あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑

no.273 港湾通信士

インタビュー
インタビュー
「声で船を導きます」 港を出入りする船や、港湾関係者に向けて、
24時間必要な情報を提供するポートラジオ局。

ここで、港を利用するあらゆる船が安全に出入港できるよう、無線で連絡するのが「港湾通信士」の仕事です。
本州と九州を隔てる関門海峡。複雑に入り組む地形の中に港が点在しています。その一角にあるポートラジオ局で働く菊永恵美(きくなが・めぐみ)さん(21歳)は、港湾通信士1年目。1日約40隻の船と通信を行っています。大半が外国船のため、会話は英語が基本。悪戦苦闘する毎日です。
 船は天候などによってスケジュールが乱れやすく、港湾関係者にとっては、気象状況や同時刻での他船の情報、停泊する位置など、港湾通信士からの情報が欠かせません。また、情報がうまく伝わらないと各業者に大きな損害を与え、船舶事故にもつながりかねないため、責任は重大です。仕事を始めて1年が経ち、やりがいを感じ始めた菊永さんですが、語学のつたなさもあり、不本意な通信に終わってしまうこともしばしば。菊永さんの現場に密着し、港内を仕切る難しさや通信による情報の大切さなど、知られざる港湾通信士の仕事を紹介します。

船が着岸すればホッと一息!安全安心な出入港のため、必要な情報を無線で発信します!

■港湾通信士 とは? ■港湾通信士 になるには?■ 収入・待遇は? ■ 仕事の味

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◇港湾通信士 とは?  全国の主要な港に置かれているポートラジオ局。港へ出入りする船と通信を行い、船に必要な情報を提供しています。そのポートラジオ局で船を相手に通信するのが港湾通信士です。

 港湾通信士の仕事は大きく2つ。まずは船の安全な出入港のための情報提供です。大型船が行き交う港では、船は近くにいる他の船がこれからどこをどう動いていくのかすべて把握しているわけではありません。そこでポートラジオ局では、船の位置やスピードなどが分かる機械などを使って、港を利用する各船の動きを把握。周辺にいる船の情報を伝えることで、船は安心して港を出入りできるのです。

 そして2つ目の役割が、港で船を待ち受ける関係業者への情報連絡です。大型の商業船が港に入る際には多くの人が関わっています。例えば港を熟知した水先案内人、船の離着岸をサポートするタグボート、船が岸壁に着いた後に荷物の積み下ろしを行う荷役業者など。港湾通信士はそれらの人たちに「船がいつ港にやってくるか」という情報を事前に無線通信でキャッチして連絡。港湾での作業を円滑に行えるようにします。港で仕事をする人たちにとっては中核をなす仕事なのです。 ◇全国の状況・今の状況  ポートラジオ局は全国の主要な港に31局。そこでおよそ230人の港湾通信士が働いています。女性も数多く、菊永さんの事務所でも通信を担当する4割が女性です。 ◇どんな人が向いているの?  出入港する船や港湾関係者など、港全体を把握する港湾通信士。多方面に気を配らなければなりません。また複数の船が入り乱れる時間などは、船がこれからどんな動きをするか先読みして、早めに情報を提供していきます。視野が広く、相手のことを気遣える細やかな性格の人が向いているでしょう。

 また、通信相手の多くが外国船のため、基本的な英語は必須。その土地を知らない人たちに丁寧に正確に、港の状況を伝えていくことは根気がいる作業です。船の安全のため、確実に船との意思疎通ができるまで相手と向き合う姿勢が必要です。

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■港湾通信士 になるには? ■港湾通信士 とは?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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◇どうすれば港湾通信士 に?  ポートラジオ局で港湾通信士として働くのに、特別な大学などを出る必要はありません。
 ポートラジオ局の業務を請け負っている会社に入社するのが一般的です。船との通信をする資格として、第3級海上無線通信士の資格が必要になります。 菊永さんのように学生時代に勉強して取得する人のほか、入社後、無線の基礎を身につけて取得する人も多いようです。 ◇ステップアップの道すじ  どんな状況にも対応できる通信をするためには、情報を右から左に流すだけではなく、船の立場を考えて先読みしていくことが必要です。そのため船の特性を知ること、港の規則を知ること、天候が船に及ぼす影響を知ること、など船に関する知識をつけていくことが求められます。 

 また、船の世界には特有の英語表現なども多くあります。英語を母国語としない外国船とのやりとりでは、はっきりと簡潔に情報を伝えなければなりません。菊永さんの場合も入社当時から英語が得意だったわけではなく、入社後、通信の基本となる英語表現を身につけました。しかし、ちょっとしたトラブルなど予期せぬ事態に遭遇すると言い回しが分からず、ペアを組む先輩に助けを求めることもあります。

 船との通信は劇的に上達するものではなく、日々の経験によるもの。いろいろな気象条件でいろいろなタイプの船との通信を体験することで、自分の引き出しを増やしていくものだそうです。

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■ 収入・待遇は? ■港湾通信士 とは?■港湾通信士 になるには?■ 仕事の味

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◇収入  菊永さんの会社の場合は、卒業する学校によって初任給が変わります。菊永さんのように専門学校卒であれば17万円です。
 それに加えて、夜勤が多い仕事のため、当直の手当がつきます。 ◇港湾通信士 のある一日

◆ 菊永さんの一日(夜勤)
ある一日

◇生活サイクルと休日  24時間365日港を見守るポートラジオ局は、夜勤を含む当直勤務があります。昼の勤務と夜の勤務が混ざるため、仕事の時間帯は日によって変わります。夜勤の場合は、午後出社して、翌朝までが勤務のため、昼と夜が逆転することもしばしばです。
 土日が必ず休日というわけではありません。だいたい月8〜9日が休日です。シフトを組んでいる他の人との兼ね合いで休日が決まります。

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■ 仕事の味 ■港湾通信士 とは?■港湾通信士 になるには?■ 収入・待遇は?

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◇おいしさ  通信した船の情報を港で働く人に伝える港湾通信士。自分の情報ひとつで多くの人が動いている責任感と共に、船の安心な入港を支えているやりがいを感じる仕事です。また、オフィスにいながらたくさんの外国船ともやりとりできる国際的な一面もあります。 ◇苦さ  自分のミスが船や関係業者の大きな損害を招くこと、最悪の場合は事故にもつながりかねないというプレッシャーは常にあります。また夜勤が多く、勤務時間も長いのが特徴です。しかし、菊永さんたちは安全な港運営の中核を担っているという誇りを持って仕事に取り組んでいます。

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NHK日本放送協会