皆さんは、お子さんが熱を出したり、
体調を崩したりしたとき、どこに連れて行っていますか?
それなら、「自宅近くのかかりつけのお医者さん」という人が多いと思います。
しかし、「医療的ケア児」など
重い障害のある子どもたちの場合、そうはいきません。
「医療的ケア児」は、
人工呼吸器やたんの吸引などが欠かせない子どもたちのことで、
最新の調査では全国におよそ1万9000人いると推計されています。
多くは難病など特有の病気を抱えているため、
定期的な診察に加え体調を崩したときなども
専門の小児科医がいる大きな病院まで通わなくてはなりません。
しかし、専門の小児科医がいる病院はすべての地域にあるわけではなく、むしろ大きな病院がある都市部など限られているのが現状です。
このため「医療的ケア児」や家族にとって重荷になっているのが“通院の負担”です。
私が取材した家族の中には、最上地方にある自宅から山形市内や宮城県内の病院まで
片道2時間かけて通院している人もいました。
そこで県の医師会はこうした“通院の負担”をなんとか減らそうと、
新たな取り組みを始めたのです。
それが、医師が患者の自宅を訪ねて診察を行う“訪問診療”です。
いったいどのような取り組みなのか、現場を取材しました。
取材に応じていただいた海藤さんは、
体重が40キロ近くある息子たちを自宅のベッドから下ろして車に乗せるだけでもひと苦労だと話していました。
また、別のご家族の中には、お母さんに熱があるのに、車を運転して子どもを遠くの病院まで
連れて行ったという方もいました。
親も大変ですが、子ども自身も熱などがあった場合、遠くまで車で移動するのはつらいですし、
“訪問診療”は欠かせない取り組みだと思います。
この“訪問診療”。
高齢者を対象にしたものは、県内ではこれまでもありましたが、
県医師会が取り持って小児科医と地域の内科医がペアを組み小児を対象に行われるのは
今回、海藤さん親子のケースが初めてでした。
県医師会によりますと、1月31日現在で利用されているのは訪問診療を希望する家族のうち近くに対応できる内科医がいる3家族。
医師会では、これからさらに増やしていきたいとしています。
本人と家族にとって大助かりの“訪問診療”ですが課題もあります。
いま訪問診療を受けている子どもは、
全員15歳以上と成人に近い年齢です。
このため、ふだん小児をあまり診察しないという内科医の先生でも診察しやすいということなんです。
一方、年齢がもっと低い、未就学児となると、体が小さい分、
処置の際の手元の動きにも神経を使いますし、薬の量も成人と全く違います。
こうした点に不安や負担を感じて、小児の診察を敬遠する内科医も少なくないんです。
ただ今後、子どもが小さいときから、訪問診療を利用したいという家族が出てくるかもしれません。
体は小さくても、人工呼吸器を使っている子どもの場合、
重たい酸素ボンベやたんを吸引するための機械など
たくさんの荷物を持ち歩かなくてはならないなど
通院の負担があることは15歳以上の子どもと変わりません。
では、まだまだ小さい医療的ケア児がいる家庭への支援を、どうすればいいか。
方法の1つとして医師会が考えているのが、近場にいる
「地域の小児科医」の中からも医療的ケア児の訪問診療を行える医師を募集するということです。
ただ、小児科医の多くは、訪問診療の経験がないため
経験が豊富な「地域の内科医」と一緒に
診療を行うという形も検討しているということです。
医療的ケア児など重い障害のある子どもたちと
その家族の生活を支えるために。
「主治医」と「地域の開業医」が連携して
子どもたちを診察していくというこの取り組みが
どんどん進んでいってほしいと思います。
山形局記者 | 投稿時間:17:18