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2018年126日放送 午後1000分~NHK-FM

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番外編『がんばれ、レディちゃん!』

原案:土生瑞穂、小池美波、石森虹花

脚本:北阪昌人

★参考:ユウ、ゆきと

出演

土生瑞穂、小池美波、石森虹花、山寺宏一

あらすじ

欅坂スタジオでは、今まさにアニメ映画「がんばれ、レディちゃん!」の吹き替え収録が始まろうとしている。主役のレディちゃんという犬の声を演じるのは、声優経験ゼロの石森虹花。手も足も震えるほど緊張している石森と共演するのは、アニメの女王として知られる土生瑞穂。いよいよ、収録が始まるが、土生から何度もダメ出しをもらい収録を止めてしまう石森。屋上で一人落ち込む石森に小池監督が声をかける…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは、東京・欅坂にある、欅坂スタジオ。これからアニメ映画『がんばれ、レディちゃん!』の吹き替え収録が始まろうとしていました。主役のレディちゃんという犬の声を演じるのは、声優経験ゼロ、オーディションで大抜擢された、石森虹花です。


石森:ああ、あああ、緊張する・・・。や、やばい、手が、いや、足も、震えてきた。あ、廊下を歩いてくるのは、声優界のトップスター、アニメ界のレジェンド、山ちゃんだ!

石森:お、お、おはようございます!!

山ちゃん:おはようございます。あれ?・・・収録ですか?

石森:あ、はい。初めてなんですけど。

山ちゃん:ずいぶん、緊張してるみたいだねえ、無理もないか。まあ、気持ちを楽にねえ。

石森:あ、あの、

山ちゃん:はい?

石森:犬の鳴き声って、どんなふうにやればいいんでしょうか?

山ちゃん:えー犬? そうだなあ、まあ、ちっちゃい犬なら(鳴き声)中くらいだったら(鳴き声)、おっきいのは(鳴き声)、まぁ、怒っている犬は(鳴き声)気が弱い犬だったら(鳴き声)、強がってるけど、本当は気持ちが優しい犬は(鳴き声)、一見、可愛いんだけど、実は人見知りで、でも本当は誰よりも寂しがり屋で、ただ、そんな自分を変えたいともがきながら成長していこうとする犬は、(鳴き声)こんな感じかなあ。

石森:す、す、すごいです・・・。

山ちゃん:いやいやいや、慣れですよ、慣れ。あ、名前は?

石森:石森です。石森虹花。

山ちゃん:虹花さん、虹かあ・・・じゃあ、あれだね、いつか七色の声を使えるようになるねえ、あ、あのボク、こっちのスタジオなんで、じゃあ、頑張ってください!

石森:ありがとうございます!!

石森:やっぱり山ちゃんって・・・すごい! ああ、ダメ、感心ばかりしていては・・・。あ、向こうから来るのは! 声優界きっての美貌と才能をあわせもつアニメの女王、土生瑞穂さんだっ!

石森:あ、あの、土生さん、

土生:なに?

石森:あ、あの、私、今回、犬のレディちゃん役をやる、いしもり・・・

土生:どいて。

石森:え?

土生:そこ、どいて。私、急いでるの。

石森:あ、ああ、すみません。

小池:ああ、あなた、石森さん?

石森:あ、はい。

小池:今回の映画の監督、小池美波です。よろしく!

石森:はい! よろしくお願いします!

小池:あ、土生さん、

土生:はい。

小池:犬のレディちゃんの飼い主役、よろしくお願いします。

土生:大丈夫なんでしょうね。

小池:はい?

土生:こんなド素人がいきなりレディちゃん役で。

小池:大丈夫。きっとあなたたち、いいコンビになるわ。

土生:あ、そう。ならよかった。

石森:うわあ・・・怖っ! 土生さん、めっちゃ怖いんですけど・・・。だ、大丈夫かな・・・私。


ナレーション:さて、アニメ映画『がんばれ、レディちゃん!』の収録が、いよいよ始まりました。午前中に始まった収録も、数時間が過ぎていました。


小池:はい、では、犬のレディちゃんが、自分に自信が持てない飼い主のミカサを励ますシーン、行きます。ここは、前半の見せ場なんで、よろしく! よ~い、はい!

石森:ワンワン、ねえねえ、ミカサ、がんばるんだワン!君は、自分で思うより、ずっと素敵なんだから。

土生:なに? レディ、吠えてるだけで、わからない。

石森:だから、ねえ、ミカサ、がんばって、ダンス大会で優勝してよ。

土生:あ、監督、

小池:はい?

土生:ちょっと止めてもらっていいですか?

小池:どうしたの?

土生:これじゃ、気持ち、入りません。石森さん、あなたのせいで、私まで下手に聴こえちゃうのよ。

石森:す、すみません・・・。

小池:じゃあ、もう一回、行きます。テイク2、よ~い、はい!

石森:ワンワン、ねえねえ、ミカサ、がんばるんだワン! 君は、自分で思うより、ずっと素敵なんだから。

土生:なに? レディ、吠えてるだけで、わからない。

石森:だから、ねえ、ミカサ、がんばって、ダンス大会で優勝してよ。

土生:監督! ごめんなさい、ちょっと、やっぱりダメです、

石森:すみません・・・。

小池:う~ん、ちょっと休憩いれましょう。

石森:あああ、ダメだ・・・。私やっぱり、ダメだあ・・・。土生さんに完全に嫌われたぁ・・・。私は、自分が情けなくて・・・泣きそうだった。スタジオが入っているビルの屋上にあがった。

石森:冬の真っ青な空が、そこに拡がっている。風に吹かれていると、自分がとんでもなく場違いなところにいるような気持になった。

小池:石森さん・・・。

石森:あ、監督、

小池:はい、これ、飲んで、あったかいココア。

石森:あ、ありがとうございます。

小池:土生さん・・・怖いよね?

石森:い、いえ、私がダメだから。

小池:あなた、土生さんに嫌われた、とか思わなかった?

石森:それは・・・やっぱり私なんか、全然ダメだから嫌われて当然っていうか・・・。

小池:そういう考え方、やめたほうがいい。

石森:え?

小池:嫌いとか好きとか、私たち、そんな感情でやってるんじゃないの。

石森:ええ?

小池:いい作品をつくれるか、どうか、それだけ。土生さんってね、確かに、言葉はキツイけど、作品にいつも命かけてるの。ひとさまに観てもらうものをつくるって、並大抵のことじゃ、ダメなんだって、彼女はわかってる。大事なのは、彼女に好かれるとか、そういうことじゃない。あなたが、この作品にどれだけ心を込めているか、なんだよね。

石森:心を・・・込める。

小池:ひとはね、見抜くの。心がない作品は、すぐに、バレる。

石森:・・・はい。

石森:小池監督が去ったあと・・・。

石森:すらっと背の高い、とびきり綺麗な女性が私のほうにやってくる。土生さんだ。

土生:犬のレディちゃんって、なんでミカサのことを、そんなにまで応援するんだと思う?

石森:え? そ、それは・・・ミカサのことが好きだから。

土生:もちろん、それはそう。でもね、私は、思う。レディちゃんって、捨て犬だったでしょ?

石森:はい。

土生:この世にいらないって、捨てられた。その孤独を思ってみて。そんな絶望的な孤独から救ってくれたのが、ミカサなの。彼女のために何か役に立ちたい、それは、レディちゃんの、魂の叫び、違う?

石森:・・・はい。そうだと思います。

土生:ここにいるってことは、あなたはもうプロなの。キャリアなんか、関係ない。私と対等。いい? だから私も、手加減、しない。

石森:はい。

石森:土生さんは、去り際、私を振り向かず、こう言った。

土生:あなた・・・いい声、してるわ。自信、持ちなさい。

小池:じゃあ、収録、始めますよ! よ~い、はい!

石森:ワンワン、ねえねえ、ミカサ、がんばるんだワン! 君は、自分で思うより、ずっと素敵なんだから。

土生:なに? レディ、吠えてるだけで、わからない。

石森:だから、ねえ、ミカサ、がんばって、ダンス大会で優勝してよ。私、応援してるから、ミカサのこと、いつも、応援してるから!!

石森:私は、いつしか泣いていた。レディちゃんになって、泣いていた。

小池:はい、OK!

石森:そのとき、土生さんが・・・。

土生:今の、すごくよかったよ。

石森:私に微笑みかけてくれた・・・。

小池:その調子、いいよ、石森さん!

石森:収録が終わり、廊下を歩いていると、

山ちゃん:あ! 石森さん! おつかれさま!

石森:あ。おつかれさまです!

山ちゃん:・・いい収録だったんだね。

石森:え?

山ちゃん:すごくいい顔、してますよ。

石森:ありがとうございます!

山ちゃん:声優って、いい仕事ですよ。声ひとつで、いろんなひととつながることができる。

石森:はい! がんばります!

石森:山ちゃんの背中を見送り・・・私は、思った。もっともっと勉強して、自分に自信をつけたい! 私は、胸を張って、出口に向かった。

収録後のワンショット

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