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コロナ禍の外国人技能実習生に活躍の場を

執筆者細川高頌(記者)
2021年09月28日 (火)

コロナ禍の外国人技能実習生に活躍の場を

収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。その影響は日本で働く外国人技能実習生にも及んでいます。

私は以前、取材でお世話になった人から「新型コロナの影響で会社が倒産して仕事を失ったスリランカの技能実習生が、南部町の農家で受け入れられている」という話を聞きました。

大学で「国際協力」について学び、日本で暮らす外国人の取材をしたいと考えていた私は、早速、八戸支局から車で30分ほどの場所にある南部町の農園に向かいました。

農業用ハウスでミニトマトを収穫していたのは、明るい笑顔が印象的な女性、ニシャさん(25)。

到着したのはネギやミニトマトなどの野菜、そしてサクランボやブドウなどの果物を栽培する3ヘクタールの畑です。

農業用ハウスでミニトマトを収穫していたのは、明るい笑顔が印象的な女性、ニシャさん(25)。

この農園での作業のどんなところが好きか聞いてみると、「私は全部好きです」と屈託なく答えてくれました。

働き始めてまだ半年ほどだということですが、休憩時間になると一緒に働いている人たちと机を囲んで談笑し、すっかり溶け込んでいる様子です。

働き始めてまだ半年ほどだということですが、休憩時間になると一緒に働いている人たちと机を囲んで談笑し、すっかり溶け込んでいる様子です。

ニシャさんの母国は、青森県から7000キロほど離れたインド洋の島国スリランカ。

この農園で働き始めるまでの経緯を聞くと、大変だった時期のことを思い出してしまうのか、少し表情が曇りました。

コロナの影響で職を失う技能実習生

幼いころから、日本のアニメや食文化に興味があったというニシャさん。

幼いころから、日本のアニメや食文化に興味があったというニシャさん。

日本での生活に憧れて、3年前、技能実習生として来日しました。

同じくスリランカから来た20代と30代の女性実習生と一緒に3人で、青森県外にある漬物を作る会社で働いていました。

仕事にも慣れてきて、充実した生活を送っていたといいますが、新型コロナの感染拡大が3人の生活を一変させます。

会社の業績が悪化して倒産して、3人とも仕事を失ってしまったのです。

ニシャさん
「突然、仕事がなくなったからびっくりしました。このときは心配だった」

国のまとめでは、新型コロナの影響で勤め先を解雇されるなどして仕事を続けられなくなった外国人技能実習生は、ことし7月の時点でのべ約5600人。

国のまとめでは、新型コロナの影響で勤め先を解雇されるなどして仕事を続けられなくなった外国人技能実習生は、ことし7月の時点でのべ約5600人。

再び働きたくても受け入れ先が見つかっていない人もいます。

技能実習生に活躍の場を!農家の挑戦

“なんとか日本で実習を続けたい”。思いをくんで3人を受け入れた監理団体も新たな就職先を探しましたが、なかなか見つかりませんでした。

そんなニシャさんたちの苦境を人づてに聞いて手を上げたのが南部町の農家だったのです。

ニシャさんはというと、この記事の冒頭に出てきた大規模農園を経営する沼畑俊吉さんのもとで働くことになりました。

3人を受け入れたのは、町内で野菜や果物を栽培する3軒の農家。

ニシャさんはというと、この記事の冒頭に出てきた大規模農園を経営する沼畑俊吉さんのもとで働くことになりました。

沼畑さんは、とにかく困っている人を助けたい一心だったといいます。

沼畑俊吉さん
「これまで外国人技能実習生を受け入れたことはなく、近い将来も受け入れは考えてはいませんでした。しかしコロナ禍で困っている人たちがいるという話を聞き、農家の仲間2人と、それぞれ1人ずつ受け入れることを決めました」

沼畑さんは以前から若い人に農園で働いてほしいと考えていました。今回、思わぬ形でニシャさんという若い働き手が来てくれたことを心強く思っているといいます。

思わぬ形でニシャさんという若い働き手が来てくれたことを心強く思っているといいます。

 沼畑俊吉さん
「ニシャさんの働きぶりは申し分ないです。真面目に農業に取り組む姿には、私だけでなく一緒に働いている人たちにとっても励みになっています」

初めての受け入れ 町がサポート

南部町役場

ただ…。外国人技能実習生の受け入れは初めてのことで、当初はわからないことだらけ。

沼畑さんは思いつく限り、いろんな人に相談をします。

そんな沼畑さんに支援の手を差し伸べたのが南部町の交流推進課です。

実は、移住促進などを担当するこの部署では人口減少と高齢化で少なくなっている町内の働き手を補おうと、外国人を受け入れる企業などの支援に乗り出していたのです。

南部町交流推進課 松原浩紀課長
「労働力不足が様々な分野で顕在化してきている。町内の事業者から支援についての相談などがあった場合はできるだけ支援していきたい」

当初、3人で暮らす家がなかなか見つからなかったため、条件に合う家が見つかるまでの間、移住促進のために町が整備した住宅を無償で貸し出したのです。

町はすぐさまニシャさんたちの住まいについて支援を始めます。

当初、3人で暮らす家がなかなか見つからなかったため、条件に合う家が見つかるまでの間、移住促進のために町が整備した住宅を無償で貸し出したのです。

3人が移住促進住宅から農園に通って働く間、沼畑さんたちは家探しを続けました。

3人が移住促進住宅から農園に通って働く間、沼畑さんたちは家探しを続けました。

約3か月後、条件に合った家が町内で見つかりました。5DKの平屋の住宅で、3人が一緒に暮らせます。

それぞれ自分の部屋はありますが、しょっちゅう誰かの部屋に集まっておしゃべりをするほど仲がいいのだとか。

私が昼食の時間にお邪魔した際は、3人で手分けをしながら手際よく料理を作っていました。

インターネットで購入したスリランカのスパイスと、南部町でとれた野菜を使ったカレー。働くことへの活力になっているといいます。

おいしそうだなと思って見ていると、私にも作ってくれたので遠慮なくいただきました。

スパイスの辛さと野菜の甘みのバランスがとてもよく、これまでに食べたことのない新鮮なおいしさでした。

スパイシーな辛さもそこそこあるな、と思っていたのですが、ニシャさんたちには「その程度で辛いと言っていたらダメですよ」と言われました。

そして、町が力を入れているのが、外国人技能実習生などを対象にした日本語教室です。

そして、町が力を入れているのが、外国人技能実習生などを対象にした日本語教室です。

できるだけ不安なく生活してもらおうと日常生活で使う言葉や、漢字の書き方などを月に2回ほど教えています。

日本の文化にも親しんでもらおうと習字にも取り組んでいます。

ニシャさんたち3人も挑戦!「愛」や「助」など思い思いの漢字を書いていきます。

ニシャさんが選んだのは意外な字でした。

その漢字は「葱(ねぎ)」です。

その漢字は「葱(ねぎ)」です。

農園で栽培されるネギの管理もしているニシャさん。

この字を選んだ理由について「南部町で作られている有名な野菜だから」と発表していました。

それを聞いた私は、ニシャさんが地元に愛着を持ってくれているように思えてうれしく感じました。

さらに多くの外国人を受け入れたい

こうしてニシャさんたちを支えている南部町は今後、さらに多くの外国人の働き手を受け入れていきたいとしています。

南部町交流推進課 松原課長

南部町交流推進課 松原課長
「外国人の受け入れをこの地域では先駆けて実施して、外国人の受け入れが進んでいる南部町というのを認知してもらえるよう積極的に支援していきたい」

 取材を終えて

外国での生活という不安の上に、仕事まで失ってしまう。

ある意味で“弱い立場”の外国人技能実習生には新型コロナが深刻な影響を及ぼしているのだと改めて実感しました。

その一方で、行政と農家が一体となって外国人を受け入れ活躍の場を提供しようという今回の取り組みは、外国人との共生を進める上でのヒントになるのではないかと思いました。

私はというと、ニシャさんたちが作ってくれたカレーの味を思い出しては、明るく前向きな人たちを育んだ遠い異国に思いをいたしています。

新型コロナの感染が1日も早く収束し、スリランカを訪れてその文化を肌で感じる。そんな日が来ることを願ってやみません。

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