物価高騰、あまい資金計画… “お金や管理運営のトラブル”に陥りやすいマンションは?
物価高騰で、管理費や修繕費などの値上がりが止まりません。
さらに、本来必要な額の修繕積立金を集めておらず、大規模修繕を迎えたときにお金が全く足りないというケースも。
また、そうした状況に便乗した業者が、不正な水増し請求をするというトラブルもあとをたちません。どんなマンションが、特にお金や管理運営のトラブルに陥りやすいのか、専門家に聞きました。
(クローズアップ現代取材班)
【関連番組】 NHKプラスで12/26(火) 午後7:57 まで見逃し配信👇
お金のトラブルに陥りやすいマンションの特徴は?
年間1000件以上、マンション管理の相談に乗っている弁護士の香川希理さんに、「お金のトラブルに陥りやすいマンション」の特徴を挙げてもらいました。
-
香川さん
-
やはり一番の問題は「無関心」です。ここ1年、特に物価高騰の影響を受けて、マンションに関するお金や管理運営の相談が非常に増えています。ただ相談に来るということは、まだ管理に関心があるマンションです。本当に問題を抱えているマンションは、問題があること自体に気づいていない。そういったマンションがたくさんあると感じています。本来の理想は、区分所有者が主役となって管理組合がきちんと運営を行っていくことですが、それが無関心や高齢化で難しくなっています。
そうした中で、お金のトラブルに陥りやすいのは、特定の人や会社に任せきっているマンションです。例えば管理会社や建築コンサルタントなどが、全てを取りしきり、つながりのある業者などへ工事や運営業務を発注することが常態化していると、不正の温床になりかねません。管理に無関心な所有者が多いと、理事長も押しつけ合いになったり、1年ごとの輪番制になっていたりします。すると理事長が何も理解せずノウハウも全く引き継がれない。そうして業者の言いなりになってしまうようなマンションが危ないと思います。一方で、特定の人が理事長を長期間続けていて、業者と癒着するケースもあります。
トラブルに陥らないための防御策
ーでは、お金のトラブルに陥らないために、具体的にどのような防御策があるのでしょうか。
-
香川さん
-
やはり所有者自身が運営主体なんだと自覚をしっかり持つことです。そして自分たちでも見積もりをとること。業者を選ぶときも任せきりにせず、自分たちで探してきた別の専門家にチェックしてもらいながら、できることならばダブルチェックの体制があるといいと思います。
いま注目されている、外部の専門家や管理会社を管理者にする『第三者管理』についても、「楽だから」という理由で任せきりにするのではなく、区分所有者が理事会や監事として、管理者を丁寧にチェックする体制にすることが必要です。
これから買う人が確認すべきこと
最後に、これからマンションを購入しようという人が、どういう情報を確認すべきなのかも伺いました。
-
香川さん
-
国の調査によると、マンションを購入する人のほとんどは、間取りや立地を優先し、共用部分の維持管理状況は、ほとんど考慮していません。しかし、「マンションは管理を買え」という言葉があるように、マンションを購入する際には管理状況を調査検討すべきです。
ではなぜ、「マンションは管理を買え」なのでしょうか。この問題の本質には、多くのマンション購入者の「勘違い」があるように感じます。つまり、マンションの管理をほとんど知らない方々は、「マンションを買う=部屋(専有部分)を買う」と考えていると思います。
しかし、法的には、マンションを買うと、部屋(専有部分)だけではなく、共用部分や敷地の共有持ち分も買うことになります。さらに言えば、共用部分や敷地の権利とともに義務(管理義務や事故が起こったときの賠償義務など)も負うことになります。しかし、多くのマンション購入者は、その認識がありません。このことが、購入後の「無関心問題」や「管理不全」を引き起こしていると感じます。
「マンションは管理を買え」の具体的な中身として、ぜひ以下のようなポイントをチェックしてみてください。
①管理組合の修繕積立金会計の残高
-
香川さん
-
基本的に残高が多ければ多いほどよよいと思います。ただし残高が多くても、適切な時期に大規模修繕工事が行われていなければ、結局はお金がないのと一緒です。
②マンションの修繕状況や修繕履歴
-
香川さん
-
適切な時期に適切な大規模修繕工事が行われているか。外壁工事や漏水補修工事が頻発している場合には、そもそも施工不良マンションのおそれがあるので要注意です。
③毎月の管理費、修繕積立金の金額
-
香川さん
-
高すぎれば毎月の負担が重くなります。一方、安すぎてもマンションの管理修繕が適切に行われないリスクがあります。
④総会、理事会の開催状況、出席状況
-
香川さん
-
適切な頻度で定期に行われているかどうか。また、行われているとしても、出席などが適切にされているか否かもチェックしてみてください。
⑤管理規約、使用細則の中身
-
香川さん
-
標準管理規約の改正などを反映しているか。また、まれに適切性が疑われる規約、細則が独自に設定されている管理組合があるため、全文を一読すべきだと思います。
⑥管理組合内での紛争の有無
-
香川さん
-
旧理事会と現理事会で訴訟が起こっている管理組合や、毎年クレーマーから訴訟を起こされている管理組合があるため、要注意です。
⑦管理会社の管理体制
-
香川さん
-
自主管理でうまくいっている管理組合もありますが、うまくいっていないケースも多いです。また管理会社に委託している場合は、一部委託か全部委託かも確認すべきです。
(一部委託の場合には、何を委託して何を委託していないかも確認してください。)さらに、マンション管理を副業的に行っている会社の中には、専門知識や経験が不足している会社もあるので要注意です。
トラブルなどの相談状況
全国各地で管理組合からの相談に乗っているNPO法人全国マンション管理組合連合会に寄せられた管理運営やお金に関する相談件数は、最近増加しています。
連合会の会長を務める畑島義昭さんは「特に今年は物価高騰に関する相談が多く寄せられている。管理会社から管理費や修繕積立金の値上げを提示されたり、予定していた修繕工事の見積額が変わってしまったりするなどのケースもあります。こうした物価高騰などに対応して、外部の専門家などに相談しながら、いち早く資金計画などを見直すことが大切です」と語ります。
【関連番組】 NHKプラスで12/26(火) 午後7:57 まで見逃し配信👇