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ひとり親世帯を支援!無料の"おすそ分け便"を知ってますか?

  • 2021年06月23日

皆さんの声に耳を傾けるナノコエ。
今回は、コロナ禍でのひとり親世帯への支援についてです。 
ことし3月、仕事帰りのスーパーでふと目にした「子ども食堂中止」のチラシ。 
子ども食堂と言えば、ひとり親やその子どもたちが無料や安い値段で、食事を提供してもらえる場です。 
コロナ禍でひとり親や子どもたちには深刻な影響が出ているのではないか。
そう思った私は、ひとり親世帯などを支援する団体の担当者に話を聞くことにしました。

話しを聞いてみるとやはり深刻な相談が寄せられていました。 
「失業してしまった、仕事はしているんだけど時短になって時間外手当が減った。水道光熱費も払えていないという声も多かったです」と支援団体の担当者は話していました。

青森県全体ではどんな状況なのか。県のこどもみらい課に取材すると、去年、ひとり親を対象にしたアンケート調査を実施していたことがわかりました。

収支は「赤字」が6割以上

ひとり親の人たちに新型コロナの家計への影響などを聞くこの調査には900人余りが回答。 
家計の年間収支見込みを聞いたところ、貯蓄を取り崩してもやりくりできない「大赤字」や貯蓄を取り崩さないと生活できない「赤字」と回答した世帯が全体の6割以上を占めていることが分かったということでした。

県の担当者 
「収入が減っている上に格安で食事を提供する子ども食堂の活動が難しくなり、利用できなくなってさらに家計が苦しくなると訴える人もいた」

“おすそ分け便”って?

これでは食事も満足に取れないという家庭も出てきてしまいそう…。 
コロナ禍で経済的に困窮するひとり親世帯への支援は、何かないのか。 
県の担当者に聞いてみると、各地の社会福祉協議会が始めた「おすそ分け便」という取り組みを紹介してくれました。

いったいどんな取り組みなのかと聞いてみると、企業や一般の人たちからの寄付で集めた食品などを2か月に1度、ひとり親世帯や生活に困っている世帯に無料で配る取り組みだといいます。 
去年から、三沢市や五所川原市、八戸市、青森市で始まっていて、5月末までにのべ1万人以上が利用したということです。

詳しく聞いてみると好きな食品などを選んで持ち帰ることもできるといいます。 
“好きなものを選んで持って帰れる…?”。 
どんな風に行われているのか想像がつかなかった私は、ほどなく五所川原市社会福祉協議会が「おすそ分け便」を実施すると聞いてその様子を取材することにしました。

いざ!“おすそ分け便”へ!

“おすそ分け便”で食品などの無料配布が行われるのは五所川原市地域福祉センター。 
午後2時からのスタートでしたが、開始15分前に私が行くと行列が外にまで伸びていて、なんと100人以上が並んでいました。

話を聞いてみると…。

参加した母親 
「知り合いから勧められたので。助かりますよね」。

参加者の5歳の女の子 
Q.どんなお菓子がほしい? 
A.「お菓子!ポテチ!」

開始時刻の午後2時になり会場の中に入ってみると、米や卵などの食料品からトイレットペーパーやおむつなどの生活用品までずらりと並んでいました。 
誰もが知ってるあの牛丼チェーンが寄付したできたての牛丼も。 
会場にある食品などは1000点以上!! 
訪れた人は会場の入り口で30センチほどの大きさのレジ袋を受け取っていました。 
この袋に入る分なら何でも好きなものを選ぶことができる仕組みなんです。 
食品などを受け取った人に話を聞いてみると。

参加した母親 
「すごいありがたいなあって。助かるのひと言」

参加した母親 
「アイスクリームやお米をもらいました。こども4人いるからもう食料はいくらあっても。上が高校に入ったらもう制服代とかで児童手当入ってきても全部それに持って行かれるのでしんどい。毎月でもやってほしい」

2か月に1度。理由は?

ただ、この取り組みは2か月に1度。 
食べ物は毎日必要だから、2か月に1度だと頻度が少ないのでは…。 
五所川原市社会福祉協議会で“おすそ分け便”を担当している藤田幸裕さんに疑問をぶつけてみると、2か月に1度としているのは、食品や配布にあたるボランティアを募集するのに時間がかかるためだと教えてくれました。 
さらに、藤田さんは、“おすそ分け便”には食品を配るということ以外の別の目的もあるといいます。

五所川原市社会福祉協議会 藤田幸裕さん 
「ひとり親やお困りの人たちは、悩みがあっても相談相手がおらずひとりで抱え込むことが多くなってしまうんです。社会福祉協議会はそういった人たちと、この“おすそ分け便”を通してつながり、さらなる支援の手を差し伸べようと考えています

多くの人と「つながり」を持とうと食品などの宅配も行っているということで、宅配の現場も取材させてもらうことにしました。

宅配について行ってみた

この時、食品が届けられるのは五所川原市内のひとり親世帯120軒。 
社会福祉協議会の職員から袋いっぱいに入った食品が、民生委員などのボランティアに手渡されていました。 
私は今回初めて“おすそ分け便”の宅配をするという民生委員の男性に同行しました。 
自家用車に乗り込んで1軒1軒訪ねて配っていきます。

小学5年生の娘を1人で育てる中屋敷仁美さん(40)のお宅にも食品を届けました。 
男性は「社会でひとり親を応援しているので、頑張って下さい」と声をかけます。 
手渡した袋にはお米やパスタ、子ども向けのお菓子が入っていて、中屋敷さんはたくさんのお米が入っていることに感謝している様子でした。

中屋敷仁美さん 
「助かります。こどもと2人暮らしで、世帯の収入も少なくて食べるもの着るものに困ることもあったので、チラシを入れてもらえているので、どういうところにいけば活動について知ることができますかとかお顔を直接みて聞けるっていうのもいいと思います」

中屋敷さんは、チラシで紹介された地域の交流イベントに参加してみたいと話していました。 
また男性は、中屋敷さんとは初対面だったということですが、近くに住んでいるということもあり今後は定期的に会いにいきたいと話していました。

こうした取り組みについて社会福祉協議会の藤田さんはこう話していました。

五所川原市社会福祉協議会 藤田幸裕さん 
「自分が困っている状況というのは人に話すだけでも勇気が必要だと思います。なので、まずは、我々の顔を見てほしい。なにかあったら顔を合わせて相談に乗れる態勢がありますから」

現場を取材して 
五所川原市社会福祉協議会によると、「おすそ分け便」を利用した人から、子どもの入学金が支払えなくて困っているという相談があり、支援制度を利用して入学金を支払えるよう支援したということです。今回、多くの人の声を聞かせてもらいましたが、ひとり親の皆さんとの”つながり”をさまざまな形で作っていくことが重要だと感じました。コロナ禍で顔を合わせて話をする機会が少なくなる中でも、こうした取り組みのように、ひとり親の方が相談しやすい仕組みを作ることが大切だと感じました。

  • 森谷日南子

    記者

    森谷日南子

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