考える、子どもたちの"いま"

1989年11月20日。
子どもの生きる権利や守られる権利を定めた「子どもの権利条約」が、国連総会で採択されました。
しかし、虐待や貧困など、解決していない課題も多くあります。
「子どもの権利」をテーマに、栃木県内の子どもたちの“いま”を見つめます。

コラム18.11.14更新

「子どもの権利」って何だろう〈11月1日:田中 絵里記者〉

この記事ではまず、「子どもの権利条約」と子どもたちの権利について考えます。
「子どもの権利条約」は、1989年の11月に国連総会で採択された、子どもの生きる権利や守られる権利を定めたもので、200近い国や地域が批准・加入しています。

これに合わせて、毎年11月に全国で開かれている「子どもの権利条約フォーラム」が、今回、初めて栃木県内で開かれ、子どもの虐待や貧困問題などに取り組む人たちおよそ150人が集まって解決策を探りました。
詳しくはニュース「『子どもの権利条約フォーラム』始まる」をご覧ください。

この「子どもの権利条約」に定められた子どもの権利はどのようなものかというと、

・命を奪われない、生きる権利。
・教育を受けられ、遊びや学びを通して自分らしく育つ権利。
・暴力や搾取などから守られる権利。
・自由に自分の意見を言ったり活動したりできる、参加する権利。

こういった内容が、54条にわたり記載されています。

こうした権利は、文字で見れば「守られて当然」というように見えますが、課題は多くあります。調査結果から県内の現状を見てみます。

まず、児童虐待です。県内の自治体や児童相談所が対応した児童虐待の件数は、過去10年分を振り返ると、おおむね増加傾向にあります。
詳しくはニュース「栃木県内の児童虐待対応件数 初めて2000件に」をご覧ください。

また、学び、教育という観点で、県内の小中学校の不登校の子どもの数を紹介します。
この10年で最も多くなりました。不登校になる理由はいじめや友人とのトラブル、学業の不振、家庭環境など、さまざまなものが挙げられています。
詳しくはニュース「栃木県内の不登校の子ども 過去10年で最多」をご覧ください。

それから、県内の小中学校に通う外国人の児童生徒の数も増加しています。
特に小学生は、ここ数年は右肩上がりで増えています。
文部科学省による別の調査では、外国人児童のおよそ半数程度が、日本語での日常会話や授業への参加が難しく、指導が必要だという結果も出ています。
こうした子どもたちの学びをどう支援するか、考えていく必要があります。
詳しくはニュース「県内の外国籍の児童 過去10年で最多」をご覧ください。

このほかにも家庭の貧困などさまざまな問題や課題があり、子どもたちの権利が十分守られていないケースが出ています。
こうした社会の状況の中で、わたしたちは何をすればいいのか。
解決に向けて、自治体も支援に力を入れていますし、民間の動きも広がっています。

例えば、経済的に厳しい家庭など、ひとりで食事をする子どもたちに格安で食事を提供する「子ども食堂」があります。
開設を支援する団体によると、県内の子ども食堂はことし4月の時点で40を超え、徐々に増えているということです。

また子どもたちが学ぶ場も多様化が進んでいます。
学校以外の居場所として、NPOなどにより各地でフリースクールなどが運営されています。
2年前には「教育機会確保法」が成立し、自治体とフリースクールなど民間の施設との連携の強化が盛り込まれました。学校以外の「学ぶ場」の重要性が注目されています。

この記事で紹介した課題や解決策は、どれも1人、あるいはひとつの機関で取り組むのは難しいものばかりです。
しかし、冒頭で紹介した『子どもの権利条約フォーラム』の実行委員長を務める、立正大学の大竹智教授によると、フォーラムに参加した人たちからは『子どもの権利条約はほとんど知られていない』という声が上がって いるということで、「おとな1人1人がこうした課題に関心を持っていくことが大切だ」と話していました。

子どもたちはいまどんな状況下にいて、何を感じ、どうしたいと思っているのか。
私たちはいま一度、周りの子どもたちの様子を見つめ直す必要があると思います。
今回、子どもの権利条約や児童虐待防止推進月間に合わせてこの企画を立ち上げましたが、子どもを取り巻く社会の状況について、私たちは定期的に伝えていかなくてはいけないと感じました。

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