考える、子どもたちの"いま"

1989年11月20日。
子どもの生きる権利や守られる権利を定めた「子どもの権利条約」が、国連総会で採択されました。
しかし、虐待や貧困など、解決していない課題も多くあります。
「子どもの権利」をテーマに、栃木県内の子どもたちの“いま”を見つめます。

記者企画リポート18.11.29更新

正しい性教育を 保健師の取り組み〈11月29日:杉浦 雅尚記者(小山支局)〉

思春期の子どもたちが性について正しく学ぶことは、彼らにとっても、社会にとっても大切です。
小山市に、こうした活動に取り組んできた保健師の女性がいます。


小山市の保健師、櫻井和代さんは、長年、子育て支援や児童虐待防止に取り組んできました。
その活動が評価され、今回、出産や子育てを支援する活動で功績のあった人に贈られる「母子保健奨励賞」を受賞しました。
「母子保健奨励賞」は、東京の財団が毎年、表彰を行っていて、ことしは全国の保健師や助産師など15人が選ばれています。

「保健師の地道な活動を今回評価していただけたというのは個人的にも、小山市の保健師としてもたいへんありがたい」(櫻井さん)

櫻井和代さん

櫻井和代さん。

現在は、市の保健師のリーダーとして若手の育成などに当たっている櫻井さん。
取り組んできたひとつが、思春期の子どもたちのための性教育の講座です。
櫻井さんたち保健師が学校を回って性行為による影響やリスクを教えています。
狙いは性に関する正しい知識を学んでもらい、性感染症や望まない妊娠を防ぐことです。
4年前からは、市内の各中学校で行っています。

保健講座(1)

市内の中学校で行われた講座。性感染症や妊娠の仕組み、胎児の成長過程などを学ぶ。

櫻井さんが講座に取り入れているのが、交際相手からの身体的、精神的な暴力、いわゆる「デートDV」です。教員に協力してもらってロールプレイを見せて、相手との関係について考えさせます。

保健講座(2)

「デートDV」のロールプレイの1場面。つきあっている男女を教員が演じる。

「ごめんね、待たせたね」
「おせーよ、待たすなよ!」
「たかしと2人で買い出し行くんじゃねぇ、そんな部活やめろよ!」


このあと生徒たちに、お互いを思いやるコミュニケーションが大事だと伝えました。
「怖いかもしれませんが、自分が嫌なことをNOと言える勇気を持ってください。それは 自分が疲れないために。人と長くいい関係でいるために」(講座より)

最後は、「母親からの手紙」と題した生徒たちへのメッセージです。
いまの自分、そして将来の自分を大切にしてほしいと伝えました。

保健講座(3)

「母親からの手紙」を読み上げる保健師・櫻井さん。

「そしてわすれないでください。本当に助けがほしいときは、私たちは必ずあなたを助けます」
「どんなときもあなたの一番の味方です、大好きなあなたへ、生まれてきてくれてありがとう」


櫻井さんが読み上げるメッセージに、生徒たちは真剣な表情で聞き入っていました。

「自分のことを大切に思う気持ちって大切だなと思いました。きょう学んだこととかを少しでも覚えておいて生かせるようにしたいなと思います」(女子生徒)
「NOというのは、自分を守る以外にも、相手のことを守るということでもあり、NOということばは大切だと思いました」(男子生徒)

櫻井さんは、こうした活動によって性の正しい理解はもちろん、子どもたちが自分自身を見つめ直すきっかけになればと考えています。

保健講座(4)

講座の中で、赤ちゃんとのふれあい方を生徒に教える櫻井さん。

「まずは自分たちが本当に大切にされて、これだけ大きくなったことを実感してもらい、 命をつないでいくということ、そして必要な知識をもって、相手と自分を大切にするということを、ぜひ考えてもらえるといいと思っています」(櫻井さん)

櫻井さんはこうした思春期の子どもたちの教育に加え、最近では産後うつ対策に力を入れています。この秋からは、育児に不安を感じている産後4か月未満の乳児の母親などを対象に、助産師が、自宅を訪問するなどして、育児のアドバイスや授乳指導などのケアを行う事業をあらたに始めているということです。

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