【記者特集】"1人じゃない"~難病と向き合うパーキンソン病患者たち~

 

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映画「BACK TO THE FUTURE(バック・トゥ・ザ・フューチャー)」主演のマイケル・J・フォックスさん。

 

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6年前に亡くなったプロボクシング元世界ベビー級チャンピオンのモハメド・アリさん。

 

2人に共通していることは何か知っていますか?

 

2人とも、手足が震えたり、体が徐々に動かなったりする難病

「パーキンソン病」と診断されました。

 

実は今、コロナ禍で外出する機会が減ったことで、症状が悪化したり、孤立したりするパーキンソン病患者が全国的に増えているんです。

こうした中、患者同士を“つなごう”というある取り組みが山形県内で行われました。

 

 

 

“パーキンソン病”とは?

 

全国に少なくとも14万人あまりいるとされる「パーキンソン病」患者。山形県内では980人あまりとされています。

体に動かす指令を出す「ドーパミン」という脳内の物質を作る神経細胞が少なくなることが原因です。

 

難病情報センターによりますと、50歳以上に起こる病気で、特に60歳以上では100人におよそ1人いるとされています。

40歳以下で起こることもあり、「若年性パーキンソン病」と呼ばれています。

 

 

山形県“初”の交流会

 

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10月8日。障害者のための保養施設に、山形県内各地からパーキンソン病患者とその家族が集まってきました。その数はおよそ20人。

 

これまで地区ごとの交流会や、イベントが終わったあとに交流する時間が設けられることはありましたが、県内各地から患者と家族が集まって開かれる交流会は今回が初めてです。

 

主催したのは、患者や家族で作る「全国パーキンソン病友の会 山形県支部」。

支部長を務める松木純子さんはコロナ禍で集まる機会が少なくなってしまったことに、もどかしさを感じてきました。

 

(「全国パーキンソン病友の会 山形県支部」松木純子支部長)

「これまで毎年のように、最新の治療などについて医師から話を聞く医療講演会を行ってきましたが、それもなかなか開催できずにいましたし、コロナ禍で、そもそも外出する機会が減る中、症状が悪化してしまう会員が増えました。そうすると、もう会員が集まる場にも来られないということで、この3年間で会員の数も減ってしまいました。この状況をなんとかしなければと思っていました」

 

どうしたら、孤立する患者を少なくできるのか。

松木さんが考えたのが1泊2日での交流会。行動制限もなくなり、3年ぶりに開催されるイベントなども県内で増える中、ことし、ようやく開催にこぎつけました。

 

 

“1人で悩まないで”

 

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交流会に参加した人たちの中には、パーキンソン病と診断されてからまだ数年の人もいれば、10年以上たっているという人もいました。年齢も50代から80代までさまざまです。

 

交流会ではまず、グループに分かれて自己紹介。

初めてパーキンソン病と診断されたときの気持ちを互いに打ち明けていました。

 

「パーキンソン病だと言われて、ひと事のように思っていたところがあったので、間違いじゃないかって…でも現実でした。主人に話しても受け入れてもらえなくて、話を聞いてほしくても一切話を聞いてくれなかった。最近は“薬飲んだか?”と聞いてくれるようになりましたけど」

 

「難病だってことが、なかなか周りに言えなくて、友だちに話そうとするとすぐ泣いてしまう状況でした。そんな中、友の会を紹介されて、当事者が集まるイベントに参加するようになりました。そこでようやく“私だけじゃないんだ”と思えるようになりました」

 

打ち解けてくると、次々といろんな悩みが出てきます。

 

「家族には遠慮してしまって、わたしはこれ以上のことができないんだから手伝ってほしいということをなかなか言えない」

 

「台所に立って料理をするのに時間がかかってしまっているのがつらい」

 

「どうしても長い時間立っていられなくて、最近、仕事をやめました。いまはリハビリをしながらできる仕事を探しています」

 

「悪い病気なら悪い病気なりに少しでもよくしたいが、その方法をどうしたらいいかわからなくて」

 

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パーキンソン病は根本的な治療方法がまだ確立されていません。

 

こうした中、特に関心が高かったのが、どのような薬を飲んでいるかや、症状を緩和させるための治療方法についてでした。

 

“少しでもよくなりたい”

 

“早く有効な治療法が出てきてほしい”

 

取材していて、そのような切実な思いが伝わってきました。

 

 

(参加した70代の男性)

「薬の話とか治療のしかたが皆さん違うので、いろいろ話が聞け て大変勉強になりました。こういう場だからこそ聞ける話もあると思うので、必要な場だと思います」

 

(参加した70代の女性)。

「1人で悩むのは全然いい方にいかないし、こうして集まると皆さん同じ苦労をしているんだ なということがよくわかった。本当に来てよかったです」。

 

交流会にはそばで患者を支える家族も数人参加していて、家族としても「家族同士、悩みを共有したり、ほかの患者がどのような福祉サービスを利用したりしているかなどいろんな情報を知ることができてよかった」と話していました。

 

 

ラジオ体操のように広がって

 

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交流会から一夜明けた次の日の朝。新しい取り組みも始まりました。

 

パーキンソン病の進行を予防するためには運動が効果的だとされています。そこで、定期的に通話アプリ、LINEのビデオ通話で患者同士をつなぎ、一緒に体操しようというものです。

 

コロナ禍でも仲間とつながりながらできる取り組みとして、支部長の松木さんが作業療法士の夫と考えました。

 

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参加者たちは作業療法士の指導を受けながら、特にパーキンソン病患者が固くなりやすい首周りのストレッチや、自宅でも簡単にできる有酸素運動などを行いました。

 

“1人だと難しいけど仲間と一緒なら続けられる”

 

松木さんはそう考えています。

 

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(「全国パーキンソン病友の会 山形県支部」松木純子支部長)

「体操をすると体が動きやすくなったり、転びにくくなったりもするので、薬と同じように大事なんですが、リハビリの専門職から話を聞く機会が少ないので、こうした取り組みができたらいいなと考えていました。継続的にみんなですることで、ラジオ体操的に広がっていってくれればいいなと思います」

 

この体操は交流会のあとも、毎週日曜日の午前9時からおよそ40分間行われていて、患者だけでなく家族や友人など、誰でも参加することができます。

 

参加希望の方は、「全国パーキンソン病友の会 山形県支部」にご連絡ください。

 

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「全国パーキンソン病友の会 山形県支部」HPはこちらから

https://sites.google.com/view/jpdayamagata

 

 

患者支える仕組みを

 

わたしが支部長の松木さんと出会ってから、およそ4年になりますが、松木さんはほかのパーキンソン病患者の相談にのっているほか、当事者団体のホームページの管理、そして、今回の交流会などのイベントの企画などを積極的に行ってきました。

 

しかし、それは自分の体調管理と並行してのこと。そばで見ていて、当事者だけではどうしても限界があると感じます。こうした難病患者の活動を支える団体や人材がまだまだ必要だと思います。

 

それを発信するためにも、これからも取材を継続していきたいと思います。

 



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山形局記者 | 投稿時間:16:46