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2017年421日放送 午後1000分~NHK-FM

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『漫画家・ヲタナミン』

原案:田名部生来、福岡聖菜、佐々木優佳里、村山彩希、馬嘉伶

脚本:北阪昌人

出演

田名部生来、福岡聖菜、佐々木優佳里、村山彩希、馬嘉伶、山寺宏一

あらすじ

秋葉原にあるAKB女子学園・B組の教室。ここでは流行中の漫画『イグアナ王子とツバメ姫』、通称、『イグヒメ』の話題で持ち切りとなっていた。この漫画を描いているのは、『ヲタナミン』という謎の漫画家。いったいどんな人が描いているのか、そのミステリアスな存在で盛り上がる生徒たちだが、それを聞いている田名部生来は、ある一言が言えなくて…。

人物相関図

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物語が読める ♪


ナレーション:ここは、秋葉原にあるAKB女子学園・B組の教室です。担任の先生が、なにやら、怒っています。


担任:おい、そこ!福岡!

福岡:はい。

担任:今、何、読んでた?

福岡:いえ

担任:今は英語の授業中だ!なに読んでた?出しなさい。机の上に出しなさい!

福岡:・・・はい。すみません、

担任:また、ヲタナミンの漫画か・・・。まったくもう、こんなののどこが面白いんだっ! このところ、みんなこの漫画にはまって、ったくもう授業に集中できな・・・(と数ページ読んで)ん?ん??なんじゃ、こりゃ、ん?お、お、面白い!

福岡:ですよね?めっちゃ面白いんですよ!ヲタナミン!なんていうか、妄想炸裂(もうそうさくれつ)!って感じで! イグアナに姿を変えられた王子が、ヒロイン・近江(おうみ)ツバメを助けるんですけど、

担任:うんうん、いいね、いいね、

福岡:って先生、返してくださいよ、

担任:え?いやいや、これは、あれだ、没収だ。放課後、職員室にとりに来なさい。うんうん、面白いね、いいね・・・おっ、そっか、そうくるか・・・。

福岡:ああ、先生にとられちゃった。ね、生来、ヲタナミンの漫画が載ってる今週号、持ってる?

田名部:ん?あ、ああ、私、漫画読まないから。

福岡:ああ、そっか。そうだったね。生来も読めば、はまるのにな。めっちゃいいんだよ、ヲタナミン、面白いだけじゃないの、せつなくて、泣けるの。こんな漫画、いったいどんなひとが描いてるんだろ。ヲタナミンって謎のひと、なんだよね、年齢も、男なのか、女なのかもわからない。ミステリアス! なんだよね。ああ、隠されると知りたくなるよね。ねえ生来、ヲタナミンって、どんなひとなのかなあ!

田名部:私はあるひとことが言えなくて目を伏せる。ごめんね、聖菜。実はね、ヲタナミンは、私、田名部生来、なんだよ。


ナレーション:ある漫画が、流行っていました。『イグアナ王子とツバメ姫』、通称、イグヒメ。これを描いているのは、ヲタナミンという謎の漫画家。秋葉原にあるAKB女子学園でも、この話題で持ち切りです。


村山:やばいよね、今週号の『イグヒメ』! まさか、あそこで、近江牛のすき焼きを食べて変身するとは思わなかった

佐々木:ヲタナミンの頭の中が見てみたいよね、妄想力、ハンパない!

馬:台湾でもすっごく人気!おったまげ!


ナレーション:彼女たちは、知りませんでした。漫画家・ヲタナミンが、実はクラスメートの田名部生来だということを・・・。


担任:いいか、福岡、もう授業中に読むんじゃないぞ。

福岡:はい。

担任:で、福岡、

福岡:はい、先生。

担任:あれかな、その、福岡は全巻そろってるのか、『イグヒメ』。

福岡:ええ、まあ。

担任:そっか・・・まあ、あれだなあ、担任としてはだなあ、あの、生徒がどんなものに夢中になっているか、ねぇ、調べる、なっていうかな、そう、義務があるんだ、義務だ、そうだ。だからだな、その、明日、一巻から全部、持ってきてくれ、今まで出てるやつを、全部。な? いいな?


ナレーション:夕陽が射しこんだ放課後の教室は、オレンジ色に輝いていました。ひとり、窓辺にたたずんで校庭を見ているのは、ヲタナミンであることを隠している、田名部生来。


田名部:私、田名部生来は、思っていた。なるべく、目立ってはいけない。今まで、目立っていいことなんかなかった。ひとと違う自分が嫌だった。なるべく、みんなと一緒にいること、みんなと同じことをする、それがこの世の中を生きる秘訣(ひけつ)、そう思っていた。

福岡:ごめんね、生来、お待たせ。

佐々木:ああ、まだいたんだね、

村山:一緒に帰ろうよ、

馬:おったまげ!


ナレーション:職員室に呼ばれていた福岡聖菜と、クラスメートの、佐々木、村山、馬も、教室に帰ってきました。


佐々木:聖菜、取り戻した?『イグヒメ』。

福岡:ああ、なんとか。

村山:無理もないね、あの漫画は超やばいからね。

馬:やばいよ、やばいよ。

田名部:たかが漫画なのに、どうしてみんな熱くなれるの?

一同:え?

福岡:そうね、確かに、たかが漫画、なのかもしれない。でもね、違うのよ、生来。

田名部:何が?

福岡:私ね・・・その、正直に言うと、トランペットが吹けるんだよね、

田名部:え? そうなの?

福岡:誰にも言ってなかったけど。なぜかっていうと、やっぱりほら、空気読まないと、自分だけが目立ってもねえ、いろいろまわりがザワザワするし。でもね、ヲタナミンの漫画に出てくる登場人物はね、みんな、隠さないの。全部、さらけ出してぶつかりあって、生きてるの。いいなあ、そういうのいいなあって思うんだよね。

佐々木:わかる!漫画って、自分じゃできないことを見せてくれる、だから、私も頑張ろうって、思えるんだよね。

田名部:そんなの、ただ、逃げてるだけじゃないの?

村山:・・・そうね、そうかもしれない。でも、逃げてもいいんじゃないかな、現実が厳しすぎれば、どこへでも逃げていいんじゃないかな。

田名部:そうかな・・・。

福岡:ヲタナミンって、きっとすっごく強いひと、なんだね。

田名部:そんなこと、ないよ。

一同:え?

田名部:あ、いや、そんなことないんじゃないかな。そのひとも、きっと描くことで、逃げるんじゃないのかな。

福岡:そうかな。あのね、みんな、

一同:なに?

福岡:私、またトランペットの教室、通うことにしたの。

田名部:そうなんだ。

佐々木:へえ、いいね。

村山:いいと思うよ。

馬:おったまげ!

福岡:で、吹奏楽部に入ろうかなって、思ってる

田名部:いいね、それはとってもいいことだって思う。

福岡:ありがとう。こんなふうに背中を押してくれたのはね、ヲタナミンなの。『イグヒメ』の中でね、ヒロインのツバメってほんとは吹き矢が得意なんだけど、最初はそのこと黙ってるの。まわりに引かれる、と思って。でも、イグアナ王子を救うために、

佐々木:あああ、私の大好きなシーン!

村山:間違えて、イグアナに当たっちゃうんだよね。

馬:おったまげ!

福岡:好きにやればいいんだっていうメッセージを感じたんだよね。

佐々木:実はね、私も『イグヒメ』に背中を押されて、全日本高校書道大会に出ることにした。私、習字を習ってきて、実は、今、6段なんだよね。

村山:私も、ヲタナミンさんに感謝したい。タップダンスの練習、始めたんだよね。

馬:私も、日本語の勉強、がんばる!『イグヒメ』のおかげで!

田名部:そう、なんだね。

福岡:みんな、ヲタナミンのおかげなの。ちょっと大げさだけど、私、トランペットを吹いているとき、ああ、生まれて来てよかった! って思えたの。

田名部:生まれて来て、よかった・・・。

福岡:ありがとう、生来!

一同:ありがとう、生来!

田名部:え?な、なに? どうして、私に?

福岡:ここにいる、優佳里、彩希、マチャリンは、知ってるの。

田名部:え?

福岡:あなたが、ヲタナミンだってこと。

田名部:えええ? なんで?

佐々木:ごめん、掃除当番のときにね、生来のかばん、落としちゃって、

村山:中から、その、下書きが、出てきて・・・『イグヒメ』の。

馬:おったまげ!

福岡:みんなでどうしようって話したんだけど・・・。ごめん、なかなか知ってること言えなくて。

佐々木:でも、誇らしかった。友達があのヲタナミンだって知って、めっちゃうれしかった。

村山:私も、みんなに言いふらしたいって思った。でも、聖菜が、

福岡:隠してる生来の気持ち、考えてあげたいって思ったの。

田名部:・・・みんな・・・。

福岡:生来が、黙っててほしいなら、私らだけの秘密にする。でもね、私、生来の名前、大好き。『生』まれて『来』ると書いて、みく。生まれて来てくれて、よかった! 確か、病弱だったお母さんが、あなたを生んだとき、そう名付けたんだよね?

田名部:聖菜・・・。

福岡:今度の作品は、本名で描いて。田名部、生来!

田名部:・・・ありがとう・・・。

佐々木:ありがとうは、こっちのセリフ。

村山:素敵な漫画を、

馬:ありがとう!

田名部(M):おそらく私は、この夕暮れの景色を一生、忘れないだろう。そうだよね、みんな、私は、このままでいいんだよね。私・・・生まれて来て、よかった!

収録後のワンショット

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