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「結構、高い!」学校の制服 青森の親を悩ます制服の価格を探ってみた!

  • 2021年04月12日

皆さんの声に耳を傾けるナノコエ。今回は制服の費用について考えます。

青森県内では4月7日に、ほとんどの小・中・高校で入学式が行われました。新入生は、真新しい制服を着ていましたが、どれくらいの費用を負担しているのか?新型コロナの影響で収入が減る家庭が少なくない中、家計への影響も大きいのではないかと考えました。

制服おいくらでした?

皆さんに話を聞くため、3月20日、青森市内のショッピングセンターにある制服の販売店を訪ねました。県立高校の再募集の合格発表の翌日で、この春、高校に入学する予定の生徒と保護者でにぎわっていました。

「結構高かったです。制服上下1セットずつとブラウス何枚かで、8万円か9万円くらいです」

「学生服の上下1着と夏用のズボンを1本購入する予定です。6~7万円くらいになります」

別の保護者にも話を聞きましたが、毎日のことを考えると、制服の値段は高いものの、あったほうがいいという意見が多かったです。ただ、入学時に制服だけで10万円近い費用がかかるのは、出費が大きすぎるという声が多く聞かれました。

全国一高い?青森の制服

ほかの都道府県でも同じように制服は高いのか、調べてみました。総務省は物価の動きを把握するため、さまざまなモノやサービスの価格を調べる小売物価統計調査を行い、その結果を毎月発表しています。

その中に全国の都道府県庁所在地の公立中学校の制服の価格を調べたデータがありました。

ことし2月の結果を見ると、青森市は男子が全国3位、女子は全国1位と、飛び抜けて制服の価格が高いことがわかりました。全国平均と比較しても男子はおよそ1万4000円、女子は1万6000円も高くなっています。

なぜ、こんなに高いのでしょうか?

公正取引委員会の異例の提言

業者間の競争原理があまり働いていないことが考えられます。

4年前に公正取引委員会は公立中学校の制服の価格が高いとして、価格を引き下げるため全国の学校や自治体に異例の提言を行いました。

この中では、制服メーカーを選定する際にコンペや入札を導入したり、販売店の数を増やしたりして、業者間の競争を促すこと。そして学校ごとに異なる制服を共通化することを通じて、価格を引き下げることを求めています。

青森市の教育委員会に取材すると、保護者から制服が高いという声は聞くものの、こうした取り組みは特に行っていないということでした。

制服リユースで家計を支援

学校生活には欠かせない制服を、もう少し安価に、必要な人に届けたい。八戸市で不要になった制服を引き取って、格安で販売するリユースショップが去年12月にオープンしました。

店を経営しているのは、3人の子どもを持つ池田理知子さんです。池田さんは、もともと去年3月まで八戸市内で営業していた別のリユースショップの利用者でした。しかし店が閉店することを知り、自分で店を開くことを決意しました。

「私自身がすごく助けられましたし、店を必要とする人はたくさんいるということが、周りのお母さんの声を聞いてわかっていたので、それが決め手です」

店内には不要になった人から買い取ったり、譲り受けたりした制服や体操着などおよそ1000点が並んでいます。八戸市とその周辺、それに岩手県の幼稚園から高校までの制服などを取りそろえていて、価格は新品の4分の1ほどです。

シングルマザーや転勤族も

店にはさまざまな事情を抱えた人たちが訪れます。

中3になる次女の制服を買いに来た母親 
「次女は姉の制服を2年間着ていましたが、3年生になって、サイズ的に無理かなと思い、新品の購入も考えましたが、金額を見たら無理かなと思いました」

4人の子を持つシングルマザー 
「次男は体が大きく、体操着が次々に小さくなるので助かっています。1回閉店したので、池田さんのおかげで助かっています」

小学校1年生になる子の母親 
「1学期を終わるころが転勤の時期で、もしかしたら3か月くらいしか体操着を着ないかもしれない。リサイクルでお安く買えるのは魅力的です」

いっぽう、子どもの制服を役立ててほしいと持ち込む人も大勢います。 
私が取材した日には、およそ20キロ離れた六戸町から娘の制服を持ち込んだ男性もいました。

「捨てるにしのびないし、ほかの人の役に立てばいいと思いました」

池田さん「少しでも力になりたい」

池田さんは今後、制服の回収ボックスを企業に置かせてもらうなどして、制服のリユースをさらに広げたいと考えています。

「みんなが新品を買えるわけじゃなく、多額の費用がかかることを知って驚くお母さんたちが多いです。私も同じ母親なので、その大変さもわかるし、シングルマザーだったらもっと大変なのは分かるので、少しでも力になれたらうれしいです」

※フリマアプリなどでは、青少年保護の観点からクリーニング済みであっても使用済みの制服の出品を禁止しています。池田さんの店でも制服を売買する際は、運転免許証などの提示を求めています。

制服リユースの窓口となる自治体も

池田さんのように個人で運営するリユースショップは全国的に増えていますが、在庫管理や利益確保の面で難しい面があります。そこで自治体がリユースの窓口となる地域もあります。

福岡県の古賀市では2007年度から教育委員会が制服のリユースに取り組んでいます。

市内3つの中学校と近隣の高校の制服について、不要になった人から提供してもらったうえで保管し、必要な人に譲っています。提供する側と譲り受ける側、いずれも金銭のやりとりはありません。

制服を買い求めやすい取り組みを

義務教育では原則として指定された学校に通うため、制服を選ぶことはできません。青森市の公立中学校の制服の価格がここまで高いのはおかしいと感じました。学校や教育委員会は少なくとも全国平均の水準まで価格を下げる取り組みを進めるべきだと思います。また、取材を通して、制服を簡単に捨てられず、手元に置いている人も多いと実感しました。そうした制服を必要とする人に一着でも多く届ける仕組みを整備する必要があると思いました。

  • 梅本一成

    記者

    梅本一成

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