育施設ではゴキブリ100万匹、ハエや蚊がそれぞれ5万匹、カメムシが1500匹飼育されています。

白い幕に覆われた部屋

有吉さんにある部屋に案内されました。
部屋に入ると目の前は白い幕に覆われていました。
幕を開けてもらうと、目の前には数え切れないほどのゴキブリが…。

4畳半ほどの部屋にゴキブリが60万匹飼育されているということです。

私自身、これだけの量のゴキブリを目にすることは初めての経験で、言葉を失ってしまいました。部屋の中に入ることもできるということでしたが、私は入ることができませんでした。

有吉さんによりますと、部屋の中は25度から26度に設定されていて、ゴキブリ独特の臭いがするということです。また、これだけの量のゴキブリなのでカサカサという羽がこすれるような音が聞こえるということです。

臭いの原因は分泌液

次に施設で飼育しているカメムシを見せてもらいました。
日本にカメムシはおよそ1500種類いるということですが、施設では5種類ほどを飼育しています。

手に取って臭いを嗅いでみましたが、パクチーやドクダミに似た臭いがしました。
この臭いの原因はカメムシの左右に3本ずつある脚の真ん中、中脚の付け根から出る分泌液です。

カメムシは危険を感じて敵を威嚇したり、仲間に危険を知らせたりするために分泌液を出すということです。

アース製薬 生物研究課 有吉立 課長
カメムシの分泌液は皮膚に触れると、炎症を起こしたり、肌が黒ずんだりすることもあります。カメムシに触れる前に、カメムシが分泌液を出す前に対処する必要があります。

越冬場所を求めて家に

ここからはカメムシが家に入らないようにする対策について、有吉さんと、この会社で最もカメムシに詳しいという野村拓志さんに教えてもらいました。

Q1、カメムシを秋によく見かけるのはなぜ?

有吉立さん
カメムシは成虫のかたちで越冬しますが、越冬場所を求めて、家に集まってきます。自然界であれば、木の割れ目などで越冬しますが、家のほうが暖かいし、入りやすいので家に集まります。カメムシは秋になると越冬するために家に集まり、見る機会が増えるのも秋です。

白い物に集まる習性も

Q2、カメムシが洗濯物につくことが多いのはなぜ?

アース製薬 研究業務推進室 野村拓志さん
カメムシは白い物に集まる習性があります。洗濯物、白いタオル、ふとん、ワイシャツなどにつきます。

有吉立さん
白い物は光を反射します。太陽光を反射して、そこにカメムシがいると、カメムシは白色じゃないので、カメムシに光が当たって、自分自身が暖かくなるため、白い物を好むとも言われます。いろいろな説があります。

3ミリの隙間でも家の中に侵入

Q3、家の中への侵入を防ぐには?

有吉立さん
カメムシは扁平、平べったいかたちをしています。3ミリくらいの隙間があれば、家の中に侵入してしまいます。網戸は3ミリぐらいの隙間が開いてしまうことが多いです。まずは網戸や窓をきちんと閉めること。網戸に破れがないかもチェックしてください。侵入防止剤というものも市販されているので、窓枠などに吹きかけることも有効です。

刺激を与えないように追い出す

Q4、家の中でカメムシを見つけてしまった場合は?

野村拓志さん
刺激を与えると臭いを出してしまうので、刺激を与えないように追い出すというのが原則です。例えば、ガムテープをカメムシの背中に貼って、臭いを出す前に丸めて捨てる。カメムシ専用のスプレー剤も売っています。冷却効果がありますので、臭いを出す前に冷却させて仕留めるということもできます。カメムシが越冬のために家の中に入ってきても、昔は家の中も寒かったので休眠しましたが、最近の家は過ごしやすく、暖かくなっています。家の中で見かけることもありますので、ガムテープやスプレー剤などで対処してください。

アルコールと石けんの二段階で手洗いを

Q5、カメムシの臭いが手などについたら?

有吉立さん
カメムシの分泌液には油で溶ける成分と、水に溶ける成分が混じっています。石けんだけで洗っても、臭いがなかなか取れません。化粧品のクレンジング剤や、消毒用のアルコールで油に溶ける成分を落としてから、石けんで手洗いをすると、だいたいの臭いは落ちます。二段階で洗ってください。

コロナ禍で害虫への関心高まる

この大手製薬会社ではコロナ禍で殺虫剤などの売り上げが増えているということです。外出自粛やテレワークなどにより、自宅で過ごす時間が増え、ふだんは目にとまらなかったような害虫が気になるなど、害虫に対する関心も高まっているということです。

いっぽうで、この会社では殺虫剤の開発などのために犠牲になった害虫については、飼育施設のある兵庫県赤穂市の寺で供養を行っているということです。僧侶がお経を読み上げ、社員が焼香するほか、社員が折り紙で作った蚊を1000匹連ねた「千匹蚊」を奉納するなどして、弔いと感謝の気持ちを込めているということです。

今回、取材に対応してくださった有吉さんは、もともとはゴキブリをはじめとした虫が大嫌いだったということですが、虫との共生について次のように話してくれました。

有吉立さん
人間に害を与える、例えば感染症を媒介するような蚊やダニなどはきちんと対策をしなければなりません。一方で、家の外にいて、人間に害を与えないような虫まで駆除してしまったら、生態系も崩れてしまうと思います。人間に害を与える虫と、そうでない虫とは区別しなければなりません。そのためには知識が必要で、より多くの人に虫について興味を持ってほしいと思います。

  • 梅本一成

    記者

    梅本一成

ページトップに戻る