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大学生活 友だちをつくるには?
角田彩子(記者)
2022年07月21日 (木)

八戸工業大学にこの春入学した西澤悠空さんから、こんなお悩みが寄せられました。
友だちづくりが苦手です。授業の空き時間は1人でいることが多く、友だちといる時間を増やしたいです。
私が大学に入学した頃を振り返ってみますと、家から大学まで電車で約1時間の距離で、高校時代の友人もいました。ただ、大学では同じクラスで授業を受ける高校までとは違い、授業のたびに学生が変わるなど、最初は戸惑いもありました。大学生になって初めて一人暮らしをする人もいて、高校までとは環境が大きく変わるので、友だちづくりなどに悩む学生も多いと思います。
西澤さんがどんな事情を抱えているのか、早速会いにいくことにしました。
通学に往復4時間も…
西澤さんはこの春、八戸工業大学に入学した1年生。
将来エンジニアになりたいと工学部で学んでいます。
西澤さんは、お隣の岩手県二戸市から電車とバスを乗り継いで片道約2時間かけて大学まで通っています。
通学に時間がかかるため、サークルなどに入ることもできず、友だちをつくりにくいと感じています。取材した時点では入学から2か月あまりたっていましたが(取材したのは6月上旬)その当時でも1人で過ごす時間が多かったといいます。
八戸工業大学1年生 西澤悠空さん
休み時間に1人でぽつんと座っていると寂しいと感じます。友だちを作りたいと思っても自分から行動するのが苦手で、コロナ禍もあって、知らない人に声をかけることが難しいと感じることが多いです。
友だちづくりに悩む大学生
友だちづくりに悩みを抱えているのは西澤さんだけではありません。
西澤さんと同じ八戸工業大学の1年生にも友だちづくりについて聞いてみました。
男子学生
コロナ禍で交流の場がないので、友だちづくりがうまくできていないと感じます。マスクで相手の顔を見ることができず、表情が見えないので、コミュニケーションが難しいと感じます。
女子学生
感染対策で距離をとらなければいけないので、友だちの近くに行けず、何をしゃべったらいいのか分からなくて、友だちづくりが難しいなと思うことがあります。正直、タイミングが悪いときに入学したなと思います。
友だちづくりの糸口つかめず
コロナ禍で友だちづくりに悩む大学生が増えていることは、データの上からも裏付けられています。全国の大学生協でつくる団体が毎年秋におよそ1万人の大学生を対象に 行っている学生生活実態調査の結果です。
棒グラフは「友だちができない・対人関係がうまくいかない」と答えた学生の割合を示しています。コロナ禍の前の2019年は11.3%でしたが、コロナ禍の2020年は6ポイント増えて17.3%、去年もほぼ横ばいの17.2%と、高い水準を維持しています。
社会学が専門で、大学生の友だちづくりの現状について詳しい早稲田大学文化構想学部の石田光規教授は次のように話しています。
早稲田大学文化構想学部 石田光規 教授
常に新型コロナの感染者数の推移を見たり、周りの人にどう思われているかなどを気にしたりしなければいけない状況が続いています。友だちをつくるには、一緒に何かを行う経験がかなり重要になってくるので、それができないというのは友だちづくりの糸口がないというのが率直なところだと思います。
先輩はどう友だちをつくった?
八戸工業大学は、今のところコロナ対策による活動の制限はなく、通常どおり対面授業やサークル活動が行われているということで、以前に比べれば、友だちづくりがしやすくなっていると言えます(6月上旬時点)。
私は西澤さんの友だちづくりをなんとか応援したいと思い、八戸工業大学の先輩の力を借りることにしました。
集まってもらったのは八戸工業大学で学園祭などのイベントを企画運営している学友会のメンバーで、2年生と3年生の5人です。西澤さんの前で、大学でどのように友だちをつくったのか、振り返ってもらいました。
八戸工業大学学友会 3年生 三田知広さん
新型コロナの感染者が出て、リモート授業になり、人と接する時間もなくなったのですが、徐々に対面授業に戻っていきました。近くの人から話しかけたり、学友会などのサークル活動に参加したりして、だんだんと友だちの輪を広げていきました。
八戸工業大学学友会 2年生 澤田京護さん
大学に入学したときは顔見知りの学生がおらず、全員知らない状態でした。新しい環境に混乱して、友だちを早くつくらなければいけないという焦りもありました。「どこから来たの?」とか、「大変だよね」などと、共通点を見つけて話すきっかけをつくりながら、頑張りました。
八戸工業大学1年生 西澤悠空さん
先輩たちも、コロナ禍もあって、友だちづくりは簡単な状況ではなかったことが分かり、とても参考になりました。
友だちづくり3つのポイント
学友会のメンバーは西澤さんのために、友だちづくりのためにポイントを3つにまとめてくれました。
1つ目が自分から話しかけることを恐れないことです。知らない人に話しかけることはハードルが高いかもしれませんが、まずは隣の席に座った学生から話しかけることから始めてほしいといいます。
2つ目が友だちになりたいと思う人との共通点を探すことです。共通点を見つけることで会話を広げることができるといいます。
最後に3つ目が友だちづくりを焦らないことです。友だちをつくろうと意識するのではなく、肩の力を抜いて、友だちになれてもなれなくてもいいというようなゆったりした心持ちで、人と接してほしいということです。
八戸工業大学1年生 西澤悠空さん
自分のペースで、ゆったりと友だちをつくればいいのだと聞いて、安心しました。気持ちが楽になりました。
取材を終えて
大学は本来、さまざまな地域から学生が集まり、授業やサークル活動など、一緒に行動することで友人関係を築く場所だったはずです。新型コロナ対策で、対面授業からオンライン授業になり、サークル活動も制限され、特に今の大学生は本当に大変だと思いました。幸い、取材した6月上旬の時点では新型コロナの感染状況は落ち着いていて、八戸工業大学でも活動の制限はほとんどありません。西澤さんは大学入学後、サークルに所属していませんでしたが、取材のあと、友だちづくりのアドバイスをくれた学友会に所属することを決めたということです。さらに大学の近くに下宿することも検討しているということで、これから大学生活を楽しんでほしいと思いました。
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