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J3サッカー "南部ダービー"直前スペシャル対談!ヴァンラーレ八戸熊谷GM×いわてグルージャ盛岡秋田社長
角田彩子(記者)
2023年05月19日 (金)

Jリーグ開幕から30年。全国各地で“ダービーマッチ”が開催される中、八戸市を拠点とするサッカーJ3“ヴァンラーレ八戸”もお隣の“いわてグルージャ盛岡”と対戦。
この試合は、八戸と盛岡がかつて南部藩だったことにちなんで“南部ダービー”と呼ばれ、選手やサポーターにとっては特別な試合となっています。
この大事な試合を前にスペシャルな対談が実現しました。
ヴァンラーレ八戸からは、今シーズンゼネラルマネージャーに就任した熊谷浩二さん。十和田市出身で、1995年のワールドユースで代表のキャプテンも務めました。
そしてもう1人。
いわてグルージャ盛岡からは元日本代表の秋田豊社長です。
サッカー界を牽引してきた2人がNHKのカメラの前で熱く語ってくれました。
2人にとって“南部ダービー”はどういう意味合いを持つのか?
柴田徹アナウンサー
「よろしくお願いします。“南部ダービー”は2人にとってリーグ戦のなかの1試合と見ますか?それとも特別な意味を持ちますか?」
熊谷浩二さん
「当然プロなのでどの試合も勝たなければいけないという気持ちでプレーをしています。ただ、“南部ダービー”は歴史もありますし、この試合は同じ1勝にしても重みが違います」。
“南部ダービー”は、両チームともJリーグに上がる前の2010年から始まりました。グルージャが2014年、ヴァンラーレが2019年にJ3に参入したあとも続き、これまでの勝敗は4勝4敗1引き分けのドロー。
次の1戦は勝ち越しが決まる特別な試合です。
秋田豊さん
「南部藩の同じ地域のチーム同士の戦いで、僕からすると絶対に負けられない戦いで、非常に大切なゲームになると思います」。
2人が勝負にこだわる理由は他にも・・・
2人が勝負にこだわる理由は他にもありそうです。
実は、2人は鹿島アントラーズ時代の先輩・後輩です。
1993年に入団した秋田さん。そしてその1年後に熊谷さんが入団しました。
当時、センターバックの秋田さん。そして、ボランチの熊谷さん。
熊谷さんは相手チームに攻め込まれ守備に回ったときのあるエピソードを振り返りました。
熊谷浩二さん
「後ろから声がかかって、『熊10cm右』と秋田さんにポジション修正をされるわけです。105メートルの68メートルと広大なスペースのなかでこの10センチの意味合いは、もう秋田さんにしか追求できないところじゃないかなと思います。存在は大きいですが、指示は細かかったです」。
秋田さんも当時を振り返ります。
秋田豊さん
「熊の場合、スピード感と球際への厳しさが非常にあったので、本当に微妙なところが…(画面止まる)」。
柴田徹アナウンサー
「あれ止まりましたね。今いいところ、ほめに入ったところでしたが(笑)」。
Jリーグ開幕30年 2人から見えるサッカー界
Jリーグの開幕から30年。日本のサッカーの現在地を2人はどのように見ているのか。
熊谷さんはJリーグの文化は地域に根づいてきたと話します。
熊谷浩二さん
「私が高校生の頃は青森にはJクラブがなく、秋田さんの岩手にもありませんでした。それが今では各地方Jクラブが成り立っていると考えると、すそ野が広がって、Jリーグ、サッカー文化が根づいてきたのだと思います」。
一方で秋田さんは課題も指摘します。
秋田豊さん
「熊の言うとおり、ある部分は進化していて、逆にある部分はJリーグのレベルが下がっていると思います。代表クラスの選手たちは海外に出て行ってしまっているので、そういう意味では日本人のレベルは下がっているのだなと感じます」。
だからこそ、2人は今さまざまなことにチャレンジしています。
熊谷さんが重視するのは若い世代の底上げです。
4月下旬には、鹿島のチームメイトだった 元日本代表の中田浩二さんを招いて、サッカー教室も開催しました。
熊谷浩二さん
「試行錯誤しながら、いろんなことをチャレンジしていきたいと思っています。働いている社員含めスタッフや関係者が非常に志を持って一生懸命やっていて、未来を見ながら活動ができていると思います」。
また、秋田さんも社長自らが解説する有料スペースをスタジアムに設置。
サポーターのさらなる獲得を狙います。
秋田豊さん
「クラブのスタジアムの席というのは数が少ないので、いかにして価値を出すかということが重要で、僕はサッカーの解説をずっと仕事でやってきたので、選手たちの状況やチーム状況、それにどういうサッカーをしているのか、伝えることも同時にできるので、そういうことをどんどん挑戦していきたいと思っています」。
“南部ダービー”へ!2人の思いは
終わりを惜しむかのように話の尽きない2人。
最後に“南部ダービー”にかける思いをぶつけてくれました。
秋田豊さん
「絶対に勝ちたいのは強いです。逆に熊だけには負けたくない!八戸に関してライバル視は強くなったと思います」。
熊谷浩二さん
「複雑な思いです。いつか子は親のことを超えなきゃいけないことを考えると、その時がやっときたかなと思います。寂しいような気もするが、次の試合は『勝ってしまうんだな!勝たなければいけないんだな』そんな思いです」。
5月14日にホームで開催された“南部ダービー”は2142人のサポーターを迎え、両チーム得点の奪い合いで、盛り上がりました。
しかし結果は・・・2対3でヴァンラーレの負け。今回の“南部ダービー”は惜しくも負けてしまいました。
取材後記
かつて鹿島の黄金時代を支えた2人が、今シーズン、GMと社長に就任したタイミングの“南部ダービー”の開催ということで、対談が実現しました。対談では、かつてのチームメイトお2人の仲の良さを感じ、良い雰囲気の中、対談が進んでいきました。
“南部ダービー”にかける思いや、“Jリーグ30年のサッカー界について”、さらに“鹿島時代の話まで”、貴重なお話を聞かせてもらい、予定していた時間があっという間に過ぎました。
“南部ダービー”の結果は、惜しくもヴァンラーレが2対3で敗れてしまいましたが、今後もJ2昇格に向けて頑張ってほしいと思いました。