1. トップページ
  2. 科学・文化
  3. 現代の土偶職人!?いったいどんな人!?

現代の土偶職人!?いったいどんな人!?

執筆者佐野裕美江(記者)
2021年08月04日 (水)

現代の土偶職人!?いったいどんな人!?

現代に土偶職人って!?

遮光器土偶

この土偶のなんとも言えない表情…。
ゆるくて、たまらなくかわいいですよね…。

みなさん、こんにちは。
最近始めた縄文遺跡めぐりを通じて、土偶や土器の魅力に目覚めた佐野です。
派手なものが好きなわたしにとって、土器や土偶は地味に思えてあまり深い関心は持てませんでした。
中学の修学旅行で三内丸山遺跡を訪れましたが、記憶にあるのは竪穴住居の前で同級生たちとわいわい写真を撮ったなぁ…といった思い出くらい。

それが大きく変わったのが2021年5月下旬。
そうです、三内丸山遺跡など県内8つの遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録される見通しになったのです。
このころわたしは、とある取材先から「土偶を作っている人がいる」という話を聞きました。
「土偶ってどうやって作るの…?」
「いや、そもそもなんで土偶を作ろうと思ったんだろう…?」
たくさんの疑問が湧いてきたわたしは、早速 “土偶職人”のもとに向かいました。

遺跡のほど近くに住む職人

“土偶職人”こと陶芸家の一戸広臣さん

“土偶職人”が制作を続ける工房は県西部のつがる市にあります。
青森市からは岩木山を眺めながら車で1時間余りです。
近くには「縄文遺跡群」の1つ、亀ヶ岡石器時代遺跡があり、この遺跡からは冒頭で紹介した、あの遮光器土偶が出土しました。
この工房で、人なつっこい笑顔で迎えてくれたのが
“土偶職人”こと陶芸家の一戸広臣さん(67歳)です。

なぜか竪穴住居が敷地に?!

敷地の中に縄文人の住まい、竪穴住居が!?

工房のある敷地には一戸さんの自宅やギャラリーもあります。
工房の中で話を聞こうと思ったのですが、その前にどうしても聞いておきたいものが…。

なんと、敷地の中に縄文人の住まい、竪穴住居が建てられているのです。
一戸さんに聞いてみると、茶目っ気たっぷりの笑顔を見せながら「作っちゃった」と答えてくれました。

中に入ると、思ったよりも広いスペースで、真ん中には囲炉裏、天井には一戸さんが作った遮光器土偶が飾られています。

中に入ると、思ったよりも広いスペースで、真ん中には囲炉裏、天井には一戸さんが作った遮光器土偶が飾られています。

一戸さんは、30年ほど前に地元の人たちに手伝ってもらって建てたという竪穴住居で、仕事を終えた後にたき火をしながらお酒を飲むことが何よりも楽しみだといいます。
新型コロナの感染が広がる前には、地元の仲間を集めて、ここでお酒を酌み交わしていたんだとか。

“縄文人になりきっている?”と問いかけると一戸さんは“そうかもね”と笑いながら答えていました。
こうした縄文文化へのこだわりこそが制作の原動力になっているのだと一戸さんは言います。

“土偶職人”になるまで

制作中の一戸さん

では、なぜ一戸さんは土偶を制作するようになったのでしょうか。
いまのつがる市で生まれ育った一戸さんは大学に在学していたとき、岐阜県の陶器を作る工場でアルバイトをしていたといいます。このときに、陶芸教室にも通い、陶芸の魅力を知った一戸さんは、陶芸家を志して大学を辞め、京都で修行を重ねました。

その後、ふるさとに戻って自分の工房を持った一戸さん。
最初はバラやタンポポなどの花を描いた焼き物を作っていたそうです。
そのころ、観光振興に力を入れようとした地元の自治体がこんな依頼をしてきました。
“亀ヶ岡石器時代遺跡で出土した遮光器土偶を作ってほしい”
地元を象徴するような土産物が制作できないかというのです。

展示されている一戸さんが制作した土偶や作品

こうして一戸さんは約40年にわたる“土偶作り”を始めました。
いまでは大小さまざまな土偶を作り出すようになり、土偶作りは制作活動の多くを占めています。

土偶ってどうやって作るの!?

土偶の材料は、陶器を作るための粘土に地元の山で採取した土を混ぜ合わせたもの

気になる土偶の作り方を教えてもらいました。
まず、材料は陶器を作るための粘土に地元の山で採取した土を混ぜ合わせたものを使います。
土には小さな石なども入っていて、仕上がりに荒さが出て、縄文時代に作られた土偶に近い雰囲気を出すことができるのだといいます。

粘土と土をこねて、細く伸ばしたものを積み重ねて、土偶を形づくっていきます。

粘土と土をこねて、細く伸ばしたものを積み重ねて、土偶を形づくっていきます。
最初は腰の部分からで、積み重ねては乾燥させて、を繰り返していくため、制作には1週間以上かかるといいます。

土偶の制作過程

土偶の制作過程

土偶の制作過程

土偶の制作過程

本物の遮光器土偶はよく見ると左右対称でない部分があり、模様にもばらつきがあるということなのですが、一戸さんは本物にあわせて作るのか、それとも左右対称といった完璧な土偶をつくるのか、いつも悩みながら制作にあたっています。

陶芸家 一戸広臣さん
「作り手としてのプライドがあって、模様にばらつきがある本物を完璧に真似したものを作るのか、それともばらつきがないように左右対称に作るのか、迷います。でも、いつも“俺がいまの縄文人なんだ!”という思いで土偶を作っています」。

最後に焼きあげるときに、一戸さんは窯は使いません。
一戸さんは縄文時代に窯はなかっただろうと推測していて、焼く方法も屋外で薪を使ってと、当時のやり方にこだわっているそうです。

土偶を購入した大分県の女性

こうして作られた土偶、実はかなりの人気があります。
こちらの大分県に住む女性は、2年前、縄文遺跡をめぐる旅行の際につがる市を訪れました。
亀ヶ岡石器時代遺跡の近くにある施設で展示されていた一戸さんの土偶に一目ぼれしたそうで、すぐに一戸さんのギャラリーを訪れて購入しました。

土偶を購入した大分県の女性
「魅力は丸い目と立体的なフォルム。ほかにはない土偶でダントツかわいい。一戸さんにはずっと制作を続けてほしい。もっと大きな土偶もあればほしい。」

縄文文化を日常使いで

制作中の一戸さん

土偶が注目を集める一戸さんですが、日常使いのできるコップや皿などの食器も数多く作っています。

“自分ならではの陶器とは何か”と突き詰めて考えた結果、亀ヶ岡石器時代遺跡から出土する土器に見られる「雲形文(うんけいもん)」と呼ばれる渦巻きのような模様をつけるようになりました。

陶芸家 一戸広臣さん
「縄文時代も生きるために必要だから作って食事などに使っていただろうから、食器をいかに作って日常使いしてもらえるかが陶芸家としての本来の姿だ。桐箱の中に入れて、1年に1回、厳かに出して使ってもらうよりは、作っている人間としては四六時中、使ってもらう方がうれしい。」

模様を掘る一戸さん

こうした作品を作るときは、まず、ろくろを使って粘土を食器の形に整えます。
そして、墨で模様の下書きをし、彫刻刀などで“縄文”の由来となった縄の模様をつけていきます。

陶芸家 一戸広臣さん
「亀ヶ岡石器時代遺跡は、縄文時代晩期の遺跡で、このころになると模様が緻密で洗練されてくる。ろくろなどの道具もない時代に、よくこのような細かい模様を描けたな、と感心し自分の作品にも取り入れている。」

模様に色をつける一戸さん

作業中の一戸さん

この後、2回窯で焼いて色つけです。
縄文土器に使われた朱色の漆をイメージして、模様に赤い顔料を塗っていきます。
仕上げにもう一度、窯に入れて800度で5時間焼くと完成です。
10年以上、試行錯誤を重ね、最近になってようやく作風が確立されてきたといいます。

“縄文遺跡群” 世界文化遺産に

2021年5月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録され、喜ぶ人々。

亀ヶ岡石器時代遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」は7月下旬、世界文化遺産に登録されました。
地元の遺跡が世界遺産となり、作品を通じて多くの人に縄文文化を知ってもらいたいと考える一戸さんの後押しになっています。
わたしもこの取材を通じて、土器や土偶をつぶさに見る楽しさに気づきました。
世界遺産登録にあわせて、みなさんも縄文人が作った土偶や土器をじっくりと眺めてみてはいかがでしょうか?

 

県内の縄文遺跡を映像でまとめて見られる記事はコチラ!
↓↓↓↓↓↓

この記事に関連するタグ

おすすめの記事