シリーズ「18祭先輩たちのうしろ姿」〜あの時みんな18歳世代だった〜

森下裕介[4期生]

偶然と少しの勇気

「えっ、俺も応募資格あるのか」

 第1回「ONE OK ROCK 18祭」をたまたまTVで見かけ、18祭の存在は知っていました。「第3回RADWIMPS 18祭」に出た大学の友人との会話で、当時19歳で10月に20歳になる私は応募資格がないと考えていましたが、何気なく18祭を調べたところ応募資格があることに気づきました。本番と誕生日はわずか2週間の差しかなく、本当にギリギリ資格を持っていたことを運命だと感じ、応募しようと決意しました。

「自分だけのカッコよさ」このテーマのもと応募動画を撮る際、自分は何が「カッコいい」のかと生まれて初めて考えました。運動はできない、秀でたスタイルもない、そんな自分に何があるのか、本気で考えました。

 私は小学校のころからかなり目立ちたがりで、やりたい!という気持ちが先走って空回りすることも多くありました。そんな自分をいじめてくる人たちもいました。「またやってしまった」、そんな気持ちになりかけた時、友人から「目立ちたがり、カッコいいじゃん」と言葉をかけられました。思いもしない言葉でした。自分にとってマイナスだと感じていた部分がプラスになった瞬間でした。

 迷いがなくなった私は突き進みました。応募動画は、目立ちたがった自分が高校生の時に文化祭で出たのど自慢大会を思い出し、大きな公園の真ん中で大声で歌った動画です。さらに目立つようにテロップをつけるなど編集して提出しました。選考通過のメールをもらった時、目立ちたがりな自分は正しいんだ、と認められた気がしました。

 練習会に参加した時、その場でたくさんの人の夢を聞きました。みんなの夢は大きくて、輝いていて、それでいて力強くて。「目立ちたい」しかない私には、同じ場所に立っていいものかわからなくなりました。やはり自分は普通でしかないと考えていた時、練習会でできたLINEグループで「自主練習会」をやらないか?という話が流れてきました。自分だけのカッコよさを見失っていた私は、ハッとさせられました。「ここで目立たなければ自分は本当にカッコいいのか?」笑われるかもしれませんが、本当にこれだけが自分の18祭での原動力です。他人と比べるものじゃない、自分だけの哲学がここにありました。

 自主練習会を開こうと言ってくれた2人の方々と連絡を取り、自分も手伝う旨を伝えました。50名ほど集まった自主練習会は大成功で、「自分だけのカッコよさ」への自信にもなりました。

 練習会を企画した3人で18祭本番も目立っていこうと、白いYシャツをみんなの夢で彩ってもらい、それを着用して本番に臨みました。奇跡的に、私と自主練習会を開催したもう1人は同じブロック、しかもステージの真ん中最前列でした。2人で自分の思いを最大限吐き出したら、歌い終わった時、自然と涙があふれて抱き合っていました。あの場にいた全員が、「自分だけのカッコよさ」を体現していたと思います。

 時は流れ、22歳になった私は大学院へ進学し、通信関係の研究に邁進しております。19歳の時は何も考えずただ明日を生きていた私ですが、あの日1000人でぶつけ合った「感情」から、迷ってばかりの自分に抗える力をもらい、少しずつ進むべき道を見つけ出しています。あの頃思い描いていた未来とは少し違うかもしれませんが、今を信じて進む力を18祭は見つけさせてくれたんだと思います。時々、自分の進む道はこれでいいのか、ほかの人たちはもっと自分よりうまくやっているんじゃないか、と不安になる日もあります。でもそんなときにあの日全力で歌った「philosophy」が心の支えになってくれます。“マイナスの感情は マイナスでかければいいよ” 恐れるだけじゃ何も変われない、不安な気持ちは糧になる。そう勇気づけてくれます。

 当時自主練習会を開いた2人はかけがえのない友達となり、進む道は違えどお互いに刺激を受け合っています。3人で自転車で九州を巡り、山を越えたりもしました。あの日体現した「自分だけのカッコよさ」は心に刻まれています。

 偶然と少しの勇気から始まったかもしれませんが、確かな記憶となって私の人生を支えてくれています。そんな偶然、もしくは運命である18祭と出会った方々は、後悔しないように全力で挑んでみてください。きっとその後の人生の彩りになってくれるはずです。