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青森はなぜ『青森』?由来を調査しました!
佐藤裕太(記者)
2022年10月24日 (月)

今回のナノコエは、八戸市の猫「千葉のぞみ」さんの飼い主さんから「『青森』の名前の由来を教えてください」という質問をいただきました。
「青森はなぜ『青森』なのか」。
素朴な疑問ですが、青森駅前で聞いてみると…。
「私も生まれてから青森にずっといますけど、そこまで深く知り得ることはなかったですね」。
「子どもの時から住んでいますけれど、全然わからないです。森林が多かったとかですかね…。イメージとしては、やっぱり八甲田の方とか」。
「青池と森があるから?海の青とか?わからないけど、適当です」。
さまざまな答えが返ってきました。
「名前の由来は意外と知られていない?」と思い、取材をはじめてみると、青森の歴史を研究する人たちが「『青森』の由来なら、あの人に聞くのがいい」と口を揃えて名前を挙げる人にたどりつきました。
「青森」の由来ならあの人
青森市民図書館歴史資料室の工藤大輔室長です。
青森の歴史について研究して20年以上です。
「青森の名前の由来は?」との質問に対してまず次のように答えてくれました。
「青森という地名の由来になる青い森っていうのが存在していて、その場所がここだよっていうようなことが書かれている江戸時代の文書(もんじょ)があります」。
それがこちら。17世紀の中頃、江戸時代の初めのものとされる弘前藩の文書(もんじょ)です。
「青森」の地名や由来について記された文書としては、これまで確認されているものの中で最も古いと考えられています。
そこには「『浜町蜆貝川外』(はままち・しじみかいがわ・そと)に高さ1丈(約3m)の森があった。これは、松が生い茂り冬にも雪が消え払って、いつも青い森なので、昔から『青森』と名付けていた」と記されていました。
青森市民図書館歴史資料室 工藤大輔室長
「森の高さが約3mぐらいあって、青森の地域は雪が降りますけれど、1年中青々としていた。それを、そこに住む人々が『青い森』と呼んでいたから、新しく街づくりを始める際に、そういう名前を付けたらどうだ、ということになった」。
答えは、まさに「『青い森』があったから」。
「意外にシンプルな答えだ」と感じていた私。
しかし、工藤さんは、この「森」の解釈について、さらに驚きの解説を展開しました。
「森」の意味とその場所
青森市民図書館歴史資料室 工藤大輔室長
「どうも当時は「小高い丘」の意味で『森』という言葉を使っているようなんです。国語辞典などを見ると、津軽方面の方言として「丘」のことを『森』と呼ぶと書いてありますので、やはりここは「小高い丘」というように、『丘』の意味で取った方が解釈はしやすいと思います」。
私にとっては驚きでした。
早速、国語辞典を見ると確かに「森」の項目の最後に「東北地方で『丘』」という説明が…。
わかりやすくいえば、『青い森』は『青い丘』だというのです。
では、その『青い丘』はどこにあったのか。
さきほどの文書にあった「浜町蜆貝川外」の場所について、工藤さんは次のように考えています。
まず、「浜町」ですが、その名の通り「浜」の地域です。
青森市の沿岸部、堤川の西側に位置し、西から、上、中、下と続いていました。そして、「蜆貝川」は、現在の平和公園通りにあたる場所を流れていたということです。
工藤さんは、「浜町蜆貝川」の『外』」の場所について次のように考えています。
青森市民図書館歴史資料室 工藤大輔室長
「西から上、中、下と来ているので、『外』と言うとその東側じゃないかと思っています。それに、蜆貝川の西側に戻るとすれば『外』じゃなくて『内』ですよね。浜町から出ていくことを考えれば、蜆貝川の東側しかないだろうと思う」。
「浜町」と「蜆貝川」が交わる場所の外側。
今はその名残りを見ることはできませんが、現在の青森市青柳(あおやぎ)のあたりだと考えられるといいます。
見直される認識
実は、このほかにも、古文書の研究で、いろいろなことが分かってきているのです。
実は、先ほどの『青い森』があったと考えられる場所は、堤川の河口部にあたりますが、最近の研究で、この地域では江戸時代より前の中世から、港町が形成されていたことが明らかになってきているといいます。
県立青森商業高校の校歌です。
1番の冒頭で「昔は荒れ果てた寂しい村だったけれども、県庁所在地になった明治時代からだんだん豊かになった」と歌われています。
大正6年に制定された校歌ですので、少なくともその頃から今日に至るまでの長い間、そういうイメージが持たれていることがわかります。
工藤室長は、こうした「街づくりが始まる前は訪れる人もない寂しい村だった」といった認識は、最近の古文書の研究で少しずつ見直されてきていると指摘しています。
さて、お寄せいただいた質問には、その「青森」がなぜ県名になったのか知りたいとも記されていました。
地域の歴史を紐解く取材を続けていきますので、続編にもご期待ください。
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