2012年12月5日(水)

急増!日本からマレーシアへの“教育移住”

日本から飛行機でおよそ7時間のマレーシア。
老後を海外で過ごしたいという日本人の移住先として人気を集めてきました。
今、このマレーシアに移り住む30代や40代が増えています。
のびのびとした環境で、子どもに英語や国際感覚を身につけてもらいたいというのが移住の目的です。

移住者
「いろいろな国の人が住んでいるので、子どもを育てるのにいいんじゃないか。」

一方で言葉の壁や、収入の確保など、さまざまな悩みも…。
日本の、子育て世代が注目するマレーシア。
増える教育移住について、その背景と課題に迫ります。

鎌倉
「こちらは、海外で暮らしたいという日本人の人気移住先のランキングです。
1位はマレーシア。
6年連続のトップとなっています。
気候が温暖で治安が良いことに加え、日本や欧米に比べて物価が安いこと、さらにマレーシア政府が、外国人の受け入れに積極的なことなどが人気の理由です。」

傍田
「そのマレーシアに移り住む日本人の中でも、今、増えているのが、子育て世代です。
マレーシアへの人の流れに、何が起きているのか取材しました。」

日本からマレーシアへ 増える“教育移住”

髙岡記者
「海峡をはさんでシンガポールを望む街、ジョホールバルです。
首都クアラルンプールから遠く離れたこの町に移住を希望する日本人が今、増えています。」

町の中心部で建設が進むマンション。
日本からの移住者向けにつくられています。
モデルルームには連日、日本から見学者が訪れています。
中でも増えているのが、子どもを連れた30代から40代の親たちです。


こちらは広さ200平方メートルで3LDK、およそ2700万円。
山口県からきたこの夫婦も移住を検討しています。
目的は、マレーシアで子どもに教育を受けさせることです。



マレーシアへの移住を検討している夫婦
「英語、中国語、マレー語など民族の多様性がすごくいいと思っている。
私の子どもは“アジア人”として育てたいという思いがある。」

不動産会社社長
「今までは投資としての海外不動産の購入が多かったが、家族を含めた移住を考えた購入が増えてきている印象。」



今年(2012年)8月からジョホールバルに住んでいる徳田さん一家です。
小学6年生と3年生の娘がいます。
移住を決めた最大の理由は、受験勉強に追われる日本の教育への疑問でした。
日本では、中学受験を目指していた時期もありましたが、娘が子どもらしさを失っていくのを感じ、もっとのびのび育てたいとマレーシアへの移住を決めました。

妻 佳枝さん
「(周囲は)泣きながら夜勉強をして、母親も精神的、肉体的に追いつめられる。
果たしてそれで良いのかという疑問が常にあった。」

娘2人の学校は、地元のインターナショナルスクールを選びました。
マレーシア人のほか、シンガポール、インドネシアなど様々な国の子どもが通っています。
英語でのコミュニケーションには不安もありましたが、すぐに学校になじむことができました。
学校では、英語が母国語ではない子ども向けの特別授業にも参加。
ゲームをしながら楽しく英語を学んでいます。

「ひざ!頭!回って!」

最近は、少しずつ英語での会話も上達してきました。



「How old are you?」

長女 麻衣さん
「Eleven」

長女 麻衣さん(小6)
「最初はあまりわからなかったが、毎日、英語だから聞き慣れてきた。」




次女 亜美さん(小3)
「英語がうまくなって、いろんな国の言葉もしゃべれるようになりたい。」




教師 スティーブ・カーワンさん
「子どもに英語を学ばせる最良の方法は、英語を話す子と一緒にいさせることです。
少しずつ自信をつけさせることで、自ら学んでいくようになるのです。」

教育を目的に移住する家族にとって、大きな問題が学費と現地での生活費です。
徳田さんはマレーシアに移住するため、日本で勤めていた会社を退職しました。
娘2人の授業料は年間100万円ほどかかりますが、取得したビザでは、原則として現地で働くことは認められていません。
徳田さんは、インターネットを使った貿易のビジネスを立ち上げて、なんとか収入を確保しています。

徳田雅史さん
「ずっとサラリーマンを20何年間もやってきたので、それを捨ててというのは相当の勇気と思い切りがないとできない。
こちらの学校で子どもたちが学ぶのが絶対にいいなと思ったので決定しました。」


収入を確保するため、大きな決断をした家族もいます。
三谷麻子さんと3歳の長男、信才くんです。
信才くんの教育のため、今年2月からクアラルンプールで親子2人で暮らしています。
仕事がある夫は、東京に残り、離ればなれで暮らす決断をしたのです。
三谷さんが、ここまでして移住したのは、画一的な日本の教育に強い危機感を抱いたからです。
マレーシアで、国際感覚を身につけ、可能性を広げて欲しいと考えました。

三谷麻子さん
「日本だと、みんなと同じじゃなければという暗黙のルールみたいなのがあって、将来、生きていくために、力が育つかちょっと疑問があった。
遅くなればなるほど言葉は覚えられないので、早い方がいいと思った。」

東京で働く、夫の恭也さん(34)がマレーシアを訪れることができるのは月に1回ほど。
ふだんはパソコンを使って話をしています。

夫 恭也さん
「幼稚園のお話して。」

インターナショナル幼稚園に通い、最近では、英語も少しづつ理解できるようになった信才くん。
心配しているのは、日本語がおろそかになることです。
毎日、テキストを使って教えています。

三谷麻子さん
「英語はあくまで自分を表現するためのコミュニケーションツール。
最終的には日本語を上手に使えるように育てたい。
自分の意見をどう伝えるかは、言葉の面だけではないと思うので、小さいうちから身につけていってもらいたい。」

固定観念にとらわれず、グローバル化の時代を生き抜く力を持った子どもを育てようと海外を目指す親たち。
新たな人の流れが加速しています。

海外で子どもに教育を マレーシア人気の背景

鎌倉
「取材した髙岡記者に聞きます。
移り住みやすい条件がそろっているというマレーシアですが、移住する人はさらに増えているのでしょうか。」

髙岡記者
「マレーシアを目指す人の流れは、東日本大震災以降、特に目立ってきています。
マレーシア政府が発行する長期滞在ビザの取得者は、年間200人程度で推移していましたが、震災があった去年(2011年)は423人に急増し、今年は8月までに558人に上っています。
それまでも増えていたマレーシアに移り住もうという人の流れを震災がさらに後押しした面もあったと言えます。
このうち、子育て世代は20%ほどを占めているとみられます。
子育て世代の親たちを取材すると、英語を覚えさせたいということを第一の目的に挙げる人は思いのほか少ない。
受験中心の教育や、深刻ないじめ問題も親たちの移住の動機になっているようです。
多民族、多文化のマレーシアでは、周りの人と違いがあるのがあたりまえで、その違いを認め合いながら社会が成立しています。
異質なものを排除するのではなく、受け入れる雰囲気の中で、のびのびと育ってほしいと親たちは口をそろえています。」

増える“教育移住”課題は

傍田
「それでも住み慣れた日本と違う環境で暮らしていく上で、課題はないのでしょうか。」

髙岡記者
「当然バラ色ばかりとは言えません。
1つは言葉の問題です。
現地では、マンションの契約や電話の開設など生活に関するあらゆることを自分で行わなければなりませんし、さまざまなトラブルにも英語で対応する必要があります。
現地の人たちとうまくコミュニケーションがとれず、孤立しがちになり、なじめないまま帰国する移住者も数多くいると言われています。
また、教育の面でも課題があります。
英語と日本語を同時に習得していくことができるのか、どちらかが中途半端になってしまうのではないかということは、親たちの共通の悩みです。
慣れない英語で教育を受けるため、日本で学ぶ同年代の子どもよりも学力が劣ってしまうのではないかと不安もあります。
海外に移り住むというのは、家族や子どもの将来のことを考え抜いた上で、相応の覚悟が必要とされる決断だということだけは間違いなさそうです。」

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