【医療的ケア児特集②】教育現場の課題は...

 

3回シリーズでお伝えする「特集・医療的ケア児」。

2回目は、教育現場の課題について考えていきたいと思います。

 

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医療的ケア児の多くは「特別支援学校」といって、障害のある子どもが通う学校に行っています。

 

県内には、国立と県立であわせて19校ありますが、このうちの7校に、45人の医療的ケア児が在籍しています(12月13日現在)。

しかし、多くの家庭では、子どもが小学部に入学すると、ある壁に直面します。それは、いったい何なのか。まずは、ことし入学した女の子とその家族を見ていただきたいと思います。

 

 

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付き添いの形さまざま

親が学校に付き添わなくてはならない期間は、住んでいる都道府県によっても左右されます。

 

それは、学校の看護師に許されている医療的ケアの内容が、都道府県ごとの規定で決められているからなんです。例えば、山形県の場合、「たんの吸引」や、チューブなどを使って胃に栄養を直接送る「経管栄養」など6項目が認められています。裏を返せば、それ以外のケアはできないということなんです。

 

さらに、4月には、ケアが必要な子どもたちが一度に入学します。ケアの内容もひとりひとり違うので、看護師から見ると、慣れるまで、どうしても一定の時間がかかってしまうんです。

 

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このため、山形県の学校でも、医療的ケア児を受け入れるときには、一定期間、必ず親に付き添ってもらうことにしています。

映像でご紹介したひかるちゃんの母親の優子さんは、半年近くの間、付き添いを続けました。人工呼吸器をつけたほかの子どもの家族では、1年以上かかったという人もいます。

 

驚いたことに、ほかの県などでは、親が授業中も子どもの横にずっとついていないといけないケースもあるそうです。

 

こうした家族には、仕事や家事ができないばかりか、きょうだいの学校行事に顔を出せなかったり、いつまで付き添わないといけないのか見通しがつかなかったりして、精神的に追い込まれてしまう人も多くいます。

 

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“付き添い”なくす取り組みも

一方で「できるだけ家族の付き添いをなくしていこう」という取り組みも各地で始まっています。

 

東京都は、来年度(令和2年度)から「人工呼吸器」をつけた児童・生徒について、付き添いなしでも学校に通えるよう取り組んでいく方針を打ち出しました。

 

親の付き添いを減らしていくために何が必要なのか。モデル校に指定されている都内の特別支援学校を取材しました。

 

 

ご紹介した東京都立光明学園では、子どもの体調が急変した場合に備えて繰り返し訓練を行うだけでなく、看護師を増やしたり、教員に研修で呼吸器の仕組みを学んでもらったりと、さまざまな取り組みを行っています。

 

文科省は…

国も、多くの親が学校に付き添わなくてはならない現状を認識しています。ことし3月には、文部科学省が、ある通知を都道府県の教育委員会などに出しました。内容がこちらです。

 

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「保護者の付き添いは、生徒の自立を促す観点からも、真に必要と考えられる場合に限るよう努めるべき」。

 

どうしても親の付き添いが必要な場合は「どうして付き添いが必要か」や「いつまで必要なのか」などを、きちんと親に説明するようにも求めています。

 

看護師の不足も…

このような通知が出たのは大きな前進だと思います。一方、地域によっては、学校の看護師が足りていなかったり、子どものそばにいる教員が医療的ケアについて学ぶ時間を十分に確保できていなかったりするところもまだまだあります。

 

医療的ケア児や家族を支える体制づくりと、そのための人材の確保をどう進めるか、教育現場でも議論が必要になってきています。

 

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特集・医療的ケア児。

次回は支援に欠かせない「看護師の育成」について取り上げます。

 

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医療的ケア児    

山形局記者 | 投稿時間:17:02