動脈硬化・脂質異常症 効果的で無理のない運動

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効果的で無理のない運動は

動脈硬化の予防で食生活の改善と並んで重要なのが運動です。運動が苦手だったり、長続きしないという人でも無理なく気軽にできる運動を紹介します。運動を習慣化して、しなやかな血管を維持しましょう。

運動の効果

運動には、血液中の中性脂肪を減らし、HDL(善玉)コレステロールを増やす効果があります。LDL(悪玉)コレステロールは運動だけで減らすことは難しいですが、運動によって中性脂肪を減らし、HDL(善玉)コレステロールを増やすことは、動脈硬化の進行を防ぐことにつながります。

小さな工夫で活動的な毎日を ~3つの目標~

体を動かしたほうがよいとわかっていっても、具体的にどうしたらいいのか、迷ってしまうかもしれません。そこで、具体的な3つの目標があります。

3つの目標

①1日7500歩以上歩く
②何でもいいから1日10分間運動
③こまめにちょこちょこ立ち上がる

この中から、できるものを上手に組み合わせ、活動的な生活を心がけるのがおすすめです。また、何か1つやってみて、うまくいかなかったら、自分には合わなかったと考えて、別のことを試してみましょう。もし、うまくいったら、別の“できること”と組合せてより良い成果を目指してください。運動を含め身体活動を高めることで、きっと次回の健康診断の結果はよくなることでしょう。

①1日7500歩以上歩く

1日7500歩以上歩く

ある研究では1日7500歩以上歩いているグループは、中性脂肪値が下がり、HDL(善玉)コレステロール値が高くなるという結果が出ています*。1日7500歩以上歩くことが動脈硬化予防に有効です。歩数計やスマートフォンのアプリで歩数を確認しながら歩くとよいでしょう。個人差がありますが7500歩の目安は、距離5~6km、約1時間です。7500歩が難しければまずは4000歩**からでもウォーキングに取り組みましょう。

**出典:Houle J,et al.J Cardiopulm Rehabil Prev. 2013  **Banach M, et al. Eur J Prev Cardiol. 2023

<歩く機会を増やすには>

  • 通勤や通学、買い物などの行き帰りに、1つ手前の駅や停留所で降りて歩く。
  • エレベーターやエスカレーターの利用を控え、無理のない範囲で階段を使う。
  • 買い物やウインドーショッピングがてら、大型商業施設内をぶらぶら歩く。上の階に上がるときは階段を使い、下りるときはエスカレーターを使うなど、無理せずメリハリをつけて行う。
    →メリハリをつけた運動は、動脈硬化や脂質異常症の改善に効果があると報告されています***

***出典:EK Vesterbekkmo et al.European Heart Journal, 2022

②何でもいいから1日10分間運動

運動は1日10分程度でも、動脈硬化を防ぐ効果があるといわれています。ゆっくりとした動きの運動は、脂肪が燃焼しやすい体づくりにつながります。すぐにできる簡単な運動を紹介します。

運動指導
帝京大学 教授 佐藤真治

動脈硬化対策の運動「いすスクワット」「ベンチステップ運動」

筋肉には、収縮するのが速い「速筋(そっきん)」と、収縮するのが遅い「遅筋(ちきん)」がありますが、遅筋を刺激する運動は脂肪を燃やしやすい体をつくることができます。今回は、遅筋を刺激する、2つの運動を紹介します。

<注意点>

  • ひざや腰を痛めないように注意
  • 血圧が気になる人は運動をする前後で必ず血圧をチェックする
    運動後に、血圧が著しく上がる人は行わない。かかりつけ医に相談して、別の運動法を考える
  • 呼吸を止めずゆっくり行う
  • いすや踏み台は安定したものを使い平らで滑らない場所で行う

【いすスクワット】

期待できる効果:太ももや背中を鍛え、代謝を上げることができる。

着席・手を腰に当てる

①安定したいすに座る。足は肩幅より少し広く開き、つま先は少し外側に向け、手は腰に当てる。

上体を倒し正面見る

②上体を前に倒し、正面を見る。

立ち上がる

③4秒かけて、ゆっくりと立ち上がる。立ち上がったとき、ひざはやや曲げたまま。

尻をつけない

④4秒かけて、ゆっくりと腰を下ろしていく。お尻はいすにつけず、続けて③を行う。

③と④を1セットとして10回を目標に行う。
10回できない場合は、無理のない回数から始めて、少しずつ回数を増やしていきましょう。

【ベンチステップ運動】

ベンチステップ運動

この運動では特にHDLコレステロールを増やすことが期待できます。
*踏み台(高さ約20cm)は、スポーツ用品店やホームセンター、インターネット通販などで購入できます。家の階段の1段目などで、手すりにつかまりながら行ってもよいでしょう。

ポイント
自分に合った足の幅で行うと、重心が安定します。

足踏み
重心鼻緒

足踏みをしながら、両足の左右の幅を狭めたり広げたりして、重心が足の外側や内側に動くのを感じます。足の親指と人さし指の間(げたの鼻緒が当たる部分)に重心がくるのが適度な足の幅です。

<やり方>

右足をのせる

①踏み台の上に右足をのせる。

台の上にのる

②左足ものせて、踏み台の上にまっすぐ立つ。

右足下ろす
両足下ろす

④右足を下ろし、左足も下ろす。
⑤左足からのせ、左足から下ろす。
⑥左右交互にゆっくり行う。

  • 10分間程度を目標に行います。疲れたら、途中で、その場で足踏みをしてもよいです。
  • 体力に自信のある人は、10分間のベンチステップ運動を1日に2~3回行いましょう。
  • 体力に自信のない人は時間を減らしてもよいので、無理のないペースで続けてください。
  • 3分程度の音楽を聞きながら運動を3回行うと、合計で10分程度の運動になります。
    連続で10分でなくてもかまいません。

③こまめにちょこちょこ立ち上がる

こまめに立ち上がる生活習慣は中性脂肪値を下げ、座っている時間が長いほど中性脂肪値が上がるという報告があります。座りっぱなしの時間を短くし、意識的に立って体を動かすようにしましょう。また、立ち上がるたびに全身の血液の流れがよくなり、血管壁の内側を覆って血液と接する細胞である血管の内皮(ないひ)細胞が活性化されます。これは、血管をしなやかに保つために役立ちます。

*出典:Roland Loh,et al. Sports Med. 2020
Bernard Duvivier,et al. PLoS One. 2013

◎こまめに立ち上がるタイミング

  • デスクワークなどで座っている時間が長い人は、30分~1時間に1回は立ち上がる。
  • 電車では、できるだけ座らずに立つ。
  • よく使うものは、立ち上がらないと手が届かない場所に置く。
  • 職場や施設などでトイレを使うときは、違う階へ階段を使って行く。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年9月 号に掲載されています。

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