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よみがえれ飛鳥美人 高松塚古墳壁画の修復に挑む
科学技術
2010年6月19日放送
鈴木 真二東京大学大学院教授
肥塚 隆保奈良文化財研究所前副所長
1300年前に描かれた極彩色の壁画、国宝「高松塚古墳壁画」。発掘後、急速に劣化が進み、最新の科学を駆使した修復プロジェクトが始まっている。テラヘルツ波という電磁波を使って壁画の内部の傷みが調べられ、壁画の宿敵「カビ」を取り除くために「紫外線」を照射する方法や、ある「伝統材料」に一工夫加える方法が試みられている。貴重な文化財、高松塚古墳壁画をどのように蘇らせ後生に残すのか、その最新の研究に迫る。
放送内容
鮮やかな壁画 なぜ1300年も?
厚さ5ミリメートルほどの漆喰上に描かれた「高松塚古墳壁画」。絵の具に含まれる接着成分は有機物で、時間とともに分解が進むため、顔料が長期間、壁にとどまるのは通常むずかしい。それにも関わらず、「高松塚古墳壁画」が残ったのは、絵の表面を「カルサイト」という物質が覆ったからだと推測されている。「カルサイト」は、水に溶けた二酸化炭素とカルシウムイオンが反応してできる結晶。壁画が長期間、湿度100%に近い環境にあったため、空気中の二酸化炭素が水に溶解し、漆喰表面のカルシウムイオンと反応することで「カルサイト」ができたと考えられている。絵の表面を「カルサイト」が偶然にも覆ったことで、顔料がパッキングされ、壁画に高い耐久性がうまれたと推測されている。
最新手法で見えた!壁画の内部
今まで見ることができなかった壁画の内部を、可視化できる手法が開発された。テラヘルツ波という電磁波の一種を使う方法だ。テラヘルツ波の特徴は、対象となるものを破壊することなく、内部の構造や断面を検出できること。この性質をいかし、今年3月、「高松塚古墳壁画」に対してテラヘルツ波による調査が初めて行われた。その結果、絵の下、広範囲にわたって漆喰が土台から浮き、いつ絵が崩れてもおかしくないような状況にあることがわかった。今後はさらに詳しく調査を行い、壁画の修復に役立てていく予定だ。
カビ対策 江戸美人にヒント!?
壁画の大敵、黒カビ。その色が壁画を汚すだけでなく、菌糸によって漆喰の内部も破壊する。この黒カビを取り除くため、様々な方法が検討されている。その一つが壁画に触れることなく照射できる紫外線だ。壁画を模したサンプルに、ある波長の紫外線をあてたところ、顔料への影響も見られず、一晩で大半の黒カビを取り除くことができた。さらにカビの除去と同時に、漆喰の強化も行える手法の開発が進められている。フノリという海藻を用いた方法だ。フノリは、江戸時代、洗髪に用いられ、せっけんのような界面活性作用がある。さらに接着作用もあり、カビの汚れを除去、吸着することができる。しかしそのままではカビの栄養源になってしまう。そこでフノリに含まれる成分を分子量の違いで分けることで、カビの栄養源にならない技術の開発に成功。この方法を毎日少しずつ続けていけば、10年ほどで、発見当初の壁画に近い状態まで戻せるのではないかと見込まれている。
ZEROフラッシュ
掘らずに探る 古墳の地下
掘ることなく古墳の地下の様子を見られる方法が開発されている。地面に電波をあてる従来の地中レーダーにGPSの原理を応用した装置を組み合わせるものだ。この方法で、これまで捉えられなかった地下の埋葬物の形状が三次元で捉えられるようになった。遺跡の保存につながると技術だと期待されている。