病院火災では平成以降、最大の犠牲者を出した福岡の整形外科医院火災。亡くなった10人のほとんどが70代~80代の高齢者だった。なぜ大惨事は起きてしまったのか。建物に突入した消防士は、かつて経験したことのない“濃密な煙”が、建物に充満していたと証言。専門家による詳細なシミュレーションと実験から、わずかな時間で病院の隅々まで広がった“凄まじい煙のスピード”が明らかになってきた。被害を最小限に食い止めるはずの防火扉が作動しなかった背景には、老朽化や不具合を見逃してしまう“点検制度の落とし穴”があったことも浮かび上がっている。今回の医院のような19床以下の「有床診療所」は、全国に9000以上。大病院から退院したお年寄りたちの受け皿になっている一方で、初期消火に重要な役割を果たすスプリンクラーの設置義務がなかったり、厳しい経営状況で、夜間の人員に限界があるなど、防火に手がまわっていない脆弱な実態も明らかになってきた。高齢者を火災からどう守っていくのか、福岡の大惨事から検証する。
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