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インバウンド需要、いつ回復?

執筆者佐藤裕太(記者)
2022年09月26日 (月)

インバウンド需要、いつ回復?

海外から観光客を呼び込む「インバウンド」。
地域経済にとって重要な柱の1つでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で大きく落ち込みました。しかし、感染が世界的に落ち着く中、日本政府は水際対策の緩和を進めていて、青森県の観光地などでも期待が高まっています。

県内ではどのように受け入れ準備を進めているのか。そして、観光客はいつ戻ってくるのか。取材すると「インバウンド需要」の回復の兆しが見える一方で、課題も見えてきました。

青森放送局の佐藤裕太記者が取材しました。

3年ぶりの海外からのツアー客

バスから降りてくるツアー客

9月20日、香港からのツアー客19人が、弘前市の観光施設「津軽藩ねぷた村」を訪れました。
施設が香港からのツアー客を迎えるのはおよそ3年ぶりです。

外国人観光客の入国制限をめぐって、政府は、9月7日から上限を5万人に引き上げ、添乗員が同行しないツアーを認めたほか、さらなる緩和策の検討を進める方針を示していることから、インバウンド需要の回復に期待が寄せられています。

県内でも進む受け入れ準備

青森屋

インバウンド需要回復に向けた準備は、着々と進んでいます。
三沢市にあるホテルです。
外国人観光客の人気が高い施設ですが、新型コロナの感染が拡大した2020年春以降、海外からの宿泊客を迎える機会はほとんどなくなっていました。
入国制限の緩和などを受けて、9月からようやく予約が戻り始めています。

館内の案内用紙

来月までにハワイや香港から団体客を受け入れることがすでに決まっていて、2年以上作成していなかった、英語版の館内の案内も今月から再び用意しています。

はねる女性

そして、インバウンド需要回復に向けて大きな目玉になると期待しているのが、「青森ねぶた祭」など県内4つの祭りの様子を再現したパフォーマンス。
毎日開催していて、地元の祭りを体感してもらうのが狙いです。

三保裕司 総支配人

星野リゾート 青森屋 三保裕司 総支配人
「青森の文化とか楽しさ、『じゃわめぐ』心のようなものをお客様に体験いただきたいと思っています。こうした文化はノンバーバル(言語不要)で、国内外問わず万国に伝わるものだと考えています。コロナ以前の需要であれば我々は対応できる準備が常にできていましたし、ずっとやってきたものを改めてやり直しているところです」。

外国人観光客 送り出す海外の現状は

一方で、日本へ送り出す側の海外の現状はどうなのでしょうか。

香港の旅行会社の社長、袁文英さん

今回、青森を訪れた団体ツアーを企画した、香港の旅行会社の社長、袁文英さんは日本への観光需要の高まりを感じています。同じ旅程で青森などを周遊する、14日間のツアー商品3本は、完売しました。

ただ、本格的な回復への道のりは、まだまだだと言います。
コロナ禍以前と比べて何割ぐらい回復してきているかと問うと・・・。

EGLツアーズ袁文英 主席
「全然。『割』なんて言えない。6月、7月ともに団体商品が2本しかなかったが、コロナ禍以前だったらあり得ない。1か月で300本あった」。

その上で、本格的な回復に向けて課題となっているのは。

EGLツアーズ袁文英 主席
「まずは香港の政策です。帰国後に、ホテルでの3日間の隔離が必要ですが、これがなくなれば間違いなく、香港の人口の半分くらいが日本に飛んでいくと思います。また、航空会社の運搬力も関係ありますが、残念ながら、今、日系の航空会社の定期便は、成田-香港間ですら、毎日飛んでいません。旅行客を本格的に日本に送り出せるのは来年夏。早くても来年春でしょう」。

また、香港に並んで青森へ多くの観光客を送り出していた韓国にとっても、空の便が課題となっています。

韓国の旅行会社の日本法人に取材しました。

韓国の旅行会社の日本法人に取材しました。この会社では、青森への直行便が再開されてからツアーを販売する予定だといいます。

HANATOUR JAPAN 李セボム 取締役営業事業部長
「企画はしていますが、商品としてはまだ売り出していません。というのも、韓国のお客様は、ほかの国と違って例えば成田空港から入国して新幹線で青森まで移動する形はあまり取らないからです。直行便が再開したら、そのまま旅行パッケージの販売を開始しようと思っています」。

また、コロナ前のようなビザなしでの入国の再開が、日本への渡航の起爆剤になると期待を寄せています。

HANATOUR JAPAN 李セボム 取締役営業事業部長
「日本は身近な国だという感覚がありましたが、ビザが残っている限りは、『そこまでして行かなくていいや』となり、集客も思うほど伸びません。入国に対する緩和策が早くなればなるほどお客さんの動きも早くなると思います」。

入国制限の緩和によって「県内の観光地がまたにぎわいを取り戻すのか」と思っていましたが、取材を進めてみると、途絶えてしまった国際便の再開など、コロナ禍以前の状況まで回復するにはまだまだ高いハードルが残されていることがわかりました。

とりわけ地方では人口減少が進む中、コロナ禍前には、外国人観光客8人分の消費額が定住人口1人あたりの年間消費額に相当し、インバウンドは地域経済活性化の大きなカギになっていました。

国内需要も落ち込んで大きな打撃を受けた観光・飲食業の回復にとって起死回生の一打となるのか。熱い視線が送られています。

再び動き出す地域経済のダイナミズム

佐藤記者

青森放送局 佐藤裕太記者
この1か月あまり、インバウンド回復の兆しと言うべき、さまざまな動きを取材しました。香港のほかにもハワイからもツアー客が来県するなど、受け入れの最前線に立ち会って改めて強く感じたのは、インバウンド需要に対する地元の期待の大きさです。「アフター・コロナ」に向けて、青森県の魅力をどのように生かし、需要の取り込みを図るのか。動き出す地域経済のダイナミズムを引き続き取材します。

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