2018年3月23日放送 午後10時00分~NHK-FM
- 第227話
- 第228話
番外編『ガラスの靴』
原案:佐藤詩織、尾関梨香、石森虹花
脚本:北阪昌人
★参考:ハラミ、みさき
出演
佐藤詩織、尾関梨香、石森虹花、山寺宏一
あらすじ
バレリーナを夢見るシーデレラは、両親を早くに亡くし、遠い親戚のオゼーキに預けられる。オゼーキとその娘ニジーカにいじめられながらも、話し相手の野良犬ノラと、けなげに暮らしていた。ある日、王子様主催の舞踏会が開かれることになり、オゼーキとニジーカはドレスを着て出かけていった。シーデレラが留守番をしていると、突然、ノラが白い髭をたくわえたおじいさんに姿を変えて…?
人物相関図
物語が読める ♪
ナレーション:ここは、中世ヨーロッパ、石畳の広がる、とある街。一軒の狭い家では、母親のオゼーキと娘のニジーカが、何やら大騒ぎしています。
ニジーカ:ねえママ、何を着ていったらいいの? 王子さま主催の舞踏会! やっぱり、ライダースジャケット?
オゼーキ:なにいってるの、ニジーカ、この日のために、立派なドレスを買ってあるわよ。ほら!
ニジーカ:わああ! 素敵! もう、ママ、大好き!
ナレーション:とそこへ、ボロボロの服を着た、シーデレラがやってきました。
シーデレラ:お母様、お姉様、お掃除、お洗濯、終わりました。
オゼーキ:ドアの前にゴマがたくさん落ちてるわよ! 早く綺麗にしなさい。
シーデレラ:はい、お母様。
ニジーカ:ったくもう、シーデレラを見てると、テンション、落ちるわ~。あっちいっててよ!
シーデレラ:はい、お姉様。
ナレーション:シーデレラは、両親を早くに亡くし、遠い親戚のオゼーキのもとにもらわれてきたのでした。自分の娘と明らかに差をつけるオゼーキ。それでもシーデレラは、歯を食いしばって頑張りました。彼女の話相手は、野良犬のノラだけです。
シーデレラ:ノラ、ごめんね、今日はこれしかあげられないの、私のパンを、はんぶんこ。
ノラ:(きゅわん)
シーデレラ:養ってくれてるんですもの、贅沢は言えないわよね。
ノラ:(わん)
シーデレラ:ああ、でもなあ、舞踏会、いいなあ・・・。あのね、ノラ、ちょっと見ててね、私、ちっちゃい頃、バレエやってたんだよ。いい? ほら!
シーデレラ:アン・ドゥ・トロワ♪(的なバレエをやっている感じを)
シーデレラ:どう? ノラ、なかなかでしょ? バレリーナになるのが夢だったの。
ノラ:(わん)
ナレーション:シーデレラの可憐な踊りに、野良犬のノラも驚いた様子です。
ノラ:(わんわん)
シーデレラ:ああ、舞踏会で踊れたら、どんなに素敵でしょう・・・。
ナレーション:彼女の願いが、かなうときがくるとは、そのとき、シーデレラはまだ、知りませんでした。
オゼーキ:さあ、ニジーカ、出かけるわよ。
ニジーカ:っていうか、ママまで、ずいぶん着飾ってるけど、
オゼーキ:王子様主催の舞踏会っていうのはだねえ、要するに、あれなのよ、あれ。
ニジーカ:あれ?
オゼーキ:花嫁さがし。
ニジーカ:花嫁さがし?
オゼーキ:王子様が年頃になられたから、いよいよ王女選びをするってこと。
ニジーカ:王女? ええ、私が、王女に? っていうか、なんでママも?
オゼーキ:いいじゃない、あたしだって、わかんないわよ、あんがい。年上が好みかもしれないし。
ニジーカ:えええ?
オゼーキ:確率は高いほうがいいじゃない、ね? ニジーカが選ばれても、私が選ばれても、私たちは、お城の住人になれるってわけ、ね?
ニジーカ:なるほど~ママって、あったまいいね!
オゼーキ:さあ、いくわよ。早く、支度しなさい。
ニジーカ:はい!
オゼーキ:あ、シーデレラ、お留守番、よろしく。
シーデレラ:はい、お母様。
ナレーション:そうして、母オゼーキと、娘ニジーカは、まるで似合わない派手なドレスを着て、出て行ってしまいました。シーデレラが、二人が見えなくなるまで見送っていると、・・・
ノラ:(く~ん)
シーデレラ:どうしたの? ノラ、お腹すいたの?
シーデレラ:え? えええ?
ナレーション:野良犬のノラは、白い髭をたくわえた、おじいさんに姿を変えました。
ノラ:ふぉふぉふぉ、シーデレラ、こんにちは。
シーデレラ:ひえ! っていうか、おじいさん、誰?
ノラ:わしは、ノラじゃよ、野良犬のノラ。
シーデレラ:ええ? ノラって、そんな年取ってたの?
ノラ:ああ、あんたのおかげで、生きのびることができたんじゃあ、ありがとうなあ、いつも、ちょっとしかない自分の食べ物をわしに恵んでくれて・・・。
シーデレラ:ううん、私のほうこそ、いつもノラに助けてもらってた。ノラに話しかけるとね、さみしいこと、辛いことが、スッて消えてなくなったの。お礼を言うのは、私のほう。ありがとう、ノラ。
ノラ:わしもなあ、いつまで生きておれるか、わからん。いつか恩返ししたいと思っておったのじゃが、そのときが来たようじゃあ。
シーデレラ:え? 恩返し?
ノラ:えい!!
ナレーション:おじいさんになったノラが、右手を振り下ろすと、シーデレラの目の前に、美しいドレスと、ガラスの靴が現れました!
シーデレラ:わああ! なんて綺麗なんでしょう!
ノラ:これを身にまとい、舞踏会で踊ればいい。
シーデレラ:いいの? 行ってもいいの?
ノラ:いいとも、ぞんぶんに、踊っておいで。
シーデレラ:ありがとう!! ノラ!!
ノラ:いいかい、シーデレラ、どんなときも、諦めちゃ、ダメだ。幸せっていうのはね、自分でつかみとるもんだからねえ、ははははは、
ナレーション:舞踏会でシーデレラは、踊りました。くるくると回り、とびはね、華麗に宙を舞いました。
シーデレラ:ノラ、ごめんなさいね、ガラスの靴、とっても素敵なんだけど、思うように踊れないの。私ね、昔使っていたトゥシューズを大切に持っていて、それを履いて踊ってるわ。
ナレーション:その圧倒的な踊りは、舞踏会の誰をも魅了しました。
オゼーキ:まあ、なんだか目立ちたがり屋がいるものねえ、
ニジーカ:ママ、あの子、めっちゃシーデレラに似てるんですけど、
オゼーキ:ええ!? まさか。あの子が、あんなドレス、持ってるわけないわ。あんなにうまく踊れるわけないもの。
ニジーカ:そっか、そうだよね。
ナレーション:シーデレラの踊りを見て感動したのは、王子も同じでした。
王子:な、なんて素敵なダンスなんだ・・・。あれはもう、芸術だ! すごい、すごいぞ!
ナレーション:王子は、シーデレラのもとに、歩み寄ると・・・
王子:キミ、名前は?
シーデレラ:シーデレラ。
王子:シーデレラ、君のバレエは、すごいよ。
シーデレラ:ありがとうございます。
王子:ボクはねえ、常日頃から考えていたんだよ、国を豊かにするのは、文化や芸術だと。我が王国にバレエを根付かせるために、力を貸してくれないか?
シーデレラ:私にできることでしたら・・・。
ナレーション:こうして・・・シーデレラの住む家は、すっかり綺麗なバレエのレッスンスタジオになり、全国から生徒が集まってくるようになりました。
オゼーキ:先生、お水をどうぞ。
シーデレラ:はい、ありがとうございます、お母様。
ニジーカ:先生、王子様が、見学にいらっしゃるそうです。
シーデレラ:そうですか、お姉様。
ナレーション:すっかり心を入れ替えたオゼーキとニジーカは、バレエスタジオ運営のために、一生懸命働きました。
オゼーキ:新しいスタジオが必要だねえ、王子様に相談しなきゃねえ、
ニジーカ:っていうか、ママ、めっちゃお化粧してない? もしかしてまだ狙ってるの? 王子様。
オゼーキ:べ、別に・・・。いいじゃない。
シーデレラ:あれ以来・・・ノラには会っていない・・・。でも、あのときもらったガラスの靴は、大切にしまってある。私は、その靴を見るたびに、思い出す。ノラの言葉・・・。
(回想)
ノラ:いいかい、シーデレラ、どんなときも、諦めちゃ、ダメだ。幸せっていうのはね、自分でつかみとるもんだからねえ、ははははは、
