【記者特集】さくらんぼ収穫 人手不足解消 新たな一手は"副業"

 

20220615_01.png

 

毎年6月中旬から収穫の最盛期を迎える山形特産のさくらんぼ。

この時期は最も人手が必要なのですが、農家は毎年、人手が足りず、深刻な問題となっています。

 

20220615_02.png

 

山形県が平成29年から令和3年にかけて生産者に行ったアンケートです。

さくらんぼの収穫量が多かった平成29年や30年は5割前後の農家が「作業がやや遅れた」と回答。さらに2割以上の農家が「遅れによって一部収穫できなかった」と回答しています。もともと、さくらんぼは収穫期間が短い果物。丹精込めて育ててきたさくらんぼが収穫作業の人手不足で、泣く泣くだめになってしまうこともあるそうです。

そこで山形県は、人手不足解消につなげようと、今シーズン、新たな対策に乗り出しました。

 

 

20220615_03.png

 

東根市のさくらんぼ農園です。広さは110アールの畑で、主に佐藤錦と紅秀峰を栽培しています。収穫を間近に控えた6月12日、ふだんより多い17人が作業にあたりました。

 

20220615_04.png

 

その1人、臨時に雇われた石川花さんです。

さくらんぼの農作業をするのはこれが初めて。『やまがた紅王』がデビューすることし、山形県としてももっとさくらんぼを推していこうという時期なのでぜひ携わりたかったと言います。

 

20220615_05.png

 

20220615_06.png

 

実は石川さん、本業は県職員なんです。入庁して9年目。ふだんは県庁の総務厚生課で主に事務を担当しています。

さくらんぼの収穫時期の人手不足対策として、県は6月から、新たな制度を始めました。

石川さんはこの制度を利用したのです。

 

20220615_07.png

 

それが県職員の“副業”を認める「やまがたチェリサポ職員制度」です。県職員の副業について、県は法律に基づき原則、認めず、厳格な手続きを求めてきました。新たな制度では、7月末までの期間限定、しかもさくらんぼの農作業に限って副業として認めることにし、手続きも簡素化しました。

 

▼働ける時間は平日は1日3時間以内、1週間で8時間以内、月30時間以内などと上限が設けられています。

▼農業関連の補助金担当者など利害関係がある職員は利用できません。

 

20220615_08.png

 

石川さんは

「副業という形になると正式な雇用関係ということになるので、お金が発生することによってより責任というものが強まる」

と話しています。

 

20220615_09.png

 

副業として取り組んださくらんぼの農作業。

この日、石川さんが行ったのは余分な葉を摘み取る「葉摘み」です。葉を取り除くことで、実に光を当て色づきをよくします。収穫直前の大事な作業です。

 

20220615_10.png

 

農園の経営者に教わりながら「葉摘み」を進めた石川さん。日曜日のこの日、朝8時から休憩を挟んで夕方5時まで7時間以上働き、6800円の収入を得ました。

 

20220615_11.png

 

石川さんは

「副業という形だと仕事として今自分が農業に従事しているという実感を持ってすることができて大変いいと思います。やりがいというのも賃金が発生すれば出てくるところがあると思います。シーズン中は何回か申請して、いろいろな作業に従事してみようと思っています」

と話していました。

 

20220615_12.png

 

石川さんが働いた農園を経営する鈴木拓矢さんは

「地方公務員の副業はすごく有効な手段だなと感じています。給料が発生してくるとお互いにしっかり働いてもらわなきゃいけないし、向こうもお金もらう以上しっかり仕事をするっていう意識が出てくるのかなと思います。公務員の方々からの手助けをもらいながらことしもおいしいさくらんぼを皆さんに届ければなと思っています」

と期待していました。

 

20220615_13.png

 

地方公務員の“副業”という、新たな一手。

県と同様に寒河江市も副業を認める制度を今シーズンから導入しました。

人手不足の新たな解消策はこれだけではありません。

 

20220615_14.png

 

令和3年からはスマホで生産者と求職者を結びつける、いわゆるマッチングアプリも活用されています。令和3年は不作だったため登録した農家は56軒、求人は965件でしたが、ことしは6月15日現在で登録農家は98軒、求人は3000件を超えています。

 

20220615_15.png

 

また、全農山形や県などでつくる協議会は、繁忙期が異なる九州地方からさくらんぼの収穫作業にあたる人材を派遣してもらう取り組みを今年度から始めました。ことしは天童市や東根市にあるあわせて9つのさくらんぼ農園に派遣される予定だということです。

 

20220615_16.png

 

こうしたさまざまな新たな対策で人手不足の解消を図ろうと、官も民も動き出しているさくらんぼの収穫作業。

 

しかし、課題もさまざま浮かび上がっています。

副業の申し込み状況をみますと、6月23日現在、▼県は49人が申請▼寒河江市では22人となっています。
県が事前に職員向けに行ったアンケートでは348人が「ぜひやってみたい」と回答していたので、それに比べると1割程度にとどまっています。県は本来の業務の忙しさなどが影響しているのではと分析しています。

今回、取材した石川さんも、来シーズン以降は時期を広げ、5月末からにしてもいいのではないかと話しています。
また、マッチングアプリも農家からは、幅広い世代や各地から応募があったと好評な一方、スマホを使用するのが難しいと話す高齢の農家もいて、そうした農家への支援を進めていくことも課題です。

 

20220615_17.png

 

山形特産のさくらんぼは今がまさに旬。

副業に関する新たな制度を利用して実際に働いた県などの職員の皆さんの声を吸い上げて制度を改善するなど、県特産のさくらんぼの収穫作業を支える人材を増やすことにつなげてほしいと思います。

 



記者特集    

山形局記者 | 投稿時間:14:25