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ヘアドネーションは意味がない?

執筆者平井良江(ディレクター)
2021年02月10日 (水)

ヘアドネーションは意味がない?

今回悠月ちゃんが挑戦したヘアドネーション。ネット上には「意味がない」とか「髪が余っている」などと批判する声も散見されます。実際のところどうなのか、今回のリポートにも協力いただいたNPO法人「HERO」に聞いてみました。

Q.ヘアドネーションは「意味がない」と言われてしまうことがあるのは、なぜですか?

今は人工毛も人毛と区別がつかないほど自然になり、5万円ほどの安価な値段で人毛のようなウィッグが買えるようになりました。そのため、わざわざ髪を寄付しなくても、当事者が安くて自然なウィッグを購入できるし、提供するなら人工毛でウィッグをつくればいいという考えから、わざわざ髪を寄付する意味がない、とおっしゃっているように思われます。

Q.5万円ほどの安いウィッグはどのくらい自然な見た目なんでしょうか?

5万円ほどのウィッグは、人工毛こそ自然になってきましたが、サイズが既製品で、機械で髪を植えるため、分け目やつむじがお人形さんのように不自然になります。また、最近の人工毛は進化しているとはいえ、光が当たると不自然な光沢が出たり、手触りが人毛とは違っていたり、どうしても髪の自然さとしては人毛のウィッグには劣ります。髪の毛だけではなく、ウィッグになったときの自然さを考えると、髪の悩みを抱えている子どもたちに提供するには十分ではないと考えています。

Q.HEROで提供しているウィッグは5万円のウィッグとはどこが違うのですか?

HEROでは、皆さんから寄付していただいた人毛で製作していることはもちろん、「手植え」であること、「オーダーメイド」であることにこだわっています。「手植え」とは、職人が髪の毛を一本一本ウィッグのネットの網目に結びつけていくやり方です。手植えすることで分け目も変えられますし、通気性もよく長時間つけることができます。
また、ウィッグを希望する子の自宅や病院に行って、その子の頭の型をとって、オーダーメイドのウィッグを制作しています。既製品だと、子どもの頭の大きさに合うものが少なかったり、合わないウィッグをつけることで頭が痛くなって、学校でも勉強に集中できなかったりします。一人一人の頭の形にあったウィッグを届けることで、日常生活でもストレスなくウィッグをつけることができます。
髪の問題は、一人一人捉え方が違うとても繊細な問題だと感じています。ウィッグがなくても明るく過ごせる子もいれば、髪の毛がないことで自分に自信が持てなかったり、塞ぎ込んで外に出られなくなったりする子もいます。病気は私たちで治すことができませんが、自分の髪が戻ってきたと思えるような自然なウィッグを届けることで、少しでもその心の悲しんでいる部分を癒やせればと思っています。

Q自然なウィッグを提供したいという気持ち、よく分かりました。でも、せっかく髪を送っても「余っている」ということはないですか?

髪が余っている、ということはありません。今も100名以上の子どもたちがウィッグを待っていますので、送っていただいた髪は全て、その子どもたちのウィッグを作るために使用させていただいています。また、長い髪のウィッグを希望する女の子からの申し込みが多いため、慢性的に40センチ以上、50センチ以上の長い髪の寄付が不足しています。

Qそれではなぜ「余っている」と言われてしまうことがあるのでしょうか?

送っていただいた髪を、すぐにウィッグに加工することができず、長期間保管されるため、「余っている」と感じるのだと思います。

Qなぜすぐにウィッグにできないのですか?

資金不足が原因です。お金があればすぐにでもウィッグを作ってお届けすることができるのですが、特に今は、資金源であるヒーローショーがコロナ禍で開催できず、ウィッグを待っている子どもたちをお待たせしてしまっています。
私たちの団体では、頭の型を取りに行く交通費や、ウィッグを作る製作費、髪を工場に送る輸送費など、1台につき約8万円がかかっています。市場価格では数十万円ほどするウィッグですが、皆様からの髪の寄付や協力してくださるメーカーさんのおかげで安価に作ることができています。ただ、それでもお送りいただいた髪をすぐに加工してウィッグにするには、まだまだ資金が不足している状況です。
髪だけではなく、それをウィッグに加工する資金があって初めて子どもたちにウィッグを届けることができます。そのため、髪の寄付だけが多くなると、資金が集まるまで髪を保管する形になり、「余っている」ように見えるのだと思います。

Q今保管されている髪は、いずれ、ちゃんとウィッグになるということでしょうか?

もちろん大切に保管して、資金が集まり次第ウィッグに加工しています。スポンサーさまや、募金やグッズを買って支援してくださる方のおかげで、コロナ禍でも少しずつウィッグも製作できるようになってきました。時間はかかりますが、確実に髪の問題をかかえる子どもたちにお届けしますので、引き続きご協力をよろしくおねがいします。

髪を寄付するだけでなく、募金などの支援も含めてヘアドネーションなんですね。HEROの皆さん、インタビューのご協力、ありがとうございました!


※補足
取材したNPO法人「HERO」では今も髪を受け付けていますが、団体によっては、今髪を送るのを待ってほしいというところもあります。コロナ禍で、密にならないように髪の仕分けをする人数を制限している関係で、大量の髪の仕分けが追いつかず、保管する場所の確保が難しくなっているからです。髪の寄付をする場合は、各団体のHPをよく読んで、髪を受け入れる余裕がある団体に送る、もしくは髪を濡らさないように自宅で保管して、受け入れが再開されてから送るなどするといいかもしれません。

 

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