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全国チェーンの出店 青森はなぜ遅い?

執筆者髙橋昂平(記者)
2022年06月16日 (木)

全国チェーンの出店 青森はなぜ遅い?

北里大学獣医学部4年生の正田昂也さんから、こんな質問が寄せられました。

質問

県外から来た人は正田さんと同じような疑問を抱く人は少なくないのではないでしょうか?
私は東京出身ですが、青森県では好きな全国チェーンの飲食店が出店しておらず、残念に思ったことがあります。
今回は、その理由を調べてみることにしました。

ここ最近の青森への出店例は?

まずは、青森への出店は本当に遅いのか、すでに青森に進出している全国チェーンの初出店の時期を調べてみました。

初出店の時期

こちらはここ最近、青森に初出店した全国チェーンの一部です。
確かに知名度が高い全国チェーンでも青森への出店はかなり最近だったことがわかります。
中でもコメダ珈琲店は、青森への出店が全国47都道府県の中で最後になったということです。

青森未出店の全国チェーン

次に青森にまだ進出していない全国チェーンを見てみます。

まだ進出していない全国チェーン

こちらも青森に未出店の全国チェーンの一部ですが、有名なファミリーレストランなどの名前が並んでいます。

なぜ青森に未出店なのか?

なぜ、青森には出店しないのか?取材に応じてくれた全国チェーンの回答をご紹介します。

まずは全国に700店舗以上展開している餃子の王将の回答です。

餃子の王将の回答

ギョーザなどの製造工場が埼玉と札幌にあり、おいしさを追求するために冷凍せずに輸送が可能な地域にしか出店しない方針で、青森は距離が遠いため、現時点では出店を考えていないということでした。

次に全国でおよそ1000店舗を展開しているサイゼリヤの回答です。

サイゼリヤの回答

いきなり離れた地域に1店舗だけ出店するのは、物流などの面で非効率なため、徐々に出店エリアを拡大していく方針だということです。
青森・秋田・岩手の北東北3県で現在、出店しているのは秋田県のみだということです。
6月下旬には岩手県に初出店する予定で、青森県への出店も現在検討しているとのことでした(6月10日時点)。

青森特有の事情も

こうしてみると、青森は本州最北端にあることから、全国チェーンが出店を考えるうえで、輸送コストが大きなネックになっていることが分かりました。

企業の出店戦略に詳しい専門家は輸送コストに加え、次の2点も出店を妨げる要因になっていると分析しています。

出店戦略に詳しい専門家は

まず、1点目の人口減少率の高さについてです。

人口減少率の高さ

青森県の去年10月時点での人口はおよそ122万人で、全国31位です。
決して多いほうではありませんが、青森よりも人口が少ない県も多くあります。
しかし、人口減少率で見ると-1.35%と、全国で2番目の高さです。
将来性を考慮すると、全国チェーンが出店を見送る要因となっています。

次に人口の分散について見てみます。

人口の分散

青森市が27万人あまり、八戸市が22万人あまり、弘前市がおよそ17万人と、この3つの市を合計するとおよそ66万人で、青森県の人口の約半分を占めます。
これだけの人口が分散してしまうことで、それぞれの都市の市場規模が小さくなり、見込める利益も減ってしまうということです。

好きな全国チェーン求めて県外へ

私の場合、お気に入りの全国チェーンはありますが、青森県内には出店していないため、東京の実家に帰省したときに足を運ぶ程度です。

しかし、ある牛丼チェーンを愛するあまり、出店している最寄りの県まで足繁く通っていたという弘前市の男性に会うことができました。

この男性が顔と名前を明かさないという条件で取材に応じてくれました。

みくまりさんは

みくまりさんは、もともと埼玉県出身で、6年前に弘前市に引っ越ししましたが、その当時、お気に入りの牛丼チェーンは弘前市だけでなく、青森県内に1店もありませんでした。

みくまりさん
青森県内に出店していないことを知って、少し悲しかったですが、将来出店してくれればいいかなと思っていました。

みくまりさんの写真

そのため、みくまりさんは旅行先で、この牛丼チェーンに行ったり、すでに出店していた岩手県盛岡市まで2時間ほどかけて、通ったりしていたということです。

去年、この牛丼チェーンが秋田県に出店し、少し近くなりましたが、それでも車で1時間半ほど離れたところにあります。

同人誌で架空の店舗を出店

同人誌

チェーン店

架空の店舗の一覧表

みくまりさんは3年前にある同人誌を発行します。
牛丼チェーンが青森県内に出店しないのなら、想像の中で出店させてしまおうと、同人誌には弘前市の町並みにこの牛丼チェーンの店舗を合成した写真や、想像の中で出店させた架空の店舗の一覧表まで掲載しています。

SNSで話題

この同人誌はSNSで話題となり、大きな反響を呼びました。

同人誌の想像が現実に

同人誌の発行から3年、みくまりさんの想像が現実のものとなります。

去年12月、この牛丼チェーンが青森県内で初めて弘前市に出店を果たしたのです。

みくまりさん
開店した瞬間は信じられないと思いました。本当は夢なのではないかと思いましたが、現実にできたのだと、うれしい気持ちになりました。

同人誌は出店に影響したか?

SNSでも注目を集めた、みくまりさんの同人誌は、この牛丼チェーンの出店に影響したのでしょうか?広報担当者に聞きました。

松屋フーズ広報 寺島慶子さん

松屋フーズ広報 寺島慶子さん
申し訳ないのですが、正直、関係ございません。みくまりさんの同人誌は、深く考察していただき、ありがたく思います。

地元の飲食店にチャンスあり?

ここまでは、全国チェーンがいかに青森県に出店しにくいのかを見てきました。視点を変えれば、地元の飲食店にとっては、まだまだチャンスが残されていると言えるのではないかと思います。
海と山に恵まれた青森の豊かな食材を使えば、少なくとも輸送コストの面では全国チェーンよりも優位に立つことができると思います。
全国チェーンの出店を待ち望む人の気持ちも分かりますが、私としては地元の飲食店にもこのチャンスを生かしてほしいと思いました。

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