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津軽鉄道 100年先も地域とともに

執筆者佐々木 和(カメラマン)
2022年02月01日 (火)

津軽鉄道 100年先も地域とともに

津軽鉄道が地域とともに100年先も輝き続ける未来を目指したい。
この冬、沿線住民たちと力を合わせて新しいプロジェクトが始まった。

 

津軽鉄道 コロナ禍で苦境に

津軽鉄道

青森県五所川原市と中泊町を結ぶ津軽鉄道。
「ストーブ列車」が冬の観光名物です。
石炭ストーブで温まるレトロな客車は国内外から人気を集め、多くの観光客が訪れていました。
しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、インバウンドの需要はほぼなくなり、国内の団体予約も激減しています。

空席も目立つように

年々利用客の減少に苦しんでいた津軽鉄道にとって、ストーブ列車は大きな収入源の1つでした。

そのため、津軽鉄道の去年1年間の収入は、新型コロナの影響がなかった2018年に比べて4割以上も落ち込んでしまい、苦境に立たされています。

津軽鉄道 白鳥泰総務課長

津軽鉄道 白鳥泰総務課長
「津軽鉄道を支えるためになんとか観光の部分を膨らまそうとしていた部分がだいぶなくなってしまったという印象になっています。」

新プロジェクトが始動

津鉄と地域100年プロジェクト

この冬、津軽鉄道では、沿線地域の団体などと協力して新たなプロジェクトを始めました。

その名も「津鉄と地域100年プロジェクト」

観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業(交通連携型)」を活用し、100年後も津軽鉄道と地域が輝き続けるために様々なイベントを企画します。

高校生のあたたかなアートで彩るワークショップ

無人の十川駅の待合室を、高校生のあたたかなアートで彩るワークショップ。
(1月29日に予定していた設置セレモニーは新型コロナ感染拡大のため延期)

春は桜のトンネルを列車が走る芦野公園駅で、木に積もった雪を桜色にライトアップ。

春は桜のトンネルを列車が走る芦野公園駅で、木に積もった雪を桜色にライトアップ。(ライトアップの期間は2月20日までを予定)

ライトアップを企画した津軽鉄道サポーターズクラブ高瀬英人さん

ライトアップを企画した津軽鉄道サポーターズクラブ高瀬英人さん
「思った以上にうまくできたなと思っています。これで冬に観光客の方が来て、津軽鉄道さんの乗客が増えればいいと思っています。」

地元の人にも楽しめる場を

津軽五所川原駅の隣でコミュニティカフェを運営する団体も

津軽五所川原駅の隣でコミュニティカフェを運営する団体もこのプロジェクトに参加しています。

これまでも、ストーブ列車の石炭のような見た目をしたクッキーなどオリジナルの商品を販売し、その収益の一部を寄付することで津軽鉄道を応援してきました。

辻悦子さん

辻悦子さん。カフェを運営する団体の理事です。
子どもを持つカフェのスタッフから、感染が心配で出かけられない子どもたちが寂しい思いをしているという話を聞き、親子で冬休みの思い出がつくれるイベントを企画することで津軽鉄道を盛り上げようと考えました。

親子で冬休みの思い出がつくれるイベントを企画することで津軽鉄道を盛り上げようと考えました。

「チカチカ☆ビガビガ列車」
津軽の言葉で光る様子を表す“ビガビガ”を入れてイベントを名付けました。
プロジェクトメンバーのバルーンアーティストやカフェの仲間たちとアイデアを寄せ合い、乗ると温かくてほんわかする空間を目指し、手作りの装飾で列車の中を仕上げます。

でる・そーれ 辻悦子さん

でる・そーれ 辻悦子さん
「もっと地元の人が乗って欲しいというか、乗ること自体を楽しみにする時間を作って欲しい。乗ったことがない人たちが、ちょっと乗ってみようかなって思うようなきっかけをまず作りたい。みんなの喜ぶ顔が早く見たいです。」

チカチカ☆ビガビガ列車 出発進行

イベントの初日は、記録的な大雪。青森県内の交通機関は朝から大きく乱れました。

イベントの初日は、記録的な大雪。青森県内の交通機関は朝から大きく乱れました。
予約していたうちの6人が駅にたどり着けず、やむなくキャンセルとなってしまいましたが、沿線に住む親子連れなど20人が集まりました。

この日は、地元のマジシャンが登場。

この日は、地元のマジシャンが登場。
様々な手品を、時には乗客にも手伝ってもらいながら披露しました。
子どもたちの目は不思議な技に釘付けです。

マジシャンISAMIさん

マジシャンISAMIさん
「けっこう揺れるのでパフォーマンス中バランスを崩したりして大変でした。津軽鉄道は歴史のあるものなので、自分が少しでも力になれたのであればうれしいです。」

津軽五所川原駅と津軽中里駅の間を往復する2時間の旅。
今回、初めて津軽鉄道に乗ったという親子連れも、穏やかな時間を楽しんでいました。

初めて津軽鉄道に乗ったという親子連れも、穏やかな時間を楽しんでいました。

「なかなか遠出できない時期だったので、子どもと冬休みの思い出ができてうれしいです。地元なのに観光に来た感じで、また新しい一面を知って楽しいです。」

100年先も地域とともに

100年先も地域とともに

プロジェクトメンバーの辻さんは、イベント列車の盛況ぶりにほっとした様子でした。
実は辻さんは学生時代、津軽鉄道で通学していました。
再び津軽鉄道に関わるようになって、カフェやプロジェクトの仲間など、新しいつながりができたことに喜びを感じています。
自分にそのきっかけを作ってくれた津軽鉄道が、次の世代にとっても同じような存在であり続けてほしいと願っています。

辻さん

「大きな財産をいま得ているなと思いますし、そういういろんなところに広がってつながる可能性が津軽鉄道にはあるなと思います。津軽鉄道さんと地域の人がいろんなコラボをして列車の中を楽しむっていう一つの空間として育っていけばいいと思っています。」

“地域の足”を残すために

津軽鉄道は社員が30人ほどの小さな会社です。
限られた人員では、日々の運行を安全に保つことが第一で、余力はあまりありません。
新たな魅力を発掘し、経営の厳しい会社を支えていくためには、地域の力が欠かせません。

白鳥さん

「いろんな団体のみなさんが集まることによって、いろんな意見が出てくるので、発想の幅が広がり活動の幅も広がる、ここは本当にみなさんの協力を感謝しています。コロナの影響でなかなか厳しい状態にはなっていますが、ここでもなんとか乗り切って、みなさんの足として頑張っていければと思っています。」

津軽鉄道

沿線地域の人々の“足”となり、また観光資源として人を呼び込み地域の暮らしを支えている津軽鉄道。
今まで以上に地域の人々と力を合わせ、未来に向けて走り出しています。

取材後記

これまでもローカル鉄道会社が行う一風変わったPRイベントなどを取材してきましたが、今回のプロジェクトは、より地元の人たちが主体となって地元の鉄道を守ろう、支えようとしている姿が印象的でした。
新型コロナの影響で地方の公共交通はさらに苦境に追い込まれていますが、なんとか未来につないでいけるように今後も取材して応援していきたいと思います。

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