【記者企画】生きることとは何か...教えてくれる"18っ子"たち

 

“生まれてからの日数じゃない…むしろどういう時間を過ごすかが大事なんです”

 

これは、ある病気と闘う5歳の女の子の、お父さんのことばです。

病名は「18トリソミー」。18番目の染色体が通常より1本多いため、生まれつき心臓などに重い障害を伴い、1歳まで生きられる子どもは1〜3割しかいないと言われています。

 

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親たちの間では「18っ子」とも呼ばれている子どもたち。ことし9月、山形県内に住む親たちが18トリソミーの子どもたちの写真展を企画しました。

 

これまでも全国各地で行われてきたこの写真展。県内では初めての開催でした。そこに込められた思いを取材しました。

 

 

研究者や学会によりますと、「18トリソミー」は、生まれてくる子どもの3500人から8500人に1人に発症するとされています。

 

しかし、最近では必ずしも“短命”ということではなく、ゆめ佳ちゃんのように医療的ケアを受けながら在宅で生活し、成長する子どもも増えています。中には小学生や中学生まで成長しているケースもあるということなんです。

 

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新しい挑戦、それは…

そして取材に応じてくれたゆめ佳ちゃんですが、今新しいことにもチャレンジしています。リハビリの先生の勧めで、ことしの4月からつまかり立ちの練習を始めたそうなんですが、つかまり立ちを難なくクリアし、8月からは上山市にある県立こども医療療育センターで歩行器を使って歩く練習を始めました。

 

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練習中にお父さんが撮影した動画を見せてもらったのですが、ゆめ佳ちゃんはゆっくりながらも一歩一歩、足を前に出してみずから進もうとしていました。その姿にご両親は「親が限界を決めてはいけない」と話していました。

 

来場者は700人超

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9月14日(土)と15日(日)に開かれた今回の写真展。2日間合わせて700人を超える人が訪れました。

 

私も初日、開場した午前10時ごろから取材に伺ったのですが、土曜日の午前中にも関わらず来場者はどんどん増えていきました。そして1時間後には、会場を回るのに、人々が列をなして進まければならないくらい、大勢の人が集まりました。女性や子ども連れがとくに多く、皆さん優しい表情を浮かべながら、写真とその下にあるメッセージを1枚1枚じっくり見ていたのが印象的でした。

 

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来場された方々に感想を聞きました。

 

子どもが生まれたばかりの娘を連れて訪れた50代の女性は、

「大変だというイメージがありましたが、幸せや喜びを感じられる写真ばかりで涙が出てきてしまいました」と話していました。

 

「13トリソミー」という別の染色体の病気で息子を亡くしたという父親は「自分の息子は笑顔を見せてくれるまで生きられませんでしたが、どれも笑顔が素敵な写真ばかりですね。家族が子どもたちのことを大切に思っているということが伝わってきます」と話していました。

 

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そして、小学生の娘に障害があるという母親は、「1日1日、むだにしちゃいけないなと感じました。あすはさっそく娘とどこかに出かけて、いろんな経験をさせてあげたいと思います」と写真展を通して、もう1度子どもとの関わり方を見つめ直していたようでした。

 

また、主催した家族が来場者に書いてもらったアンケートには、「子どもは宝だと実感させられました」とか、「自分の子がいっそういとおしく思えました。この写真展は18っ子の親子さん以外にとっても希望です」などという暖かいメッセージも寄せられたということです。

 

治療方針に差

それにしても、写真展はどうしてこの時期に開催されたのでしょうか?そこにも実は理由があったんです。

 

写真展と同じ日程で小児科医を対象にした学会が山形市で開かれることになっていました。それを知った親たちは、医療関係者にもぜひ、写真展に足を運んでもらいたいと考えたのです。

 

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なぜ、医療関係者に写真展に来てもらいたかったのか?それは医療機関によって「18トリソミー」の治療方針に差があるということと深く関わっています。

 

「18トリソミー」は、完治するための治療方法はまだ確立されていませんが、例えば、心臓の手術をすれば容体が改善することもあります。

 

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ただ、中には、医師から一方的に「容体が悪化しても積極的な治療はしません」と告げられ、子どもが亡くなったあとで「治療を検討しないで本当によかったのか」、「もっと長く一緒にいたかった」と後悔する家族もいるんです。

 

そのため、親たちからは「子ども本人にとって、そして家族にとって最善の道は何なのか選択するための情報を教えてほしい」という声が聞かれました。


たくましい“18っ子”

取材を始めるまで正直、私は「18トリソミー」の子どもたちというと、体が小さくて、短命で自分で意思表示をするのも難しいというイメージを持ってしまっていました。

 

しかし、取材してみて、こちらが話しかけると子どもたちはとびっきりの笑顔を見せてくれたり、話すことができなくても、私がご両親にインタビューをしていると「私も写りたい!」と言わんばかりに体の動きでアピールしてきたり、気に入らないことがあると「うー」と小さく声を出してみたりと、1人1人個性があって、精いっぱい生きようという力強さを感じました。

 

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そして、ゆめ佳ちゃんのようにいろんなことにチャレンジする姿を見ていると、私も1児の母として、子どもの可能性は障害のあるなしに関わらず無限大だなと改めて感じましたし、小さいときからいろんな経験をさせてあげたいという親の気持ちも同じだと思いました。

 

しかし、今回ご紹介した子どもたちのように重い障害があったり医療的ケアが必要だったりすると、例えば親が同年代の友達と過ごす機会を増やしてあげたいと思っても、通える施設や保育所、それに学校などはまだまだ少ないのが現状です。今回の写真展をきっかけに、子どもたちへの理解が進み、今後、受け皿も増えていってほしいと思います。

 



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山形局記者 | 投稿時間:16:31