【医療的ケア児特集①】 孤立する家族...どう支える?

 

皆さん「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちをご存知でしょうか?

 

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ひと言で言えば、障害があって、生きていくために“医療的な行為”が欠かせない子どもたちのことです。

 

中でも多いのが、口から食事を取れずに、チューブで胃に直接、栄養を送る「胃ろう」が必要な子どもたち。

人工呼吸器がないと呼吸ができず、頻繁にたんを取らないとのどに詰まって窒息してしまう子も少なくありません。

 

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こうした子どもたちは、全国に1万8000人以上いると推計されています。10年前に比べると、およそ2倍の数です。

 

医療的ケア児 なぜ急増?

背景には、医療の進歩が深く関わっています。以前は、低体重だったり、呼吸がうまくできなかったりと、危険な状態で生まれた子どもは助からないことが珍しくありませんでした。

 

最近は命を救えることが増えてきましたが、それと引き換えに障害が残ってしまう子どもが増えているんです。

 

救われた命だけれど…

多くの家庭では、母親が子どもたちのケアを担っています。

 

そして、多くの母親がつきっきりで子どもをケアするために、睡眠を削ったり、仕事を辞めたり、またほかの子どもとの時間を犠牲にしたりしているんです。

 

私たち取材班は、2年にわたって医療的ケア児とその家族を取材してきました。

 

疲れ切って、せっかく救われたわが子とも笑顔で向き合えない…そんな家族の姿を何度も目にしてきました。

 

そこで今回、3回シリーズで医療的ケア児と家族の実態をお伝えします。

 

そして、医療的ケア児や家族のために何ができるのか。皆さんと考えていければと思っています。

 

まずは、医療的ケア児や家族がどのような生活を送っているのかご覧ください。

 

 

家族だけでみる“限界”

取材に応じてくれた母親の千里さんは、夫婦で飲食店も経営しています。店が忙しいときや、ほかの子どもの学校行事があるときは、山形市に住む千里さんの母親に新庄市まで来てもらうこともあるそうです。

 

ただ、千里さんは「高齢の親にいつまで世話を頼めるかはわからない」とも話していました。家族だけで子どもをみることには本当に限界があると感じます。

 

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千里さんは、これまで地元の自治体に相談もしました。しかし、「そのような支援はありません」と言われただけで、話を詳しく聞いてもらう機会さえなかったそうです。

 

「預け先を増やしてほしい」と自治体に要望をしようにも、1人の声では、なかなか政策に反映してもらえないと千里さんは感じたそうです。でも、同じ境遇の家族どうしが集まって声をあげることができていれば、状況は変わっていたかもしれないとも話していました。

 

孤立させないために

それでは、医療的ケア児と家族を孤立させないためには、どうしたらいいのでしょうか?取材を進めると、中部地方でヒントになる取り組みを見つけました。

 

 

この“家族交流会”。取材して感じたのは、県や市の担当者が来てくれることが、家族にとって非常に心強いということです。

また、「家族と家族」や「家族と行政」がつながれるだけでなく、病院の看護師や福祉関係者など、支援に関わる人が出会うことで、さまざまなつながりが生まれるきっかけにもなっていると感じました。

 

岐阜“家族交流会” 運営に工夫

ただ、この交流会には1つだけ決まりがあります。「交流会の場で県や市に要望や陳情をしてはいけない」というものです。

 

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「せっかくなら要望を聞いてもらいたい家族もいるのでは…」と思う方も多いと思います。

 

ただ、主催した看護協会に聞くと「要望や陳情の場になると、自治体の人たちがどうしても構えてしまって来づらくなってしまう」ということでした。

 

なので、まずは「生の声を聞いてもらう」ことから始め、そこから「県や市に支援を検討してもらうきっかけになれば」という考えなんだそうです。

実際、この会がきっかけになって、子どもたちを短い間預かる施設を増やす事業に、岐阜県が乗り出しました。

 

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さらに、岐阜県では、看護協会に委託して、医療的ケア児などの重い障害のある子どもとその家族のための相談窓口を県内各地に設置しました。家族に役立つちょっとした”子育て術”などを紹介する冊子も毎月発行しています。

 

こうした取り組み、ぜひ山形県でも参考にしてもらいたいと思います。

 

素直に子どもの成長 喜べるように

ここまで読んで頂いた皆さん。「医療的ケア児」が置かれた現状をどうご覧になったでしょうか。

 

私も子どもを持つ母親ですが、保育園などに子どもを預けることで、子育てと仕事を両立できています。しかし、おととし、初めて医療的ケア児と家族の現状を目の当たりにして、同じ子育てをしているのに「こうも環境が違うのか」と衝撃を受けました。そして、少しでも現状を変えたいと取材を続けています。

 

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今回、ご紹介した新庄市の桃瑚ちゃんは、実は生まれたとき、「一生歩けないかもしれない」と言われていました。しかし、今では自分で歩けるようになり、いろいろなことに興味を持つようにもなりました。私も会うたびに成長を感じています。

 

ただ、桃瑚ちゃんを一時的に預かってくれる施設は、まだ見つかっていません。

 

千里さんは「生まれたときはどうなるかわからない命だったのが、ここまで元気になれたのは本当に嬉しいです。だけど、そんなわが子の成長を素直に喜べる世の中になってほしい」と涙ながらに訴えていました。

 

障害があってもなくても、子育てをしやすい世の中にしていくにはどうしたらいいのか。今回の特集をきっかけに、皆さんにもぜひ考えていただけたらと願っています。

 

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特集・医療的ケア児。

次回は「教育現場の課題」について取り上げます。

 

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そして、NHK山形放送局では、

今月21日(土)、医療的ケア児の支援について考えるシンポジウムを開催します。

 

会場は、山形ビッグウイングで、参加費は無料です。申し込みがなくてもどなたでも参加できます。ぜひお越しください。

 

詳しくは、こちらからご確認ください。

 

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https://www.nhk.or.jp/yamagata-blog2/500/416629.html

 

 



医療的ケア児   

山形局記者 | 投稿時間:18:10