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2021年3月16日(火)

地域経済を支えられるか
待ったなしの地銀改革

地域経済を支えられるか 待ったなしの地銀改革

新型コロナによって疲弊する地域経済。本来、それを支えるのが全国に101行ある地方銀行だ。だが、地銀を取り巻く環境は厳しい。人口減少やマイナス金利政策によって収益が悪化していたところへコロナの影響も重なり、経営基盤の強化が急務となっている。こうした中、各地銀はネット金融大手との提携やITコンサルティング事業の強化など、様々なアプローチで変革を急ぐ。果たして地銀は、この先も地域の中で確かな存在意義を示すことができるのか。現場の行員たちの試行錯誤を通じて見ていく。

出演者

  • 藤沢久美さん (シンクタンク・ソフィアバンク 代表)
  • 武田真一 (キャスター) 、 小山 径 (アナウンサー)

地域経済を支えられるか 最前線で…

わが街で一番安泰な企業として多くの方が思い浮かべるのが、地方銀行だと思います。そのトップが、このままではビジネスが成り立たないとまで口にする状況。何が起きているのでしょうか。

地方銀行は地域の中核的な金融機関として、集めた預金を元に地域の企業に融資。その金利収入を得てきました。

しかし低金利政策の影響などで収益が悪化。直近の決算でも全国の地銀の半数余りが赤字、または減益となっているんです。

新型コロナの影響で疲弊する地域経済を支えるため、地銀は目下、地元企業にできるかぎり融資を行っています。しかし、地銀の経営が立ち行かなくなれば取引先を支えることもできなくなり、最悪の場合は共倒れしかねません。地域経済の危機につながりかねないのです。

ネット金融大手と提携 “融資一辺倒”からの脱却

島根県の第二地銀・島根銀行は、ネット金融大手SBIホールディングスと資本提携。経営の立て直しを図ることとなりました。

業績が悪化した理由は、これまで地銀が収益の柱としてきた融資の落ち込みです。長引く低金利政策で、金利収入が減少。本業でのもうけは、4期連続で赤字となっていました。

島根銀行 鈴木良夫頭取
「地元でどんどん私どもの需要というか、存在意義が薄らいでいるのではと危惧していた。島根銀行の看板のまま商売できるならと、資本提携をSBIに申し込んだ。」

異業種であるネット金融とともに、改革に乗り出したこの地銀。求められたのは、融資一辺倒からの脱却です。

SBIホールディングス 森田俊平専務
「日本における地銀の本来あるべき姿、地銀の存在意義が問われている。預金を集めて金貸して、余った金を運用して小遣いを稼ぐモデルではもうない。」

提携では、ネット金融が持つIT分野など幅広いネットワークを利用します。島根銀行は融資に加えて、IT技術の提供や企業どうしをマッチングさせて販路を拡大するなど、地元企業に役立つサービスを提供。

企業が成長すれば地域が活性化し、将来の融資につながる可能性があります。一方、ネット金融も地銀を通じて、地方の顧客に金融商品を販売できるメリットがあります。

ネット金融が資産の運用や金融商品の開発などを行い、銀行は企業の支援に集中するビジネスモデルです。

SBIホールディングス 北尾吉孝CEO
「私どもだけが、もうけることはない。お互いにもうかるようにする。連携しながら新しい発想、新しいやり方で地域経済の活性化をしていこう。(地域経済に)きちっと貢献すれば、地方の金融機関の収益力は上がっていく。」

島根銀行は、融資以外の企業支援に本格的に乗り出しています。境支店の、竹野下支店長です。

この日訪れたのは、融資先の一つであるカニの小売業者。観光客向けにカニを販売していますが、コロナの影響で客が激減し、苦境に陥っていました。

カニ小売業者
「(コロナで)お客さんが少ない。売り上げも3割4割減っている。別の売り上げを作っていかんと。店売りプラス。」

売り上げを増やしたいという業者。融資するという従来の方法では、期待に応えられません。

島根銀行 境支店 竹野下聡支店長
「基本的に融資を取りに訪問して回っているので、お客さまの事業全体を捉えるような目線はなかった。」

カニの小売業者の窮状を聞いた、竹野下さん。提携によって生まれたネットワークを利用して、販路を広げられないかと動き出しました。

東京ではSBIも動き始めます。この日、行われたのは大手ディスカウントストアとの打ち合わせ。

ドン・キホーテ運営会社 海外戦略担当
「私どもの海外戦略といった形で、ハワイとカリフォルニア、シンガポール、これに加えてタイ、香港、そして今月に台湾。こちらが既出店国になっております。」

この会社は、海外にも多くの店舗を展開しています。月に10億円売り上げる店もあり、看板商品となる日本の食材を探していました。ここで、島根銀行と取り引きのある企業を売り込もうとします。

森田俊平専務
「すごいな。インバウンドがウィズコロナで減るから、減った分をこっち(海外)で補えばいいんですよね。」

ドン・キホーテ運営会社 海外戦略担当
「各地域のおみやげ、インバウンドで人気のあったものを紹介してもらえるとありがたい。」

森田俊平専務
「最初は、例えばカニとかやってみたい。」

ドン・キホーテ運営会社 海外戦略担当
「カニはめちゃくちゃ売れます。カニはすごい。」

早速、島根銀行の竹野下さんはネット金融の幹部を、あのカニの小売業者に案内します。売り先に困っていた地元企業に、新たに海外への販路を作ろうというのです。

日本海のカニのおいしさを、どうアピールするか。海外の店舗に売り込むために、食べ方の動画を現地のことばに訳し、ウェブで公開することにしました。

森田俊平専務
「地方銀行は、地方の産業のために存在している。地元の企業がどうやったら伸びるかを、ひたすら熱心に研究することが本業だと思う。」

融資一辺倒からの脱却を目指す、島根銀行。提携の効果もあって、今年度の最終利益は黒字に転換すると予想しています。

竹野下聡支店長
「いろいろな経営課題を社長さんは抱えている。そこに伴走する。変わったと思う。すごく。」

“ITコンサル”で地域を変革 新たなビジネスモデル

コロナ禍で加速している、“デジタルトランスフォーメーション”。それに対応するため、“ITコンサル”という新たな事業を推し進めている地銀があります。

石川県の北國銀行です。これまでも取引先に対する経営相談は行ってきましたが、それだけでは数ある金融機関の中で差別化できないと危機感を抱いたのです。

北國銀行 杖村修司頭取
「常に“お客さま起点”。これを忘れては必ず市場には残れないと思っている。デジタルを切り口に、会社をどんどん進化させていきましょうと。」

この地銀は、全行員の1割以上にあたる、およそ250人をIT関連の部署に配置。支店の営業担当者に対しても、デジタルツールを使いこなせるようマンツーマンの研修を実施。エンジニアの中途採用も倍増させるなど、人材のITシフトを進めています。

ITコンサルを担当する、向良邦さんです。この日は、コロナで売り上げが激減している老舗の料亭を訪ねました。

北國銀行 ICT推進チーム 向良邦さん
「これはどうでしょう?」

従業員
「人数の変更、アレルギーがあるお客様(情報を)こちらに書いている。」

向良邦さん
「ここを見ないと、わからない。」

従業員
「そうなんです。違うところに行くと、知るのが遅くなる。」

向さんは現場の作業効率が悪い部分を見つけ出し、デジタル技術を活用した解決策を次々と提案していきます。

向良邦さん
「これだけ情報を、予約を受けたときに打っている。例えば同じものが画面に映されていて、もっと気軽に見られれば、リアルタイムで分かればいいのでは。」

従業員
「そうですね。こういったもので見られると助かる。」

料亭はこうしたデジタル化によって、コスト削減を進めていくことを決断。さらに顧客情報のデータベースを作り、営業力の強化につなげていくことも決めました。

取引先の料亭 金城樓社長
「私どものような地方の中小企業、零細企業は(ITの)ノウハウがある人材がいない。(ITを)推進しているのはとてもありがたい。」

向良邦さん
「地域を変える力は、デジタルにはまだまだある。たくさん秘めている。それに合わせて僕らも、もっともっと勉強していかなければと思っている。」

これまで220を超える取引先に、ITコンサルを実施してきたこの地銀。コロナ禍でデジタル化のニーズが一段と高まる中、それに対応することが生き残りにもつながると考えています。

杖村修司頭取
「デジタルなくして、これからの改革はできない。先進的な取り組みをやっていけば、北陸地域の魅力はどんどん上がる。デジタル分野での収益は、今後増えていくと思う。」

いやおうなく変革を迫られている地銀。
その実情について、スタジオで深掘りします。

地域経済を支えらるか 求められるのは

武田:シンクタンクの代表で、地銀の実情に詳しい藤沢さん。まず地銀が、これまでなかなか変革できなかったのはなぜなのでしょうか。

ゲスト藤沢久美さん (シンクタンク・ソフィアバンク 代表)

藤沢さん:大きく2つあると思います。1つはバブル崩壊後、金融機関が求められたものは不良債権の処理で、融資の安全性というのをすごく大事にしなさいと言われるようになったわけです。
融資の安全性を担保するものというのは、企業の財務の“数字”ということになります。そうすると、金融機関は数字をどうしても見てしまう。数字だけを見ていると、ほかの企業の強みであるとか、もっと成長したいとか、売り上げを伸ばしたいとか、そういうものに耳を傾けるということが少なくて、新たなアイデアも出てこない。チャレンジも出てこない、というのが1つ。

あともう1つは、私、地方銀行の社外取締役をやっているので、全国の地域金融機関でお話をする機会があるのですが、そういったところでよく聞くのが、何か新しいことをやらなきゃとは思うけど、規制業種である金融機関はどうしても金融庁さんからやっていいよ、やったほうがいいよと言われないと動きにくいということをおっしゃる方が多いのです。つまり”仕組み”と”空気”、この2つがチャレンジを阻んでいたように思います。

武田:そうした中でコロナ禍に見舞われて、まさに改革待ったなしの状況だと思うのですが、藤沢さんは地域にはどんな新しいニーズがあって、地銀にとってはどんな新たな役割がありえるとお考えですか。

藤沢さん:実はもともとニーズはあったのですが、“数字”を見ていたので本当にあるニーズに目を向けていなかったというのが現実です。ところが、コロナ禍で多くの企業さんが厳しい状態になって、数字を見てもどこも悪いと。どうやったらいいんだろうということで、改めて数字以外のニーズというものに目を向けざるを得なくなってきたというのが現実だと思います。
目を向けたときに何をしなきゃいけないかというと、販路を探すとか、先ほどのVTRのようにいろんなところとつながりを作るというのが、金融機関がこれからやっていかなくてはいけないことの1つではないかと思います。

小山:VTRで見た島根銀行のケースを含めて今、全国各地では地銀の再編を巡る動きが起きています。
主に3つのパターンがあります。1つ目は、先ほどのようなSBIなど地銀以外の大手金融グループが核となって、地銀と連携するというパターン。

そして都道府県を越えて、地銀どうしが広域で連携するというパターンです。

さらに、同じ都道府県に本店を置くライバルの地銀などが、同一エリアで連携するパターン。

ことし(2021年)1月には、福井県の2つの地銀が資本提携しました。

武田:これまでライバルとして、しのぎを削ってきた地銀どうしの提携。銀行員たちは、これまでの仕事の進め方や考え方を大きく変革することを迫られています。

ライバル地銀と提携 そのとき銀行員は

福井県の福邦銀行です。

『お客さま第一に徹し、共存共栄の心で奉仕します。』

規模が小さく、単独では生き残りが難しいと判断。県内トップの福井銀行から出資を受け、傘下に入る決断をしました。両行は今、相乗効果を生み出すため重複する業務を整理し、コストを削減しようとしています。

この日、福井銀行を訪ねたのは、福邦銀行で提携を担当する取締役の林田和博さんです。

視察したのは事務部門。ここに、福邦銀行の同じ部門を移そうとしています。

事務部門を1つにまとめ、効率化。その分、企業を支える現場に人材を手厚く配置するのがねらいです。

林田さんは、提携で最初に成果を出せる分野だと考えていました。

福邦銀行 林田和博取締役
「仕事のあり方の見直し、先にうちがせなあかん。」

「前の業務はやめて。」

林田和博取締役
「もう、えいやでやって。そこから、ばっとやったほうが早いかな。」

しかし、行内からは改革に対する不安の声が上がりました。

福邦銀行 行員
「不満がある。自分らの仕事、将来どうなるかも含めて。ほかの業務で頑張ってもらうのが当然ということは分かっているが、今までやってきたことから変わるのは、我々も不安。社内コンフリクト(あつれき)が高まる。」

現場の責任者が口にしたのは、業務の見直しを余儀なくされることへの懸念です。

林田和博取締役
「いろんな改革をすることの痛みは伴うのかもしれないが、もっと深掘りして提携を進めていかないと、時代についていけない。」

福邦銀行の一部の取引先も、提携の行方を心配しています。この町工場の経営者は、融資のスタンスが提携によって変わることがないか切り出しました。

取引先の町工場 匠精工社長
「福井銀行さんと一緒になった時に、(これまでと)同じ関係性を保っていけるのか。ちょっと不安。」

「一緒になった経費の削減、できるとこを目指しているが、ただお客さまとの関係性は今までどおりさせていただくつもり。」

林田和博取締役
「お客さまも大変。そこを支えていくわれわれにとって、もっともっとできることがないか。地域のお客さま第一に徹して、共存共栄、ウィンウィンでやっていく。」

こうした不安を払拭(ふっしょく)するためにも、提携の効果を目に見える形で早く示したい。林田さんが今、力を注いでいるのが、両行の情報やノウハウの共有です。そのために中堅の行員を1人、福井銀行に出向させることにしました。

これまで営業の仕事をしてきた、今村省二さんです。

林田和博取締役
「きちっとした成果で帰ってきてくれると、俺らもうれしいし。後輩たちもそれに続く形になればいいなと思っている。期待しています。」

福邦銀行から出向 今村省二さん
「プレッシャーですね。」

林田和博取締役
「いや、プレッシャーかけとんよ。」

出向先は、事業承継やM&Aなどを手がける部署。福邦銀行には後継者がいない取引先が多く、事業を他社に引き継いでもらいたいというニーズが高まっています。

今村省二さん
「ご相談があるんですけど。」

企業価値の算定など、規模の小さな福邦銀行が遅れていた分野のノウハウを教わっています。

今村省二さん
「どれぐらいの規模の収益が出ていると、(企業価値の)算定基準に上がってきそうですか?」

「あえて線を引くと、2,000万~3,000万円ぐらい出ていれば。」

今村省二さん
「(年は)4つ下らしいんですけど、業務上は先輩みたいな形で。いろいろ教えてもらっています。」

「今までライバルでやっていた方にノウハウを見せることに違和感があったが、一緒に切さたく磨してやっていけたら。」

今村さんは、後継者がいない取引先の情報を、両行で一定程度共有できないかと提案。月に1度の会合がスタートしました。

福邦銀行
「社長も将来の不安はかなり増している。早く引き継ぎ先を見つけてほしいという要望もいただいていて。」

情報を共有することで、福井銀行の取引先の中から事業の引き継ぎ先を見つけようとしています。

今村省二さん
「1社でも多くニーズ同士をマッチングさせて、そこをしっかり成果として残していきたい。」

林田和博取締役
「もともとの引き出しに福井(銀行)のノウハウを借りられるのは大きい。1プラス1が2を超えていくことを目指していく考え方。それをお客さまに還元していくことが大事。」

変革を目指し試行錯誤を続ける、地銀。
その将来像についてスタジオで議論します。

どうなる?地銀と地域経済の将来

小山:政府や日銀は去年(2020年)秋以降、こうした再編を後押しする政策を次々と打ち出しています。
日銀は経営統合や経費削減した地銀に対して、日銀への預金に金利をつける制度を設けました。
そして金融庁は、同じ県内での合併統合をしやすくする独占禁止法の特例法を制定しています。
さらに、経営統合や財務強化する地銀に補助金を出す制度も、今の通常国会で法整備する方針です。

武田:国の思惑は何なのか。去年の夏まで金融庁で地銀改革を指導してきた、遠藤前長官に聞きました。

金融庁 前長官 遠藤俊英さん
「地域の金融機関自身が目の前の地域の経済の実態を踏まえて、どういったことを金融機関自身、地域のさまざまなプレーヤーと協力をしながらやるべきか。自分事として動き出さないと、決めて動き出さないと事は成せない。国が動こうとしている、中央銀行がいろいろ政策を打とうしているのは、地域金融機関がいろいろな問題意識を持ちながら動こうとしている。動きたいが今ひとつ踏ん張りがつかない、そういった状況に対して背中を押そうと。背中を押すための環境を整備しているということに尽きる。」

武田:金融庁の取材に当たっている、経済部の白石さん。地銀の再編に対する国の本気度どうなんでしょうか。

白石明大 経済部(金融庁担当):体力的に厳しい地銀の再編や、経営基盤の強化の必要性というのはこれまでも指摘されてきました。ただ、新型コロナウイルスをきっかけに国の本気度は一気に高まったと感じています。コロナで悪化した地域経済が、コロナ前の水準に戻るには時間がかかります。このため、地銀は企業の資金繰り支援のほかにも今後の経営再建の道筋を示すことが問われています。
特に地方の中小企業は、飲食や観光宿泊などの業種では需要が蒸発しています。このため、新たな顧客の開拓や場合によっては業態の転換も必要になってきます。しかし、体力やノウハウのない地銀にはこうした課題に応えられません。このまま企業の倒産や廃業が進み、地方経済が疲弊すると地銀の存続も危うくなります。
このため金融庁は、地銀により強い姿勢で経営基盤の強化を促し、地域の経済を支える存在へと変えていきたいと考えています。

武田:藤沢さん、都市銀行もある。信用金庫もありますよね。ネット専業銀行もあります。金融が多様化して地銀不要論も出かねない中で、存在感を示すことはできるのでしょうか。

藤沢さん:例えば都市銀行というのは、日本を代表する企業をお支えするわけです。地域金融機関というのは地域を代表する中核企業を支えて、地域の経済を元気にしていく役割なわけです。
地域というのは実は日本全部ではなくて、それぞれ全部特徴が違う。文化も違う、事情も違うわけです。その中で中核企業となっている企業を応援できるのは地域に根ざした金融機関しかできないし、また、次に地域の中核企業になるような地域の特性にあった文化の中でいかにベンチャーを生み出してくるかというのもやはり地域金融機関がやらなきゃいけない仕事。
そういったことを通じて、地域をどうやって元気にしていくか。もしかしたら地域金融機関が、地域のビジョンを描くぐらいの役割を担っていく。これは地域金融機関にしかできないと私は思います。

武田:地銀のこれからのあり方を示すキーワードとして、藤沢さんが挙げるのが“知融業”。これはどういうことでしょうか。

藤沢さん:金融機関は“お金を融通する”と書きますが、本当にやらなきゃいけないのは“知恵を融通する”こと。
金融機関が知恵を出すのではなく、知恵を持っている人たちを見つけ、その知恵を融通し合って地域の企業を成長していただく、地域を元気にしていただくことをやるのが、本当の金融機関の仕事。

今コロナの時期で世界中、企業の大小に関わらずデジタル革命の中で変革を求められています。コロナによって大変つらい時期ですが、立ち止まるしかない。この立ち止まるときに、どう変革をするかと考えるんですよね。まさにこのとき、金融機関がいろんな知恵を融通してみんなが変わっていくお手伝いをするという、まさに今このタイミングにやらなくてはいけない。そしてそれが都銀ではなくて地銀である理由というのは、各地域が全く違う文化、特性、事情を持っているから。その違う事情をよく理解して、どこにどんな知恵があるのか。どこに強み、弱みがあるのかというのを見つけてつなげるのが地域金融機関です。
なので、合併することだけが答えじゃない。知恵を見つける力を持つ。つなげる力を持つ、人をどう育てるか、仕組みをどう作るか、そして組織をどう作るかというのを今こそ考える。そして、地域を元気にしていく存在であっていくべきだと思っています。

武田:ありがとうございました。さて、小山キャスターはきょう(3月16日)でこの番組最後です。

小山:この番組、担当したのは私は去年の4月からです。その後、私たちの暮らしはさま変わりしていきました。このかつてない1年を皆さんとともにこの番組で見つめ続けたこと、私にとっても忘れられない1年となりました。また、新年度はほかの番組で皆さんにお目にかかります。ありがとうございました。

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