ページの本文へ

  1. トップページ
  2. 社会
  3. "ぬい撮り" ツアーがビジネスに!?

"ぬい撮り" ツアーがビジネスに!?

執筆者細川高頌(記者)
2022年01月07日 (金)

"ぬい撮り" ツアーがビジネスに!?

突然ですが、みなさんは “ぬい撮り” という言葉をご存じでしょうか。

文字どおりと言えば文字どおり、“ぬいぐるみ”と“撮る”を合わせた言葉で、ぬいぐるみが主役の写真を旅行先や自宅などさまざまな場所で撮影することを指しています。“ぬい撮り”の写真はSNSなどに投稿され、若い世代を中心に多くの人が楽しんでいます。

青森市の大学には、これまで個人で楽しむものだった”ぬい撮り”をビジネスにつなげようと取り組む学生たちがいます。

「なぜぬい撮りをビジネスに?どうやって?」
疑問を抱いた私は、早速学生たちに会いに行きました。

ぬい撮りの魅力ってなに?

青森市の三内丸山遺跡でぬい撮りをしていたのは、去年(2021年)立ち上げられた青森大学のサークルのメンバー。
サークルの名前は、その名も「ぬい撮り倶楽部」です。
現在、およそ20人の学生が所属しています。

撮影

ぬいぐるみを前にスマートフォンを構えて「別の角度の方がいいんじゃない?」「こっちの方が楽しそうに見える!」など、いろいろな構図を試しながら、写真を撮っていました。
なんだかとってもいい雰囲気です。私は、小さな子どものころはぬいぐるみと一緒に寝たり、遊んだりしたことはありましたが、ぬいぐるみの写真を撮ったことはありませんでした。
こうして見てみると“ぬい撮り”って面白いのかも、と思うようになってきました。

宮本美彩紀さん

このサークルの中心メンバーの1人、3年生の宮本美彩紀さん(20)に話を聞きました。親友のような存在となっている、ぬいぐるみを撮影することで、ただの写真とは違った意味を持たせることができるといいます。

青森大学 ぬい撮り倶楽部 宮本美彩紀さん

青森大学 ぬい撮り倶楽部 宮本美彩紀さん
「ただ風景や食べ物の写真を撮るだけじゃなくて、大好きなぬいぐるみが写真に写っていると感情移入ができるし、写真の”物語”を想像することができます」。

よくよく話を聞いてみると、宮本さんは子どものころから肌身離さず持ち歩くほどぬいぐるみが好きだったというんですが、意外にも、最近まで”ぬい撮り”をしたことはなかったそうです。

じゃあ、なぜ”ぬい撮り”サークルで活動しているのかと聞いてみると、くまのぬいぐるみ、”ぬっくん”を紹介してくれました。宮本さんは、この”ぬっくん”の持ち主との出会いをきっかけに“ぬい撮り”に熱中するようになったといいます。

”たくさんの人に旅行気分を届けたい!”

”ぬっくん”の持ち主は埼玉県に住む、松本勇成さん(21)です。重い障害によって、体のほとんどを自力で動かすことができません。

松本勇成さん

宮本さんは大学の授業で、障害のある人の学習環境などについて学んだ際に松本さんと交流しました。

ぬっくん

松本さんもぬいぐるみが好きだと知った宮本さんは、”ぬっくん”を松本さんの分身として預かって青森の観光地で“ぬい撮り”をして松本さんに見てもらえば、旅行に行った気分を楽しんでもらえるのではないかと考えたのです。

交流

青森を象徴するりんご農園などのほか、同年代の松本さんに大学の雰囲気も味わってもらおうとキャンパスでも“ぬい撮り”をした宮本さんは、インターネットを介して松本さんに写真を見てもらいました。すると…。

松本勇成さんの支援者

松本勇成さんの支援者
「写真を見て、本人も表情が反応しています。“ぬっくん”が写真に写っているから、興味を持っているのだと思います」。

 松本さんとの出会いをきっかけに、“ぬい撮り”が多くの人を楽しませる可能性を秘めていることに気づいたという宮本さん。写真を撮ったかいがあったとうれしそうです。そしてこんな話をしてくれました。

宮本美彩紀さん

青森大学 ぬい撮り倶楽部 宮本美彩紀さん
「私も子どものころ入院を繰り返していて、外出できない時期がありました。そのときに自分の大好きなぬいぐるみを通して外の世界を見ることができたら、すごくうれしかったと思います。松本さんのように病気や高齢などで出かけられない人は全国にたくさんいるので、”ぬい撮り”を通してその人たちに寄り添っていきたいと思っています」

”ぬい撮り”をツアーに!?

たくさんの人に”ぬい撮り”を楽しんでもらうにはどうすればいいか。宮本さんたちが考えたのが、県内の観光地をめぐる”ぬい撮りツアー”です。“ぬい撮り”のツアー!? 一体どんなものなのでしょうか。宮本さんたちはビジネスとして、こんなツアーを企画しているんです。

“ぬい撮り倶楽部”のメンバーが観光地などで撮影。

1回9000円で旅行に行きたくても行けない人などからぬいぐるみを預かり、“ぬい撮り倶楽部”のメンバーが観光地などで撮影。

アルバムなどにまとめてお土産と一緒に持ち主に送り返し

こうして“ぬい撮り”した写真をアルバムなどにまとめてお土産と一緒に持ち主に送り返し、旅行に行った気分を楽しんでもらいます。

観光需要の掘り起こし

自治体や旅行会社と連携してツアーを多くの人に知ってもらえれば、コロナ禍で落ち込んでいる観光需要の掘り起こしにもつながると期待されているんです。

しかし、なぜ“ぬい撮り”をビジネスにしようとしているのでしょうか?。
そこには宮本さんたちの想いがありました。
ビジネスにすることで誰もがツアーに参加できる。そしてぬい撮り倶楽部”の経済的な負担を軽くして、息の長い活動にし、多くの人に“ぬい撮り”を楽しんでもらいたい、といいます。

青森市主催のビジネスアイデアコンテスト

果たしてこの“ぬい撮りツアー”はビジネスの現場で通用するのでしょうか。宮本さんたちは青森市主催のビジネスアイデアコンテストに挑戦しました。審査員に具体的なツアーのプランを説明していきます。

見事特別賞を受賞しました。

審査の結果、見事特別賞を受賞しました。審査員は「“ぬい撮りツアー”はコロナ禍で旅行に行きたくても行けない人たちの需要を捉えているし、体の不自由な人も利用できるので、新型コロナが収束したあとも一定の需要が期待できる」と評価して特別賞に選んだと話していました。

縄文דぬい撮り”で青森の魅力発信

縄文דぬい撮り”で青森の魅力発信

自信を深めた宮本さんたち。
ことし中に“ぬい撮りツアー”を実現しようと、ツアーコースの検討を始めています。
注目しているのが、去年(2021年)、世界遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」です。遺跡群を構成する17の遺跡のうち、8つの遺跡が青森県内にあります。冒頭に出てきた三内丸山遺跡は遺跡群の中心的な存在です。
遺跡ではどんな“ぬい撮り”写真が撮れるのか。下見を重ねる宮本さんたちに、遺跡の担当者も期待を寄せています。

三内丸山遺跡センター 佐藤真弓さん

三内丸山遺跡センター 佐藤真弓さん
「新型コロナの影響で思うようなPRができないなかで、若い人たちの新しい発想で遺跡の魅力発信につながっていくのではないかと期待しています」

 “ぬい撮り”で、たくさんの人を笑顔にしたい。
奔走を続ける宮本さんに意気込みを聞きました。

撮影する宮本さんたち

青森大学 ぬい撮り倶楽部 宮本美彩紀さん
「なかなか青森に来ることができない人にも青森の魅力を知ってもらい、大好きなぬいぐるみを通して、もっとたくさんの人に、青森に旅行に来る機会を提供できたらいいなと思っています」

取材後記

宮本さんたちが、大好きなぬいぐるみの気持ちを想像しながら、楽しんで“ぬい撮り”している姿が印象的でした。
「ぬいぐるみだからこそ、より想像力が膨らんで、新しい見方ができると思うんです!」そう話す宮本さんたちの笑顔を見て、私もぬいぐるみを持って行って「新しい視点」を探してみようと思いました。

 

この記事に関連するタグ

おすすめの記事