2013年1月23日(水)

フランスとドイツ “和解”から50年

フランスとドイツの歴史的な和解から、ちょうど50年。
両首脳は、あらためてEU=ヨーロッパ連合の統合を深めていく決意を示しました。

オランド大統領
「他に類をみない両国の友好関係で、ヨーロッパ統合を前進させたい。」

メルケル首相
「ドイツとフランスは常にヨーロッパをより発展させる推進力になってきた。」

2度の大戦をはじめ、これまで幾度となく戦火を交えてきたフランスとドイツ。
しかし、第2次世界大戦の後、両国は、2度と戦争を起こさないという信念のもと、和解。
1963年1月22日に、協力条約を締結しました。
その後、外交や軍事、教育など、様々な分野で結束を深めてきた両国。
信用不安やテロ対策など、課題が山積している今、改めて、両国の関係が注目されています。
フランスとドイツがかつての対立をどう乗り越え、これからどのような関係を築いてこうとしているのかを展望します。

傍田
「かつて戦火を交えた国どうしが、対立を乗り越えて信頼関係を築いていくのは容易なことではありません。
第2次大戦後、その難しい課題に取り組み、ヨーロッパの統合に向けて結束を深めてきたのがフランスとドイツです。
信用不安への対策に加えて、アルジェリアやマリなどヨーロッパと結びつきの強い北アフリカや西アフリカでのイスラム武装勢力のテロにどう立ち向かうかも含め、両国の協力関係の行方が改めて注目されています。」

鎌倉
「この両国の関係の礎となっているのが、1963年にフランスのドゴール大統領と当時の西ドイツ、アデナウアー首相のもとで結ばれた協力条約です。
調印された場所から“エリゼ条約”とも呼ばれています。
まず、この条約について、黒木さんからです。」

黒木
「こちらが、フランスとドイツとの間で交わされた条約の調印書です。
もっとも強調されているのが、両国間の“交流”をはかることです。
条約には、両国の政治指導者が定期的に会談を行うことが盛り込まれ、これにより、首脳会談を、少なくとも1年に2回、行うことが決まりました。
また、青少年の交流拡大もうたっており、歴史的なわだかまりを解消し、双方のつながりを深めるための取り組みも行われました。
様々な分野で交流が活発になるうちに、両国の友好関係は大きく発展。
1993年のEU・ヨーロッパ連合発足の原動力になりました。
そして、経済面でも両国の企業が共同出資して、設立された航空機メーカー・エアバスが、アメリカのボーイング社と市場を二分するまでに成長するなど、大きな成果を上げています。」

鎌倉
「フランスとドイツ、両国の人々は長年、敵対してきた歴史をどう乗り越え、これからどのような関係を築いていこうとしているのか。
その思いを取材しました。」

“和解”から50年 深まる交流

フランス東部の町、ストラスブール。
フランスとドイツが、領有をめぐって長年争った、アルザス・ロレーヌ地方の中心都市です。
この町の郊外に、両国の友好を象徴する駐屯地があります。
駐留しているのはドイツの歩兵部隊です。
3年前からフランス軍の兵士もいる敷地の中で任務についています。
ドイツの部隊がフランスの領土に常駐するのは、第2次世界大戦でのナチスドイツの占領以来、初めてのことです。
任務は、コソボなど紛争地域での平和維持活動などです。
ドイツの部隊は、しばしばフランス軍の部隊と合同の訓練も行います。

ドイツ陸軍 セバスチャン・シュパーク大尉
「フランス軍は、我々を歓迎してくれています。
あらゆる手助けをしてくれますし、大変、良好な関係です。」



フランス陸軍 セバスチャン・イセルン大尉
「ドイツの部隊がフランスに駐留しているという事実は、第2次世界大戦後、仏独が良好な関係を築いてきたことの象徴です。」



両国の協力関係は外交や、軍事面にとどまりません。
若者同士の交流など教育分野の協力も、両国の関係を深める上で、大きな役割を担っています。
ロレーヌ地方の大学でドイツ語を教えてきた、フランス人のジャン・ダビドさんです。
長年、両国の学生の交流に力を尽くしてきました。
14年前、ダビドさんは、フランスとドイツの大学をネットワーク化し、共通の学位を取得できる制度の創設に関わりました。
両国の間で、自由に学び、就職できるようにというのが、制度のねらいです。

フランス人学生
「修士課程に進むか就職するか迷っています。
ドイツの見本市で1か月間、イベント運営の職業体験をするつもりです。」

ダビドさんがかつて学長を務めた大学を含め、今では両国の180あまりの大学で年間、あわせて5,000人が、共通のカリキュラムで学んでいます。

ジャン・ダビドさん
「エリゼ条約における友好の枠組みに強い関心を持ち、特に若者たちの交流に役立ちたいと思いました。」

エリゼ条約50年を記念するフォーラム。
ダビドさんは、次の世代を担う若者たちが、対話を重ね、よりよい関係を築いていくことが、何より大切だと考えています。

ジャン・ダビドさん
「条約で、もっとも大事なのは対話を義務づけたことです。
両国は耐え難い戦争で対立しましたが、対話をしようと決めたのです。」

過去と向き合う 対立から和解へ

半世紀の間に結束を強めてきたドイツとフランス。
両国の人々は「過去の歴史」と向き合いながら、相手への理解を深めていきました。

ストラスブールの対岸の街に暮らすドイツ人、ジークフリート・ヴィスラーさん。
両国の間を自由に行き来できるようになって以来、ストラスブールに出かけて買い物をすることは、日常生活の一部になっています。
そのヴィスラーさん。
これまで家族以外には、ほとんど明かしてこなかった「過去」があります。

ナチスの青年組織「ヒトラーユーゲント」。
戦時中、そのメンバーの1人として、活動していたのです。

ジークフリート・ヴィスラーさん
「自分にとってフランスはドイツの領土を奪った敵だと思っていました。」

ナチスの活動に関わっていたことを負い目に感じながらも、戦後もフランス人には複雑な感情を抱き続けてきたというヴィスラーさん。
そのわだかまりを断ち切るきっかけとなったのが、多くのフランス人が働く会社に就職したことでした。
同僚のフランス人たちと、政治のことから、身の回りの出来事まで会話を重ねることで、少しづつ、フランスに対する理解が、深まっていったといいます。

ジークフリート・ヴィスラーさん
「フランス人と一緒に働くことで、相手を思いやるようになりました。
時間はかかりましたが、和解することができたのです。」



ヴィスラーさんが、最近ようやく訪れることができるようになったという場所があります。
ストラスブールの川岸に立つ石碑。
戦時中、ゲシュタポによって惨殺され、川に投げ捨てられたレジスタンスの人たちの慰霊碑です。
ここに立つたびに、過去を繰り返してはならないと、思いを新たにしています。

ジークフリート・ヴィスラーさん
「この慰霊碑の前に立つのは沈痛の思いです。
言葉を失います。
私たちは二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。」

“和解”から50年 両国の受け止めは

鎌倉
「ここからは、渡辺記者に話を聞きます。
フランスとドイツの和解から50年がたちましたが、この半世紀を双方の国民はどう受け止めているのでしょうか。」

渡辺記者
「両国のメディアは、歴史を振り返りながら一連の記念行事を大きく伝えました。
世論調査によると、両方の国民とも9割が相手の国に良いイメージを持っていると答えており、どちらかの片思いではなく、バランスのとれた友好関係だと感じます。
両国の歴代の政治指導者は率先して、和解と友好に取り組んできました。
国内の事情で、政府への不満がたまったときでも、国民の注意をそらすため、偏ったナショナリズムをあおるようなことはしませんでした。
政治が率先して対話を進め、若い世代につないだことが、今の状況につながったと感じます。」

フランスのマリ軍事介入 ドイツの協力は

傍田
「記念行事は、フランスがマリに軍事介入するなかで行われたが、ドイツはマリでの作戦についてはフランスとの間でどのような協力を進めていくことになるのでしょうか?」

渡辺記者
「その問題は、ベルリンでの首脳会談でも取り上げられました。
ドイツは、フランスによるマリへの軍事介入をテロ組織との戦いだとして、支持と感謝の意を表明。
物資の輸送など後方支援をしています。
しかし部隊を派遣する予定はありません。
一方のフランスも、急きょ軍事介入することになったが、本来はアフリカの問題はアフリカの力で解決するのが望ましいという立場です。
他のヨーロッパ諸国に直接参加するよう求めてはいません。
ただ軍事作戦は、長引く可能性もあり、ドイツからの後方支援の拡大には期待を示しています。」

信用不安対策 カギを握る両国の関係

鎌倉
「ヨーロッパの信用不安の問題をめぐっては、独仏の足並みの乱れも指摘されているが、両国の関係は今後どうなっていくのでしょうか。」

渡辺記者
「フランスで左派のオランド大統領が就任してから、中道右派のメルケル首相と、うまくやっていけるのかという懐疑的な見方がつきません。
しかしEUにおいて、両国の責任が大きいことを、両首脳とも強く意識しています。
イギリスの経済紙は、独仏関係についてヨーロッパ統合という子どものため、幸せでなくても離婚はできない夫婦だと表現する論文を掲載していました。
信用不安という危機は、EUのもろさと、両国の考え方の違いを改めて示しました。
ただその反面、両国の責任感を強めたと指摘する専門家もいます。」

政治学者 アルフレード・グロッサー博士
「ユーロが崩壊するという仮説も立てたが、危機は両国を近づける働きもあり、協力せざるを得ない状況をつくり出すのです。」



渡辺記者
「ドイツとフランスは、今年(2013年)6月のEU首脳会談までに、経済面での統合を深めるための共通の提案を出すことで合意しました。
国益がぶつかる外交では、互いに受け入れ可能な妥協点を見いだすため、絶え間ない努力が必要となります。
ドイツとフランスはそれを互いに理解した成熟した関係だという印象です。」

この番組の特集まるごと一覧 このページのトップヘ戻る▲