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日本海溝津波の浸水想定 青森県民の意識は?

執筆者早瀬翔(記者)・細川高頌(記者)
2021年11月05日 (金)

日本海溝津波の浸水想定 青森県民の意識は?

青森県がことし(2021年)新たに公表した日本海溝で巨大地震が起きた場合の津波の浸水想定。
NHKが津波の影響を受けるとされる県内の市町村に住む人を対象にインターネット調査を行ったところ、想定が公表されたことを「知っている」と答えた人は41%で、「知らない」と答えた人は59%でした。
調査結果について、詳しくお伝えします。

調査の概要

青森県は2021年3月、北海道から岩手県沖の日本海溝で、東日本大震災クラスの巨大地震が起きた場合の国の想定に基づいて、県内の津波の浸水想定を新たに公表しました。
NHKは、この想定について、津波の影響を受けるとされる地域のうち、太平洋と陸奥湾などに面した県内の17市町村に住む20歳以上の人を対象に10月、民間の調査会社を通じてインターネット調査を行い、800人から回答を得ました。

日本海溝津波の県の浸水想定についての調査

調査対象
青森市・むつ市・野辺地町・横浜町・平内町・今別町・外ヶ浜町・蓬田村・八戸市・三沢市・おいらせ町・大間町・階上町・六ヶ所村・東通村・風間通村・佐井村

調査結果の詳細
この中で想定が公表されたことを知っているか聞いたところ、
▼「知っている」が41% ▼「知らない」が59%でした。

“日本海溝津波の浸水想定を県が公表したこと知っているか”アンケート

想定が公表されたことを「知っている」と答えた人に、自分の住んでいる市町村の浸水想定を知っているか聞いたところ、
▼「知っている」が78%
▼「知らない」が22%でした。

自分の住んでいる市町村の浸水想定を「知っている」と答えた人にどう感じたか、複数回答で聞いたところ、
▼「災害への備えを見直そうと思った」が55%
▼「意識や行動は特に変わらない」が37%
▼「想定のような津波や浸水は起こらないと思った」が10%でした。

想定が公表されたことを「知らない」と答えた人に理由を複数回答で聞いたところ、
▼「報道が足りないから」と「知人や地域の間で話題になったことがないから」がそれぞれ43%
▼「行政の周知が足りないから」が41%でした。

日本海溝で起きる巨大地震の津波では、陸奥湾にも津波が押し寄せると想定されていることについて知っているか聞いたところ、
▼「知っている」が40%
▼「知らない」が60%でした。

日本海溝で巨大地震が起きた場合、津波は陸奥湾の沿岸にくると思うか聞いたところ、
▼「思う」が47%
▼「思わない」が24%
▼「わからない」が29%でした。

日本海溝で巨大地震起きた場合、津波は陸奥湾の沿岸にくると思うか

「思わない」と回答した人に複数回答で理由を聞いたところ、
▼「陸奥湾の形から津波がくるとは考えられないから」が74% 
▼「陸奥湾に津波がきたという例を聞いたことがないから」が33%
▼「想定されている震源が遠いから」が11%でした。

“思わない”と回答した人の理由

日本海溝で起きる巨大地震の津波に備えて、自治体や地域で対策は必要と思うか聞いたところ、
▼「必要」が86%
▼「必要ない」が2%
▼「わからない」が12%でした。
         
対策が「必要」と答えた人にどのような対策が必要と思うか複数回答で聞いたところ、
▼「詳細なハザードマップの作成や周知」が77%
▼「避難場所の見直し」が72%
▼「防潮堤や津波避難ビルなどの整備」が60%
▼「子どもたちへの教育」が53%などでした。

自分自身や家庭で日本海溝津波の想定を踏まえた対策をとろうと思うか聞いたところ、
▼「すでに対策をとっている」が8%
▼「対策をとろうと思う」が57%
▼「対策は不要だと思う」が11%
▼「わからない」が24%でした。

東日本大震災のあと、災害への関心や意識が変わったか聞いたところ、
▼「変わった」が82%
▼「変わらない」が18%でした。

年代別の結果

調査結果を年代ごとに見てみます。

日本海溝で巨大地震が起きた場合の津波の浸水想定を県が公表したことを知っているか聞いた質問では、「知っている」と答えた人は、
▼20代が24%
▼30代が26%
▼40代が37%
▼50代が47%
▼60代が52%
▼70代が56%
で、年代が下がるほど割合が低くなりました。

想定の公表を「知っている」と回答した人の割合

日本海溝で巨大津波が起きた場合、津波は陸奥湾の沿岸にくると思うか聞いた質問では、「思う」と答えた人は
▼20代と30代がいずれも38%
▼40代が49%
▼50代が46%
▼60代が47%
▼70代が72%
で20代と30代がほかの年代よりも低くなりました。

日本海溝で起きる巨大地震の津波に備えて、対策が必要と答えた人にどのような対策が必要と思うか聞いた質問では、「防潮堤や津波避難ビルなどの整備」と答えた人は、
▼20代と30代がいずれも71%
▼40代が61%
▼50代が59%
▼60代が49%
▼70代が46%
と、年代が下がるほど割合が高くなりました。

地域別の結果

調査結果を陸奥湾に面した7市町村とそれ以外の10市町村に分けて見てみます。

日本海溝で巨大地震が起きた場合の津波の浸水想定を県が公表したことを知っているか聞いた質問では、「知っている」と答えた人は、
▼陸奥湾側が43%
▼それ以外が38%でした。

日本海溝で起きる巨大地震の津波では、陸奥湾にも津波が押し寄せると想定されていることについて知っているか聞いたところ、「知っている」と答えた人は、
▼陸奥湾側が45%
▼それ以外が35%でした。

日本海溝で巨大津波が起きた場合、津波は陸奥湾の沿岸にくると思うか聞いた質問では、「思わない」と答えた人は、
▼陸奥湾側が29%
▼それ以外が19%でした。

「思わない」と答えた人

陸奥湾には過去に少なくとも津波が8回到達

 

陸奥湾の沿岸では過去に少なくとも8回、津波が押し寄せた記録や痕跡が残っています。

青森県のまとめによりますと、陸奥湾沿岸では280年前の1741年以降、少なくとも8回津波が押し寄せた記録や痕跡が残っています。

このうち江戸時代中期の1741年には北海道の渡島大島の噴火活動で山が崩れ落ちて大津波が発生し、青森市にも2メートルの津波が押し寄せた痕跡があります。

また、61年前の昭和35年に南米のチリ沖で発生したマグニチュード9.5の巨大地震では、津波が太平洋を伝って陸奥湾にも入り込み、
▼むつ市で2メートル10センチ
▼野辺地町で2メートル
▼青森市で1メートル50センチの津波が押し寄せました。
この津波で、青森市やむつ市などでは家屋に被害が出たという記録も残っています。

また昭和43年に起きたマグニチュード7.9の「十勝沖地震」でも
▼むつ市で80センチ
▼外ヶ浜町で70センチの津波が押し寄せています。

青森県は「陸奥湾でも過去に津波が押し寄せていることを知って、防災意識を高めてもらいたい」と話しています。

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