これまでの放送
ヒトの電界を利用せよ 人体通信最前線
科学技術
2010年4月10日放送
根日屋 英之東京電機大学講師
大島 まり東京大学教授
体の表面に広がる電界。その電界で情報をやりとりするのが人体通信だ。ID情報が含まれたカードを身につけるだけで個人認証が可能になるなど、便利でセキュリティー性の高いシステムとして注目されている。人の電界には心臓から生じる電気信号も含まれ、それを心電図として取り出す研究も進む。椅子に座るだけで測定できるため、病気の早期発見、早期治療につながると期待されている。電界、そして人体通信の研究最前線を追う。
放送内容
人の周りの電界とは?
人の体の表面には強い「電界」が存在する。電界とは、電荷の間に作用する引力や斥力が働く空間のこと。人の周りにある電界の性質を調べたところ、ほぼ同じ強さで体をすっぽり覆っていることがわかった。ほかにも、電界はさまざまな周波数が入り混じってできていることや、近くにある電子機器など周囲の影響を受けやすい性質があることが判明した。
人体通信で個人を認証
人の周りにある電界を利用し、情報をやりとりするのが「人体通信」だ。例えばID情報が入ったカードを身につけ、受信機を踏むだけで、個人認証することも可能になる。このとき、情報を特定の周波数の電界として、体にまとわりつかせている。さらにこのシステムでは、カードが情報を“送る”だけでなく“受けとる”ことも可能になっている。
周波数で電界はどう変わる?
千葉大学の伊藤公一教授らは、体に着けた送信機の周波数を様々に変化させ、人の周りに生ずる電界の様子をコンピューターシミュレーションで表した。その結果、高い周波数(3GHz)では電界が空間に放射されるが、低い周波数(3MHz)では人体にまとわりつくように分布することがわかった。このことから、体の周りで通信する場合、低い周波数が適していることがわかった。
電界で医療が変わる!?
心電図など体の内部の情報を、体の表面の電界から抽出する技術も開発されている。この技術を使えば、例えば、電極をつけることなく、ただ座っただけで心電図がとれるようになる。この技術を可能にしたのは、デジタル信号処理技術の発達だ。体の周りの電界から、電子機器の1万分の1という超微弱な心臓の電気信号を分離できるようになった。イスに座るなど、簡単に心電図が測定できるこの技術は、救急医療や在宅医療への応用も考えられている。