「東北にもこどもホスピスを」

 

聞きなじみのない「こどもホスピス」。重い病気のこどもたちがサポートを受けながら、家族や友人と過ごせる場所です。全国に2か所しか開設していない「こどもホスピス」を東北にも作ろうという動きが強まっています。

 

こどもホスピスどんな場所?

全国にまだ大阪市と横浜市の2か所しかない「こどもホスピス」。ホスピスというとみとり・終末期医療という印象が強いかもしれませんが、重い病気の子どもたちとその家族がサポートを受けながら過ごせる施設を目指しています。

 

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横浜市のこどもホスピスには、天井の高い広場や大きなお風呂があり、例えば子どもたちが、大きな声を出したり、走ったりと、病棟では制限されている「こどもらしい」活動ができる場所です。

東北にもそのこどもホスピスを作ろうという動きが始まっています。

 

 

こどもホスピス 必要性を実感したのは…

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こどもホスピスについて、知識が乏しかった私(記者)は、「山形・こどもホスピス」とワードを入れ、検索しました。リストアップされた中で私が目にとまったのは山形市内に住む女性でした。

2019年に4歳の息子を免疫系の難病で亡くした女性がこどもホスピスを山形にも作りたいとブログに記していたのです。話をうかがうと、死と隣り合わせの状態だからこそ、入院している間も「子どもらしい生活をさせてあげたい」という親心が、原点にあることを知りました。

 

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女性は、「走ったり、大声で叫んだり、病室では制限されるけれども、子どもの生活では当たり前にある日常を病気の子どもたちにも体験させてあげたい。副作用が強い治療で息子が弱っていくのがつらく、小児病棟にはほっとできる環境がなかった。看病する側も一息つけるような環境のこどもホスピスはぜひ実現してほしい」と話しています。

 

全国にまだ2か所 なぜ?

各地で増えてほしいこどもホスピス。ところが、全国にはまだ2か所しかありません。そのハードルとなっているのは「費用の確保」です。

 

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おととし12月にオープンした

横浜のこどもホスピス。看護師2人と保育士1人が常駐し、子どもたちや家族をサポートしていて

ことし3月末までにのべ779人が利用しました。ホスピスによりますと、建物の建設費用だけでおよそ2億5000万円かかっているうえ、スタッフも含めた人件費や光熱費など年間6000万円が必要とのことです。

 

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このこどもホスピスでは、そのほとんどを寄付金でまかなっていますが、運営する認定NPO法人の田川尚登代表理事は「こどもホスピス」を全国に増やしていくためには、国や自治体などから補助を受ける仕組み作りが必要だ」と話しています。

 

国と民間が動き出す

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小倉少子化担当大臣は4月1日に発足した「こども家庭庁」を中心に普及に向けた支援のあり方を検討していく考えを表明しました。対応の窓口となるこどもホスピスの専門官がすでに配置されていて、これまで医療・福祉の枠に収まらないとされてきた「こどもホスピス」に対し、今後、国からの支援がさらに強まっていくことが期待されます。

 

また、宮城こどもホスピスのように、開設に向けて動くプロジェクトチームやこどもホスピスを開設した団体、あわせて14の団体が参加する協議会も去年11月に発足し、今後連携する動きも出てきています。

 

重い病気の子どもと家族がほっとできる場所を

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大切なわが子に、ある日突然、命に関わる重い病気が見つかった―。そうした方々を取材すると、いったいどうしたらいいのかという不安や、なんでうちの子がという憤り、親として何ができるのかという焦燥感を抱いていました。そんな不安や葛藤が何年も続くということは、病気の子ども自身がつらいのはもちろん、家族も心身ともに疲弊してしまうと強く感じました。

重い病気の子どもたちが、ただただ子どもらしく無邪気に遊んだり、抗がん剤治療で髪の毛がなくても周りの目を気にせずにはしゃいだりする。そして、本人も家族も病気を忘れてほっと一息つきながら一緒に過ごせる。さらにはわが子が亡くなったあともその思い出を振り返るができる心のよりどころにもなる。そうした役割を果たす場所として「こどもホスピス」が東北・宮城はもちろん、全国にもっともっと広まっていって欲しいと思います。

 



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山形局記者 | 投稿時間:11:58