これまでの放送
未来が変わる DNA解読 新時代
生命科学
2009年8月22日放送
林ア 良英理化学研究所オミックス基盤研究領域領域長
美馬 のゆり公立はこだて未来大学教授
DNAの全塩基配列を解読するシークエンス技術が急速に進歩している。その結果、病気のなりやすさや薬の効きやすさなどの違いがわかるようになってきた。こうした研究により、個人にあわせた正確で早期の診断や治療が可能になることが期待されているが、その一方でDNAという「究極の個人情報」をどのように扱うかという、倫理上の問題も避けられなくなる。急速に進歩するDNAの解読技術と、それがもたらす未来社会を考える。
放送内容
めぐみの一歩
進化するDNA解読技術
かつて電気泳動という方法で、DNAの塩基配列が決められていた。この方法で解読作業を行うと、全塩基の解読期間はおよそ8000年となる。しかし、新たに登場したシークエンサーという装置では、1日に読み取れる塩基の文字数が増え、その期間が9年と短くなった。また、2005年に誕生したシークエンサー(左の写真)を使うと、およそ5日で解読できるという。
DNAの違いが治療を決める
がんの増殖を抑える薬・イレッサの治療効果について、明確な違いを示すデータが今年発表された。それによると、効果が出やすい人とそうでない人では、がん細胞の遺伝子の特定のDNA配列のわずかな違いで、抗がん剤の効果が大きく異なることがわかった。
DNAの違いを医療にいかせ
簡単な検査でがんの治療方針が決められるよう、研究が続けられている。現在、がんの性質を調べるために、手術中にがんの一部を採取することがあるが、それと同時にがん細胞の遺伝子も検査できるようになれば、短時間で遺伝子の違いを知ることができる。すると的確な治療方針の決定に役立ち、患者に適した薬を投与することができると考えられる。
さらに高速!DNA解読技術
従来はDNAを増幅して塩基配列を解読していたが、増幅せずに解読できる「1分子シークエンス」という新技術の研究が進められている。その1つが、DNAの一本鎖に、光る物質がついた塩基を一つずつくっつけ、その光を検出することで配列を読み解こうというもの。さらに、顕微鏡で塩基配列を直接読み取ろうという研究も行われている。これらが実現すれば、DNAをさらに高速で読み解くことが可能になり、世界中の研究者が注目している。