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投稿者 井上二郎アナ

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私にもたらされたのは

2020年10月02日 09:00

彼と久しぶりに顔をあわせました。
個人的にあまり好きではないので、意識的に避けていたのですが、仕方ありません。
毎回毎回、とても嫌な気持ちにさせてくるので、もう二度と会うこともあるまいと思っているのに、奴は居続けるのです。こいつ。

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体重計です。

自粛生活でなんだか体の感じが変わった気がして乗ってみました。


そしたらなんと・・。

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プラス3キロー!3キロも増。
40代の背負う脂肪3キロは、敏腕ボディガードのごとくぴったりと張り付いて離れません。
一瞬、「あ、今のは無かったということで」と笑顔で乗り切ろうかとも思いましたが、鏡に映るワガママ中年ボディを前に何かせねばと思い立った次第です。


で、始めたのがこれ。
姿勢矯正です。

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姿勢を正せば基礎代謝が上がる→基礎代謝が上がれば脂肪が燃焼する→脂肪が燃焼すれば痩せるというのです。

思えば私はずっと姿勢が悪いと言われ続け、充電満タンで出社しても、「疲れているね」。ウキウキしていても「辛いことあった?」と言われる始末。


その私が姿勢を正すというのは、つまりこんな感じ。

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人類の進化なのです。


コロナがもたらした体重増。溜息しか出ませんが、一方で、コロナがもたらしたもう一つのことを、最近特に意識します。

それは「言葉の染み方」とでも申しましょうか、言葉に感じ入ったり、その感覚をつかもうと思ったり、今まで流していた不明な点に留意してみたり、といった感情です。薄暗い不安と不寛容が頭上を覆うような時代、なにがしかの光を言葉の力に求めているからかもしれません。

コロナで延期されていた収録が再開します。Eテレ「こころの時代」の「コヘレトの言葉」。旧約聖書に出てくる言葉で、その語りを担当しています。影絵に語りをあわせるなど、難しくも面白い仕事です。

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コヘレトは繰り返し伝えます。人間には「死」があるゆえに、「生」が尊く感じられるのだと。
つまり、見えない明日があるからこそ、今の一瞬一瞬の希望を大切に生きていくのだ、ということなのでしょう。

今の時代こそ、大切な言葉に感じられます。


言葉との向き合い方を改めて感じた時間もありました。
先日、久しぶりに映画を見に行きました。「三島由紀夫vs東大全共闘~50年目の真実~」。立場や思想の違いはあれど、逃げずに言葉を交わすことこそ関係性や人間そのものを作り上げていくという姿が心に残りました。「言霊(ことだま)」ということばが使われていました。やがて人を動かすのは言葉であり、それは私たちの上を飛び続けると。

この半年で、心に残った言葉を書きとめるようになりました。これは、イタリア人作家パオロ・ジョルダーノ氏が、自国の感染第一波拡大の真っただ中で書き記したエッセイ「コロナの時代の僕ら」という本に書かれていた言葉です。

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「すべてが終わったとき、本当に僕たちは以前とまったく同じ世界を再現したいのだろうか」。

さあ僕は、どんな言葉で答えられるだろう。