アネハヅル1~3歳の若鳥の群れ アネハヅルの親子連れ アネハヅルのヒナ(ふ化後3日ほど) アネハヅルの親鳥 アネハヅルの巣と卵 抱卵するアネハヅル 馬を威嚇するアネハヅルの親鳥 カラスを威嚇するアネハヅルのペア 生まれて1日目のヒナと親ヅル アネハヅルの幼鳥(10日目ほど) イヌワシに食べられるアネハヅル モンゴル 草原の夕景 越冬のためモンゴルの草原を飛び立つアネハヅルの群れ
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[150]アネハヅル 驚異のヒマラヤ越えを追う

今回の放送の主な撮影地を示した地図

世界の屋根と呼ばれるヒマラヤ山脈。10月初め、上空8千mに渡って渡り鳥が一大スペクタクルを繰り広げる。小さなツルが数百から千羽のV字編隊を作り、北から南へ次々と高山を越えていくのだ。ツルの名前は、アネハヅル。世界最小のツルだ。シベリアやチベットの草原で繁殖し、秋、越冬地のインドへと渡る。上空の気温は氷点下30度、酸素濃度は地上の3分の1という過酷な環境での決死の大飛行だ。この渡りがよく見られるのが、ネパール北西部にあるカリガンダキ渓谷。アネハヅルは、渓谷に発生する台風並の強風の中、風を巧みに利用して、ヒマラヤを越えていることが分かってきた。さらに、今年生まれた若鳥を天敵から守り、危険な初飛行を成功させる、ツル独特の親子の絆にも研究者の注目が集まっている。山岳民族のシェルパ族はアネハヅルを“風の鳥”と呼ぶ。しかし、近年、地球規模の異常気象がヒマラヤの天候にも大きな変化をもたらしている。

番組では、モンゴルでのヒナ誕生からヒマラヤ越えまでツルの行動を大追跡。大渓谷の地形と風を巧みに利用し、親子の強い絆でヒマラヤを越えていくアネハヅルのドラマを描く。

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フィールドリポート

アネハヅル 大草原モンゴルでの子育て

春から夏に向けて、アネハヅルの繁殖と子育てを撮影したのはモンゴル。見渡す限り大の草原が広がっている場所で風景は素晴らしいのですが、とにかく撮影にあたって隠れるところがないのです。アネハヅルの巣は、人の膝くらいまでしかない様な草がで覆われた平坦な草原の地面の上に作られています。そこに近づいていく我々は、ツルから丸見えです。アネハヅルは非常に警戒心が強い鳥で、繁殖中に500mも近づけば、巣から離れていってしまいます。そこで撮影クルーはいったん、アネハヅルが巣から離れてしまわないギリギリの所にブラインドを置いて、親鳥の目を盗んで、テントの中に入ったまま少しずつ巣に近づいていきました。まさにツルと“ダルマさんが転んだ”をやっているようでした。あまりアネハヅルを警戒させると抱卵放棄してしまうこともあるので、現地の研究者に指導してもらいながら、慎重に撮影を進めなければなりませんでした。毎日、そんな撮影を続けていたためか、親鳥もかなりなれてきたようで、巣からかなり近い距離まで接近でき抱卵や孵化、またヒナの様子を丹念に撮影することができたのです。

また同行してくれた現地研究者はアネハヅルの生息調査のため、卵の計測やヒナに個体識別用の足輪を付けることも同時に行っていて、その際に巣の近くに小型カメラの設置を依頼、かなり珍しいアングルのショットも収められ、研究者も非常に興味 津々でした。またヒナたちは日に日に大きくなるのですが、そのスピードたるやすさまじいもので、1ヶ月後には親鳥とほとんど変わらない大きさ。誕生からわずか3ヶ月でヒマラヤを越えるのもうなずけます。またアネハヅルはモンゴルの大草原の至る所で繁殖していましたが、撮影場所に選んだのは首都ウランバートルから東に120kmにあるGun-Galuutという自然保護地区。アネハヅルだけでなくマナヅルやイヌワシ、ハゲタカ、タルバガンというマーモットの一種やオオカミ、キツネなど、さまざまな動物たちの姿が見られる場所でした。

アネハヅルのヒマラヤ越え・極限の世界を渡る

ヒマラヤ山脈といっても全長は2400kmと広大な範囲があり、さまざまなルートで越えていることが知られています。その中でも一番、目撃例が多いカリガンダキ渓谷を撮影場所に選び、9月下旬から10月中旬の渡りの時期が終わるまで、撮影しました。

一番苦労したのは撮影ポイントまで山を上ること。拠点の町で既に標高2700mで、撮影ポイントは目の前に見える尾根なのですが、そこで標高3200m、場所によっては4000mもあり、ポーターに荷物を持ってもらっていても、息ギレしながら撮影ポイントに通う毎日でした。それとカリガンダキ渓谷流域で撮影場所に選んだジョムソンという町の周辺は風の名所としても知られる所。毎日風速20m/sの風がふき、時には35m/sの大型台風並みに達しました。また、渓谷の地形によって風は複雑に渦をまき、そこはまさに“風の王国”。こんなところをアネハヅルが渡っていくのかと疑いたくなる所でした。

しかし10月に入るとアネハヅルの群れが次々と飛来し、風と格闘しながらも上手に風をつかみ上昇し、ヒマラヤの峰々を越えていきます。そんな姿をカメラに捉えるべく、撮影に望むのですが、その強風がクセもの。石垣を組みウインドバリアも作ってあるのですが、三脚が風にあおられ、カメラマンも風と格闘しながらの撮影になりました。またヒマラヤ越えの撮影には、アネハヅルのルートを解明した慶応義塾大学特任教授・樋口広芳教授も同行し、さまざまなアドバイスを頂きました。

ヒマラヤの峰々を背景にして渡っていくアネハヅルの姿は、非常に美しいだけでなく、高度からすると平地の1/3の酸素、-30℃と極限の世界を懸命に渡っていくのだと思うと、神々しさすら感じました。現地の人々はアネハヅルのことを“風の鳥”と呼ぶのだそうです。

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