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階上町は揺れやすい?その理由は?

  • 2021年12月09日

質問を寄せてくださったのは八戸市にお住まいの「令和のかんくん」さんです。

私自身(=長谷川記者)、青森県に転勤してから1年がたち、たびたび地震の取材にもあたってきましたが、確かに三八地域で地震が多く、特に階上町での揺れが大きい印象はありました。11月から八戸支局に異動になり、この地域の取材を担当するにあたり、その謎を調べてみることにしました。

東日本大震災のあと地震の回数増える

まず、調べたのは三八地域で地震が多い理由についてです。ここ最近では10月6日の深夜に岩手県沖を震源とするマグニチュード5.9の地震が起きました。この地震で最大となる震度5強の揺れを観測したのも階上町でした。

三八地域が面する太平洋側での地震が増えていることはデータの上からも裏付けられています。

こちらのグラフは岩手県沖で発生したマグニチュード3以上の地震の回数を示したものです。縦線が地震を示していて、線の数が多いほど、多く地震が起きていることを意味しています。

ある時点を境に線の密度が濃くなっていること分かります。その境目が10年前に起きた東日本大震災です。震災のあと、地震活動が増えていて、県内でも三八地方を中心に揺れを観測する回数が増えています。

地震の回数と時間帯の関係性は見られない

地震が夜に多いのではないかという2つ目の質問についてです。確かに深夜に地震が起きて、取材に飛び起きるという経験が多いような印象もあります。

気象台に確認しましたが、時間帯によって地震の回数が増えたり、減ったりするなどデータはなく、関係性は見られないということでした。

震源地から遠いのに階上町が揺れる

3つめの質問は、階上町は揺れやすいのかどうかというものです。10月6日の地震では、階上町だけが最大震度の5強を観測しました。

この地震の震度分布を見ると、震源地から近い岩手県よりも階上町のほうが、震度が大きくなりました。ほかの地震でも、震源地に近い場所よりも、階上町のほうが、震度が大きい例が数多く確認されています。

地元ではどう受け止められているのか、階上町の人たちに聞いてみました。

いつもどこよりも階上町の揺れが強いから、とても不安です。

階上町がどうしても揺れがいちばん強い。

階上町が揺れるのは地盤が関係

なぜ、階上町は大きく揺れるのでしょうか?階上町の震度計は、道仏にある町役場の敷地内に県が設置しています。

実は10年前までは、役場の中でも、国道のより近くに設置していました。県は国道を大きな車が通ったときの振動などが、震度計に伝わっている可能性があると考え、場所を変えたのです。

しかし、震度計の位置を変えても階上町の震度がほかの地域よりも 大きくなる傾向は続いています。

弘前大学大学院の片岡俊一教授は、階上町がなぜ大きく揺れるのか、長年研究を進めてきました。

着目したのは、町役場周辺の地盤です。比較的柔らかい火山灰や、シルトと呼ばれる砂より細かい粒の層などが、厚さ10メートル以上にわたって堆積しています。

片岡教授は、この地盤が揺れ方に影響しているのではないかと考え、おととし、町内の別の固い地盤に震度計を設置し、16回の地震の震度を比較しました。その結果、役場の震度計の方が平均して0.6、震度が大きくなりました。

弘前大学大学院 片岡俊一教授
階上町の震度観測点は周辺の観測点に比べて揺れやすい。その理由は火山灰など、火山から出てきたものが堆積しているからと考えている。

片岡教授によりますと、階上町の震度がほかの地域より大きくなる傾向にあるのは、地盤が大きく影響していると考えられるということでした。

階上町役場周辺には、こちらの写真と同じような柔らかい火山灰の地層が厚く堆積しているため、揺れが大きくなると考えられています。

また、気象台によりますと、定期的に震度計を点検していて、設置場所も国が定めた基準を満たしているということで、震度計が壊れていたり、設置場所が悪かったりというわけではないということです。

揺れやすい地盤はほかの地域にも

揺れやすい地盤があるのは階上町だけではありません。

八戸工業大学で地盤の研究をしている金子賢治教授が作成した八戸市の地盤を示した地図です。赤が揺れやすく、黄色が揺れにくい地盤です。「令和のかんくん」さんがお住まいの八戸市内でも揺れやすい地盤が広範囲にわたっていることが分かります。

八戸工業大学 金子賢治教授
八戸周辺、南部地方の地盤の大きな特徴の1つは十和田湖などの噴火で発生した灰が堆積して、風化したような火山灰性粘土、別名「ローム」と言っているようなものが広く厚く堆積している。三沢市や階上町など、周辺の地域でも同じような傾向にある。

十和田湖はもともと火山の噴火で陥没した部分に水がたまってできた湖で、過去の噴火の火山灰などが周辺の八戸市などに堆積しています。地震に備えるためには、身の回りの地盤がどうなっているのか知ることが大切です。

住んでいる地域の地盤の確認を!

自分が住んでいる地域の地盤については、国のホームページで知ることができます。

これは政府の地震調査研究推進本部が公表している、各地の揺れやすさを色分けした地図です。赤いところが揺れやすい場所ですが、これによると三八地域だけでなく青森市の中心部や五所川原市、それにつがる市なども比較的揺れやすい土地であることが分かります。

https://www.jishin.go.jp/main/chousa/20_yosokuchizu/yosokuchizu2020_chizu_22.pdf
※東北地方の揺れやすさを示した図は、こちらのPDFの99ページ。
※NHKサイトを離れます。

気象台では、こうしたデータを参考にして、日頃から備えをしてほしいと話しています。

青森地方気象台 小田嶋孝一 防災管理官
発表した震度がすべてではない。揺れが強い地域もあれば、そのすぐそばで揺れが所もあるので、ご自分が住んでいる土地が揺れやすいほうに該当するのか、揺れにくいほうにがいとうするのか、こうした地図を拡大して把握しておくのが防災の1つの方法だと思う。

地震は、地盤だけでなく、建物の強度によっても揺れ方が大きく異なります。ぜひご自身と関係のある場所の地盤や建物の強度を確認してみてください。

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