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青森・"線状降水帯"に気を付けて!昭和50年、大雨災害の記憶

執筆者森谷日南子(記者)
2021年07月16日 (金)

青森・"線状降水帯"に気を付けて!昭和50年、大雨災害の記憶

発達した積乱雲が帯状に連なることで発生する「線状降水帯」。

最近、ニュースで耳にする方も多いのではないでしょうか。

実はこの線状降水帯、かつて青森でも大きな被害をもたらしたと考えられています。

当時の証言と、その備えを解説します。

線状降水帯ってなに?

線状降水帯ってなに?

線状降水帯は発達した積乱雲が帯状に連なった現象のことです。

7月1日には伊豆諸島で発生して、大雨をもたらしました。

これがそのときの伊豆諸島周辺のレーダー画像です。赤く囲まれている部分が「線状降水帯」の雨雲です。

3時間に約160ミリの雨

さらに、6月29日にも沖縄本島でも発生しました。

停滞した梅雨前線にしめった空気が流れ込み続けたことが要因とみられています。

名護市周辺では、午前3時までの3時間に約160ミリの雨が降り、道路の浸水や土砂崩れが起きました。

東北・青森でも線状降水帯が

では、わたしたちが住む東北や青森で被害は起きているのでしょうか。

取材を進めると、平成25年8月に秋田県で線状降水帯が発生したことが分かりました。その影響で大雨となって、仙北市では6人が土石流に巻き込まれ犠牲となっています。

600棟以上の住宅が床上まで浸水

そして、青森県でも46年前に大雨による被害が出ていることが分かりました。

発生したのは昭和50年の8月5日から7日。青森県がねぶたやねぷたなどの祭りでにぎわう時期です。

そのときに起きた大雨で、弘前市百沢地区で土石流が発生して22人が亡くなり、数十人が重軽傷を負いました。県内では600棟以上の住宅が床上まで浸水するなど大きな被害が出ました。

青森地方気象台の担当者は、当時の気象レーダーから線状降水帯が起きた可能性が高いと指摘しています。

小田嶋孝一 防災管理官

小田嶋孝一 防災管理官
「深浦のあたりから青森県を横断するくらいの雨雲の長さになっています。何本かの線状降水帯があるのではないかと考えられます。次々、雷雲が生まれて同じようなところに強い雨をもたらしたと十分考えられます」

「自宅が土砂に飲み込まれた」

いったいどんな災害だったのか。

取材を進めると当時の状況をよく知る葛西繁雄さん(94)が取材に応じてくださいました。

葛西さんは46年前の大雨で、当時中学2年生だった娘のあけみさんと妻の令子さん、それに義理の母の八重さんの3人を亡くしました。

葛西さんは当時の状況をゆっくり、はっきりした口調で語り始めました。

葛西繁雄さん

葛西繁雄さん 
大雨が起きた日、百沢地区はねぷた祭の時期でした。たくさんの人が里帰りしてにぎわっていました。

ねぷたが終わった午後8時ごろ、雨が降り出し次第に雨足が強くなりました。地面からの跳ね返りが強くて、窓から見た視界がぼけて車なのか人なのかはっきり分からない状況でした。

午前3時半ごろ、降り続く雨と雷の音で2階の寝室で目が覚め、外の様子を見ようと自宅1階に降りました。

すると、1階では娘と妻そして義理の母が「雷がこわい」と震えていました。

わたしは3人に「絶対ここにいるんだぞ」と言って、3人を残したまま外に出ました。

その瞬間、近くの沢で土石流が起きて自宅が飲み込まれました。

わたしは倒れてきた木材に下敷きになったまま流されましたが、200メートルくらい流れたところで止まり、どうにか生きた状態で病院に運ばれました。

家族3人が亡くなったとあとから聞いて、どうして「逃げろ」と言わなかったのだろうと何度自分を責めたか分かりません。

慰霊のための施設を建てました

葛西さんはそう話したあと、土石流が起きた場所に案内してくれました。

葛西さんたちは災害を忘れてはならないと、流れてきた巨大な石をそのまま残し、そばに慰霊のための施設を建てました。

巨大な石に近づいてみると、165センチあるわたしの背丈の2倍もの大きさでした。

葛西さんが「これが流れてきたんですよ」と話しかけてくれましたが、あまりの大きさにことばが出てきませんでした。

そして、葛西さんに案内されて、慰霊の施設の中に入ると、そこには土石流で亡くなった22人全員の遺影がおさめられていました。

毎年欠かさずここを訪れ、亡くなった人たちの供養をしている葛

毎年欠かさずここを訪れ、亡くなった人たちの供養をしている葛西さん。独り言のように話し出しました。

葛西繁雄さん
「わたしよりみんな悲しい思いをした人がいっぱいいるんだな。わたしは拝めるからまだ幸せ、一家全滅して拝めない人もいるんです。3人は、2階に上がっていれば結果的には助かったのではないか。大雨などの災害があったときは、自分が危ないなと思ったら、自主避難を早くしたほうがいいんじゃないかなと思っています」

“線状降水帯は青森でも起きる”

わたしは葛西さんが言った、家族の身を守るための行動ができたかもしれないと悔やむことばを忘れることができません。

今後も、同様の災害が起きる可能性はあるのか。気象台の担当者に聞いてみると、青森県でも今後、発生する可能性があると指摘しました。

小田嶋孝一 防災管理官
「ここ数年だと秋田、岩手で線状の降水によって、大きな災害がありました。北海道でも線状降水帯によって洪水や土砂災害が発生しています。たまたま青森県を襲っていないということだけであっていつ発生してもおかしくない」

線上降水帯に関する“新たな情報”

全国で大きな被害をもたらす線状降水帯。気象庁は6月から線状降水帯が発生したときなどに「顕著な大雨に関する情報」の発表を始めました。

気象庁は、いま予測に向けた動きを進めています。

線状降水帯は、前線に向かって湿った空気が継続して流れ込む場合などに発生します。

このため気象庁は、空気中の水蒸気量を正確に計測しようと新しいアメダスを全国に設置していて、県内でもことし3月、弘前市など3か所に設置しました。

将来的にこのアメダスを使って、線状降水帯の発生を予測しようと計画しています。

避難のタイミングは?

とはいっても、現状では線状降水帯の予測はできません。

では、避難はどのタイミングですればいいのでしょうか。

気象台は「顕著な大雨に関する情報」が出る前に避難してほしいと話しています。

小田嶋孝一 防災管理官
「線状降水帯が発生した場合に必ず災害になります。間違いなく災害が発生します。顕著な大雨に関する情報だけで避難するのではなく、大変危険な状態になる前に避難所に行くということが大事になると思います」

線状降水帯をピンポイントで予測するのは現状では難しいですが、大雨自体は地震と違ってある程度、予測することができます。

被害が起きる可能性がある場合は「大雨警報」「洪水警報」「土砂災害警戒情報」などが出されます。

こうした情報が出されたら、危ないと思って身を守るための行動をとってください。

また、時間があるときにぜひ、ハザードマップなどに目を通して身の回りに土砂災害や浸水のリスクがないかも確認してください。

わたしたちもニュースやWEB、それに「NHKニュース・防災アプリ」を通して地域の災害や避難に関する情報などをお伝えするので、“ひと事”だとは思わず万全の備えをしてほしいと思います。

「NHKニュース・防災アプリ」はこちらから無料でダウンロードして利用できます。
https://www3.nhk.or.jp/news/news_bousai_app/index.html

このアプリを使えば、テレビが見られない環境でも、NHKや公的機関からの情報をチェックできます。

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