【記者特集】役所・役場のデジタル化 進展のカギは?

 

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今、国のデジタル庁が旗振り役となって、全国の役所・役場で進められているのが「デジタル化」です。住民票のオンライン申請など、行政手続きやサービスをデジタル化することで効率化し、住民にとっても便利になることを目指しています。

しかし、そのための人材は全国的に不足していて、とりわけ地方では確保が難しくデジタル化を進めたくても思うように進んでこなかったのが現状です。

人口2万人の庄内町もその1つ。かつての現場の姿はどうなったのでしょうか。行政にとって、重要な手続き文書の決裁を例に見てみます。

 

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庄内町立谷沢出張所の廣田大輔所長です。この日の朝、働いているのは廣田さん1人。文書をプリントアウトしています。何をしているのか聞いてみると、決裁文書を印刷して、町営バスで運んで決裁をもらうといいます。

 

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庄内町は17年前(2005年)、2つの町が合併して誕生した南北に細長い町です。南部に位置するこの出張所が今回、必要とするのは町中央部の総合支所の決裁。

しかし、北部にある本庁舎を経由してから、翌日に総合支所へと届けられます。

 

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「急いでほしいときもありますね。そのときは自分で持って行くしかないんですが、きょうみたいに職員が私1人だと、出張所を空にできないので、行けないんですよね」

 

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午前10時すぎ、支所前に町営バスが到着。

廣田さんは車内にある専用かばんに文書を入れました。乗客と一緒に文書が運ばれていきます。

 

 

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今回の文書が本庁舎に届いたのは正午過ぎ。翌日のバスで、目的地の総合支所に届けられたということです。

このように、庄内町では支所や公民館などが作成し決裁が必要になった文書のほとんどを、緊急時などを除いて、ことし5月まで、平日の町営バスでやりとりしていました。

 

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町によると、決裁文書のやりとりの方法は、合併直後から試行錯誤が続き、最終的に今の形に落ち着いたということです。職員みずからが車を運転して運ぶという方法もありますが、出先機関は職員の人数がそもそも少なく、車で文書運搬にあたると、支所などを訪れる住民への対応ができないケースも出てしまいます。そのため、緊急性が低く、住民の個人情報のない文書については、町営バスを輸送手段として使ってきたのです。しかし、町営バスは運行本数も限られ、決裁が終わるまで時間がかかっていたのも事実でした。

 

そこで去年、庄内町は、この状況を改善するため、オンライン上で決裁を行うことが出来るシステムの導入を決めました。

しかし、IT専門の職員はおらず、手探りでの準備が続いたといいます。

 

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デジタル化を進めたくても、人材不足で思うように進められない。こうした悩みを抱えるのは庄内町だけではありません。そこで支援に乗り出したのが山形県でした。

県のデジタル推進課は、昨年度(令和3年度)から全国のIT専門家を市町村に紹介する事業を始めました。

 

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市町村がまず県デジタル推進課に、デジタル化で困っていることなどを相談。県デジタル推進課はITの専門家の団体を通じて、相談内容に見合った人材を全国から募集。仕事を引き受けた専門家は、

市町村にアドバイスし、県から報酬をもらいます。

 

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「県庁もだが、市町村にもデジタルの専門家が少ないという現状の中で、専門家からアドバイスをもらえる、そういう仕組みはやはり必要だと思っています。さまざまな分野でデジタル化が進むことで、最終的には県民の皆さんの利便性向上につながると思います」

 

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県の事業を活用し、電子決裁の導入など、業務のデジタル化に取り組んでいる庄内町のデジタル推進係です。

 

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去年7月、県から紹介された専門家に、町で作成した電子決裁システムの仕様書のたたき台を見てもらうと、翌日には29項目にわたるアドバイスが届きました。

 

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町は、システムの性能や機能について、細かく仕様を決めることに意識が向いてしまっていました。その結果、セキュリティー対策などの記載が不十分だとして、業者に対して個人情報の保護を高い水準で求めるよう、専門家から指摘を受けました。

 

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さらに、出費を抑えるため、導入する予定のシステムが今ある役場のプリンターに対応したものになるよう、業者に伝えることもアドバイスされました。

 

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「導入するのはシステムだったので、その機能に関する要件を中心にした記載だったのですが、その結果、システム以外の部分の記載に抜け目が出てしまったのかなと。アドバイスを受けることで、システム以外の部分についても、しっかりと記載できるような形になったので、よかったと思います」

 

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電子決裁システムの導入準備が大詰めを迎えていたことし4月下旬。町役場のデジタル推進係の職員が、立谷沢出張所にいる廣田所長とともに、テスト送信を行いました。

 

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作業を始めておよそ3分。模擬の会計伝票の決裁文書が廣田さんの上司のもとに届きました。

電子決裁システムは、その後、役場の職員への講習会などを経て、今月(6月)1日から運用が始まりました。

 

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「今回、町に一歩を踏み出してもらったおかげで、事務的にとても効率がよくなったと思います」

 

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町では今後、住民サービスのデジタル化も進めていきたいとしています。

「(デジタル化で手続きを)待たせないとか書かせないといったようにして、年配の方々にも優しい行政になってきたいなと思います。その上で、職員自ら、変革の意識を持ってもらって、この先の将来像をそれぞれが描いていけば

いい町・いい行政になっていくと思います」

 

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県によりますと、庄内町に加え、小国町と最上町がこれまでにこの事業を活用。さらに、県内の複数の自治体から利用に向けた相談を受けているということです。

 

総務省が2年前(2020)に行ったアンケート調査で、「デジタル人材確保にあたって何が課題か」を複数回答で質問したところ、全国1741の市区町村のうち、8割を超える自治体が「人材を見つけられない」と回答するなど、ITの専門人材の確保は全国の自治体にとって同じ悩みの種になっています。

専門人材が少ない地方でもデジタル化を後押しするために県が設けた事業などを活用し、県内でのデジタル化が進んでほしいと思います。

 



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山形局記者 | 投稿時間:18:06