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2018年121日放送 午後900分~NHK-FM

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『大好きなひと』

原案:吉田朱里、渋谷凪咲、梅山恋和

脚本:北阪昌人

★参考:ネコ山、リッキー

出演

吉田朱里、渋谷凪咲、梅山恋和、山寺宏一

あらすじ

吉田朱里人と、妹のココナは血のつながらない兄妹。全国大会にも出場するバレー部のエース、気さくで優しく、勉強もできる学級委員、そんな兄・朱里人にココナは異性としての思いをひそかに寄せていた。しかし、同じく朱里人に恋をしているクラスメイトのナギサの猛アピールを見て、ココナは自信を失う。改めて、打ち明けられない恋を確信したココナだったが…。果たして、この恋の三角関係の行方は…!?

人物相関図

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ココナ:私、ココナは、恋に落ちた・・・相手は・・・愛してはいけないひとだった・・・。


ナレーション:ここは、大阪難波にある、一軒の家・・・。


ココナ:ちょっと、お兄ちゃん、早く起きないと、遅刻しちゃうよ!

朱里人:ああ、眠い、マジで眠い・・・もうちょっと、なあ、ココナあと5分、あと5分、頼むわ。

ココナ:一緒に行こうよ、学校。

朱里人:先、行ってくれたまえ~お兄ちゃんは、あかん、昨日も練習、きつかったんや~

ココナ:あ、誰か来た、は~い

ナギサ:おはよう! あ、どうも。

ココナ:どうも、

ナギサ:ジュリト、おる?

ココナ:え?

ナギサ:あんた、誰?

ココナ:え? あ、妹、ですけど。

ナギサ:ああ、そう。私ね、昨日から、ジュリトのカ・ノ・ジョ。よろしくね。

ココナ:え?

ナギサ:ほら! ジュリト! 朝練さぼったら、コーチに怒られんでぇ!

ココナ:そのひとは、ふわっとした可愛らしい顔をして、お兄ちゃんに怒鳴った。

ナギサ:ジュリト早よう! 起きなあかんでぇ!

朱里人:お、おお、ナギサ、わかったぁ!

ココナ:私が、好きになったのは・・・お兄ちゃん。


ナレーション:ここは、大阪難波にある、NMB高校。昼休みの2年A組のクラスでは、朱里人と、ナギサが話しています。


ナギサ:可愛いなぁ、妹さん。

朱里人:え? あ、ココナ? まだガキやから。

ナギサ:今日な、私が、ジュリトのカノジョ、って言うたら、顔、真っ赤にしとった。

朱里人:って、いつからカノジョになったんや。

ナギサ:ひどい! つきあってって、言うたでしょ。

朱里人:ナギサがな、オレは、そんな気は、

ナギサ:嫌いなん?

朱里人:え?

ナギサ:私のこと、嫌いなん?

朱里人:それは・・・その、

ナギサ:吉田朱里人くんは、クラスの、ううん、学校の人気者。バレー部のエースで、勉強もできて、学級委員、気さくで、優しい・・・。私、渋谷ナギサは、朱里人くんにアピールするために、女子バレー部に入った。

ナギサ:ココナちゃんって、もしかして、ジュリトのこと、

朱里人:な、なんやねん、

ナギサ:好きだったりして、

朱里人:勘弁してよ、ないない、妹だよ。

ナギサ:だって血はつながってないんでしょ。

朱里人:・・・それは、

ナギサ:あ、ごめん、

朱里人:いや・・・別に、あれやけど、

朱里人:別に、焦ることはない。そう、10年前、オレのお父さんと、ココナのお母さんが、再婚した、それだけのことだ。ココナは、オレの、妹。それ以上でもそれ以下でもない。


ナレーション:放課後、バレー部の練習で、コーチから突然の発表がありました。


コーチ:3年生は、みんな引退した。これからは、2年と1年で、このバレー部の伝統を守っていく。わが校は、創立してまだ8年だが、全国大会に二度、出場している。前のキャプテン、山本の代わりは・・・吉田、

朱里人:は、はい!

コーチ:おまえだ。おまえに、キャプテンをやってもらう。

朱里人:え? ぼ、ボクっすか? ボクはまだ、その、

コーチ:山本に聞いたら、言ったんだ。これからのNMBバレー部をひっぱるのは、吉田だって。

朱里人:山本先輩・・・。

コーチ:がんばれ!

朱里人:は、はい!

コーチ:山本が抜けた穴は確かにデカイかもしれない。でもなあ、おまえには十分、力があるんだ、自信を持て!

朱里人:はい!

朱里人:オレは、思い出していた・・・。オレたちが全然、ヘタれで、コーチから、「おまえら! ちゃんとやれ! 」って怒鳴られたとき、オレらは、マジビビって、体かたまったけど、山本先輩は、ひとり黙々とサーブ練習してた。あの姿、めっちゃカッコよかったな・・・オレにできるんだろうか・・・キャプテン・・・。

ココナ:お兄ちゃんの、バレーをする姿を見ていた。お兄ちゃんが、飛ぶ。お兄ちゃんが、打つ。すごい、誰もとれない。家で、眠いよ~って言ってるお兄ちゃんも好きだけど、真剣な顔も、好き。

ナギサ:見学?

ココナ:あ、ナギサさん、

ナギサ:名前、憶えてくれたんや。

ココナ:・・・はい。

ナギサ:カッコええなあ、お兄ちゃん、

ココナ:はい。あ、いえ、

ナギサ:けっこう、やんちゃで問題児やったんやけど、立派になったなあ。キャプテンの顔になってきたわ。

ココナ:キャプテン、なんですか? お兄ちゃん、

ナギサ:え? 知らんかったん?

ココナ:知りませんでした。

ナギサ:そっか・・・ああ安心した。あんがい、何にも話してへんのやな、自分ら兄妹(きょうだい)。

ココナ:ショックだった・・・このところ、練習がキツイんだろうと思ってはいたけれど、まさか・・・キャプテンになっていたなんて、

ナギサ:明日から、行くから。

ココナ:はい?

ナギサ:今、お父さんとお母さん、結婚10周年で海外旅行に行ってるんやろ?

ココナ:は、はい。

ナギサ:私、こう見えて、料理めっちゃ得意やねん。明日から、お宅に住み込んで、ジュリトの世話、ちゃんとするから、安心して。

ココナ:え? そ、そんな・・・

ナギサ:ハンバーグ、好きやったよな、お兄ちゃん。

ココナ:・・・はい。

ナギサ:んじゃ、明日から、よろしく~。じゃあね。


ナレーション:夕闇迫る頃・・・自転車置き場に、ジュリトとココナの姿がありました。


朱里人:あ、あれ? ココナ、まだ帰ってなかったんか。

ココナ:うん、

朱里人:待ってたんか?

ココナ:待ってた。

朱里人:は~、疲れたぁ、めっちゃしごかれた。

ココナ:お兄ちゃん、

朱里人:痛っ、筋肉痛、ハンパない・・・。

ココナ:キャプテンになったこと、なんで言うてくれへんかったん?

朱里人:え? あ、ああ、いや、別に、

ココナ:ココナ、言うてほしかった。

朱里人:さあ、帰るで。

ココナ:お兄ちゃんは、汗の匂いがした。私は、必死に、お兄ちゃんの自転車についていく。

ココナ:待ってよ~

朱里人:はよ、来い。

ココナ:ねえ、ナギサさん、明日、来るって、

朱里人:来る?

ココナ:ご飯、つくりにくるって、

朱里人:ご飯?

ココナ:お兄ちゃんが好きな、ハンバーグ。

朱里人:あいつ・・・何考えてるんやろ。

ココナ:好きなだけ。

朱里人:え?

ココナ:お兄ちゃんのこと、好きなだけ。

朱里人:・・・さあ、スピード、あげるで。

ココナ:ちょっと、ちょっと、お兄ちゃん、待ってぇよ!

ココナ:私の恋は、ぜったいに、打ち明けられない恋。私は・・・ナギサさんに、かなわない。

ナギサ:ジュリト! 来たで~今日から、三日間、炊事、洗濯、掃除、ぜーんぶ、このナギサ姫が、やりますんで、安心してバレーに、打ち込んでください!

ココナ:私は、自分の欲望を、抑えるしか、ない。


ナレーション:吉田ジュリトと、妹のココナは、血のつながらない兄妹(きょうだい)。ココナは、密かに、兄への思いを募らせていきますが・・・。両親が海外旅行に出かけている吉田家に、乗り込んできたのは、やはり、ジュリトを好きな、ナギサです。


ナギサ:は~い、ハンバーグ、できたよ!

朱里人:なあ、ココナ、

ココナ:なに、お兄ちゃん、

朱里人:これは果たして、食べていいもの、なんやろか?

ココナ:おそらく、

朱里人:オレには、真っ黒な炭にしか、見えへん。

ココナ:せっかく、ナギサさんが、作ってくれたんやから、

朱里人:まあ、そうやけど、オレの体の細胞が、こう言うんや。あかん、ジュリト、あかんで、これはゼッタイ食べたらあかんやつや! ってさあ。

ナギサ:足りなかったら、言うてねぇ! たくさん作ったから!

朱里人・ココナ:は~い!

朱里人:ココナ、おまえ、全然、食べてへんやん。

ココナ:いや、私は、お腹、いっぱいで。

朱里人:そのわりに、ご飯、めっちゃ食べてるやん。

ココナ:そんなことないもん。

朱里人:揚げ銀杏、うまいなあ、

ココナ:これは私が作ったの。

朱里人:そっか・・・そういえば、山本先輩も、好きやったなあ。揚げ銀杏。あのひと、100個食べたっていう伝説があるねん。

ナギサ:は~い、ハンバーグ、追加やでぇ。

朱里人:グゲ!

ナギサ:なに、その、うれしそうな声。初めて聞いた。

朱里人:初めて、言った。

ナギサ:100個欲しいの? 私のハンバーグ。

朱里人:いえ。

ナギサ:もう、遠慮しちゃって、可愛いぞ、ジュリト。

朱里人:いえ、遠慮なんか・・・。


ナレーション:その日の夜遅く、ベランダでココナが月を見ていると、


ナギサ:細い月やねえ。

ココナ:ナギサさん・・・。

ナギサ:ああいう月って、月の舟って言うんやろ? 確かに舟みたいな形やなあ。

ココナ:・・・そうですね。

ナギサ:私のこと、嫌いやろ?

ココナ:はい・・・と言いたいところですけど、それが、なんか、嫌いになられへんというか・・・。

ナギサ:まあ、私は、可愛いし、おもろいし、美人やし、料理うまいし、なぁ。

ココナ:う~ん。最後のは、ちょっと・・・。

ナギサ:あ、流れ星!

ココナ:え?

ナギサ:うっそん!

ココナ:えええ? なんですか、その子どもだましな感じ。

ナギサ:・・・好きなんやろ?

ココナ:え?

ナギサ:お兄ちゃんのこと。

ココナ:・・・好きですよ。

ナギサ:いやいや、そういう好きじゃなくて。

ココナ:はい?

ナギサ:男性として、好きなんやろ?

ココナ:はい?

ナギサ:この家に来てわかった。

ココナ:そんなことないです。

ナギサ:ほんと?

ココナ:ほんとです。だって、お兄ちゃんは、お兄ちゃん、ですから。

ナギサ:ふ~ん。じゃあ、私がジュリトと結婚しても、いいの?

ココナ:け、結婚? それは、

ナギサ:どうなるか、わからへんでしょ、それは。

ココナ:ま、まあ。

ナギサ:難波の地下街に、めっちゃあたる占い師がいて。『あかりんさん』っていう占い師。全身、真っ黒な服、着てて、水晶で占うんやけど、そのひとに、言われたんや。

(回想)
あかりん:ああ、あああ、見えます、見えます~。あんたはねえ、近いうちに、結婚します。はい、間違いないです、バレーです、バレーやってるひとです。

ココナ:そ、そう、なんですね。

ナギサ:そうなんよ、ごめんね。

ココナ:なんで私に謝るんですか?

ナギサ:さあ、なんでやろ・・・。


ナレーション:翌日、ココナが、難波の地下街を歩いています。目的は、そうです、占い師「あかりん」!


ココナ:どこやろ・・・「あかりん」、「あかりん」あ、あった。めっちゃ、ちっちゃい店。

あかりん:こんにちは~

ココナ:こんにちは。

あかりん:出てるで~、あかんオーラが出てるでぇ~

ココナ:え? あかんオーラ?

あかりん:道ならぬ恋、してるやろ?

ココナ:え?

あかりん:あかんでぇ、それは、あかんでぇ。

ココナ:別に、血はつながってないし、

あかりん:はい? なにブツブツいうてんの?

ココナ:いえ、

あかりん:ちゃんと占ってほしいんやったら、お金くれな、やらへんよ。

ココナ:いいです! 見てもらわなくて、けっこうです!

あかりん:なんやこの子!


ナレーション:そのころ、ジュリトは、バレー部のコーチに、呼ばれていました。


朱里人:吉田です!

コーチ:ああ、入れ。

朱里人:失礼します!

コーチ:ここに座れ。

朱里人:はい。

コーチ:いや、ちょっとびっくりする申し出があってなあ。

朱里人:はい?

コーチ:シンガポールのとある高校が、おまえをほしいと言ってきたんだ。

朱里人:え?

コーチ:留学、してみる気はないか?

朱里人:ええ?

コーチ:正直、我がチームも、おまえに抜けられたら辛い。でもなあ、おまえのバレーボール選手としての将来を考えると、ここで海外の空気を吸っておくのは、必ず、役に立つ、そう思ってだなあ。

朱里人:ちょ、ちょっと待ってください。ボクが、シンガポールの高校にスカウトされたってことですか?

コーチ:ああ、そうだ。去年のインターハイの映像が世界中に出回っているらしい。

朱里人:そうなんですね・・・。

コーチ:私は、いい話だと思うぞ、吉田。ま、親御さんともよく話し合って、決めるんだ。

朱里人:はい!


ナレーション:その日、ジュリトが家に帰ると・・・。


朱里人:ただいま~

ナギサ:おかえりなさい。

朱里人:お、おお、今日も、いたのか。

ナギサ:ああ、今日もいた。コロッケ、つくったよ、ちょっと、色は悪いけど、中はほくほくやから。

朱里人:お、おう。

ナギサ:どないしたん?

朱里人:え? なにが?

ナギサ:いや、めっちゃ怖い顔して帰ってきたから。

朱里人:いや、別に、あ、ココナは?

ナギサ:さあ、まだ帰ってきてないけど。

朱里人:え? オレよりかなり前に帰ったんやけど。

ナギサ:さあ、それは・・・

朱里人:ちょっと探してくる。

ナギサ:探すって、その・・コロッケ、揚げたてやねんけど、

ナギサ:ちょっと、ジュリト?!


ナレーション:色々な場所を探しまわったジュリトでしたが、意外にも、家からすぐ近くの公園のブランコに、ココナが座っていました。


朱里人:ココナ!

ココナ:お兄ちゃん!

朱里人:なにしてんねん。

ココナ:別に、

朱里人:別にって、あかんやん、夜、こんなところでひとりでおったら。

ココナ:・・・だって、

朱里人:だって、なんや!

ココナ:私がいないほうが、お兄ちゃん、ナギサさんと二人きりでうれしいかなって、

朱里人:あほ!

ココナ:痛っ。

朱里人:・・・ご、ごめん、つい・・・。

ココナ:私なんか、どうなってもいいかなって、

朱里人:あほ、そんなこと、あるわけないやろ。ココナは、オレの大事な妹やから。

ココナ:私は・・・。

朱里人:・・・ココナ、

ココナ:なに?

朱里人:今日、コーチに言われたんやけど、シンガポールの高校にバレーで留学せえへんかって。

ココナ:えっ! すごい! すごいね! お兄ちゃん!

朱里人:・・・ココナは、そんなふうに言ってくれるって、思ってた。

ココナ:がんばって、私、お兄ちゃんのこと、一生、応援してる。

朱里人:一生って、大げさやな。

ココナ:ほんとの、気持ち。

朱里人:オレも、一生、ココナを応援してる。

ココナ:ほんと?

朱里人:ほんま。


ナレーション:ナギサが、帰ってこない二人を心配して、家から飛び出しました。


ナギサ:ったく、どこ行ったんやろ、二人とも!

ナギサ:きゃあ!


ナレーション:危うく、自転車とぶつかるところでした。


男子:大丈夫ですか?

ナギサ:ええ、

男子:よかった、すみません。

ナギサ:いえ、こちらのほうこそ。あ、何か、落ちました。

男子:ああ、バレエシューズです。

ナギサ:え?

男子:ああ、ボク、バレエ、やってまして。

ナギサ:バレエ。

男子:あの、いきなりこんなこというの、ほんと、あれなんですが。

ナギサ:はい。

男子:ひとめぼれ、しました。よかったら、ボクとつきあってもらえませんか?

ナギサ:えええ?

ココナ:コロッケ?

朱里人:ああ、今夜は、丸焦げのコロッケだ。

ココナ:ナギサさん、悪いひとじゃないけど、

朱里人:ああ、そうだな、でも、

ココナ:料理は、うまくない。

朱里人:ははは、


ナレーション:2人が家に帰ると、ナギサの姿はありませんでした。


ナギサ:運命のひとって・・・バレーのじゃなくて、バレエのひと、だったのね!

ココナ:お兄ちゃん、

朱里人:ん?

ココナ:今夜は、私がつくる。

朱里人:え?

ココナ:お兄ちゃんが好きな、ハンバーグ。

朱里人:そうか。じゃあ、楽しみに、待ってる。


ナレーション:一か月後、空港に見送りにきた、ココナの姿がありました。


ココナ:お兄ちゃん、行ってらっしゃい。

朱里人:ああ、行ってくる。

ココナ:お兄ちゃん、ココナはね、

朱里人:ん?

ココナ:・・・なんでもない。

ココナ:お兄ちゃんの背中が、どんどん、遠ざかっていく。私は、涙をこらえて、心で思う。お兄ちゃん、大好きだよ・・・。

収録後のワンショット

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