2009年7月25日放送
田中 啓治理化学研究所脳科学総合研究センター 副センター長
黒崎 政男東京女子大学教授
最新の脳科学は、脳の微細な変化をとらえている。理化学研究所では棋士の脳を調べ、直感が働いた一瞬の姿を解明しようしている。またヒトの、一見、合理的ではないような行動を脳内メカニズムから解明しようという試みも始まっている。ヒトの脳が巨大化したのは栄養効率のよい肉食を開始したからだと言われている。ヒトは巨大な脳で知恵と工夫を身につけ、生き残ってきたと考えられる。ヒト最大のフロンティア、脳の不思議に迫る。
直感の謎に迫る
最善の一手を考えるときの棋士たちの脳がどのような活動をするのか調べた結果、プロ棋士の脳はアマチュア棋士の脳と違い、習慣的な運動の記憶にかかわる「大脳基底核」に強い活動がみられた。また、さらにプロ棋士・羽生名人の脳を調べると、記憶の中枢「嗅周皮質」とヒトが集中しているときに使う「網様体」に他のプロでは見られない反応が確認できた。
不合理な行動?!
目先の報酬と将来の報酬を予測するときの脳の活動には、大脳基底核の一部である「線条体」がかかわっている。線条体の下の部分が目先の報酬を重視する行動、上の部分が将来の報酬を考慮する行動に関係していることが判明。ヒトが報酬を考えるとき、脳には複数の“ものさし”が存在していることがわかった。
脳の巨大化をもたらしたもの
ヒトの脳の歴史を化石から調べていくと、200万年前に登場したホモ属はほぼ一貫して脳を大きくしていったことがわかる。ホモ属の脳は、栄養効率のいい肉を食べたことによって進化したと考えられる。遅く肉食を始めた人類は、戦っていくための武器を持っていなかったため、脳を大きくし、知恵と工夫で対抗する道を選ばざるを得なかったのではないか。

