シリーズ ヒトの謎に迫る (8) 表情に隠された進化の道
生命科学
2009年5月23日放送
金沢 創日本女子大学准教授
黒崎 政男東京女子大学教授
霊長類の大きな特徴である豊かな表情。なかでもヒト特有な表情が「微笑み」。微笑みの起源はチンパンジーの「服従」の表情だという。服従と微笑み、ここにヒト進化の意味が隠されている。また表情と脳の関係についての研究も進んでいる。表情に関わる部位と言語に関わる部位。これらの関係からヒトは言語を獲得する前から、表情による非言語コミュニケーションを発達させてきたことが読みとれる。表情からヒトの進化の謎に迫る。
放送内容
表情の起源とは
人や霊長類が持つ豊かな表情は、顔の表面を覆っている「表情筋」といわれる筋肉が動くことで生まれるという。この表情筋は、霊長類の進化の過程で特に発達したと考えられている。霊長類は、暮らす環境にあわせて立体的に物を見るように視覚を進化させた。それによって顔の構造が変わり、表情が豊かになったと考えられている。
ほほえみの起源
ほほえみは、人だけが持つ表情の一つ。ほほえみの起源は、サルがみせる「グリメイス」という劣位の表情ではないかと考えられている。それは、グリメイスにも人のほほえみにも同じ「大頬骨筋」が使われているからだ。グリメイスは上下関係の中で服従を示すものだが、人の場合はこれからコミュニケーションを始めるというときに、相手に対して警戒心を解く意味でも使っているのではないか。
表情を読む能力
生まれたばかりの赤ちゃんでも、2つの目と口の位置を頼りに顔を認識し、表情の違いを見分けられるという。人が生まれつき顔を認識できるのは、脳の右側の「顔領域」と呼ばれる部分の働きによるものだと考えられている。
人は表情を模倣する?
人が相手の表情を見たときに、つられて同じような表情になることを「表情模倣」という。この表情模倣は、人の社会性の基礎になっていると考えられている。人は無意識に互いの表情をまねることで、コミュニケーションをはかり、仲間意識を高めてきた。表情模倣は、進化の過程で発達してきた重要な働きといえる。