シリーズ 「18祭先輩たちのうしろ姿」
〜あの時みんな18歳世代だった〜

竜也[3期生]

何者にもなれない自分だから

「テレビに出られるってよ、応募してみない?」

 そう言って高校時代の親友を誘い、私は第3回目の18祭に参加しました。大学1年生になり、バンドサークルに入ってギターを始めていた私。RADWIMPSが生で見られて、テレビにも出られるなんて、とミーハーな心で応募動画を撮ったことを覚えています。

 そんな中迎えた練習会・リハーサル・そして本番。そこに待っていたのは、大切な出逢いの数々でした。今を全力で楽しむ人。夢に向かって人生の舵を大きく切った人。自分には想像もつかないような絶望と対峙している人。これまで生きてきた時間はほとんど同じでも、出自も性格も、背負っているモノもみんな違う。そんな私たちが“音楽”という共通項で繋がったあの瞬間のことは、とても言葉では言い表せません。

 自分もこんな風に、音楽の力で人の胸を震わせたい。
 帰りの電車の中で、そう決意しました。

 それからの私の大学生活は、バンド一色に染まっていきました。意気投合した同級生たちでオリジナルバンドを組み、練習とライブに明け暮れる日々。これまで以上にギターに打ち込み、仲間とスタジオに入っては明け方まで音楽を鳴らしていました。

 しかし一向に芽は出ないまま、時間は過ぎていきます。このままでは、何者にもなれないまま大学生活が終わってしまう。

 焦る私たちを、未曽有の感染症が襲いました。閉鎖空間でのクラスター感染が問題化し、全国のライブハウスは軒並み休業。ライブ活動はおろか、仲間たちと集まることさえできません。

 そして気づけば、私たちには“就職”というタイムリミットが訪れていました。人生の岐路に立たされ、「就職か、音楽か」と真剣に悩んだことを覚えています。このまま音楽を続けても、売れる保証はない。自分はたとえ一生売れなくても、生活が苦しくても、純粋な心で音楽を楽しめるだろうか、と。

 答えは、「ノー」でした。
 そこで初めて、私には、あの日出逢った仲間たちのような本気さも、勇気もないのだと思い知りました。

 あの日の決意から逃げるように、自室の机の上でパソコンを開いて、なんとなく就活サイトを眺める日々。ふと目に留まったのは、NHKの採用サイトでした。

 そういえば、18祭はNHKの番組だったな。

 そのとき、忘れかけていたあの日の感情が蘇ってきたことを覚えています。
 18歳の私が抱いていた、向こう見ずで、でもかけがえのない気持ち。
 何者にもなりきれない平凡な私に唯一できることは、その想いを次の世代につなぐことなのかもしれない。
 そう思ったとき、社会人になることになんの希望も持てていなかった自分に、初めて“やりたいこと“ができました。

 それを叶えるために、自分はこの組織に入りたい。
 そして今度こそ、自分の決意に嘘をつきたくない。

 新しい決意を胸に、私は何ヶ月も時間をかけてエントリーシートを書きました。
 面接では、何度も言葉を詰まらせながら想いの丈をぶつけました。

 そして念願叶い、私はNHKの職員として、昨年から社会人生活をスタートさせたのです。
 現在は営業やイベント事業を行う部署で、日々たくさんの人と向き合いながら仕事をしています。

 きっと18祭がなければ、自分はあんなに音楽に没頭することも、挫折を経験することも、この組織に入る決断をすることもなかったはず。18祭は、文字通り私の人生を変えてしまったわけです。18祭には、音楽には、そしてメディアには、それだけ大きな力があるのだと思います。

 今の私がやりたいことは、その力を使って若者と向き合い、時には傷つけ、時には背中を押してあげること。何者にもなれなかった中途半端な私だからこそ、何者かになろうとする人の力になりたい。一人でも多くの若者の瞳に、一つでも多くの景色を見せてあげたい。たくさん悩んで、泣いて、立ち上がろうとする人の力になりたいのです。

 この記事を読んでいて、もし応募に迷っている人がいたら…。ぜひ勇気を出して、一歩を踏み出してみてください。
 何も取り柄がなくても、将来の夢なんかなくてもいいのです。
 何者でもないあなたのことを、心から応援させてください。

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