あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑

no.215 産業動物獣医師

インタビュー
インタビュー
「牛と農家のパートナー」 “産業動物”と呼ばれる牛や豚などの家畜たちを
診療する獣医師、“産業動物獣医師”。

熊本県の動物病院に勤める堤 千佐子さん(27歳)は、牛専門の獣医師として働き始めて3年目。ひとりで診療車を100km近く走らせて往診し、朝から晩まで農家から引っ張りだこの毎日です。病気の治療だけでなく、人工受精や出産の手助けなどさまざまな仕事を行います。
堤さんにとって夏の終わりは特に忙しい時期。季節の変わり目で体調を崩す牛が増える中、点滴や注射の治療に追われます。更に、3年目の今年は、手術への挑戦も待っています。
忙しい毎日を全力で駆け抜けながらステップアップを図る、獣医師 堤千佐子さんの仕事に迫ります。

農家と牛を守るため、いつでもどこでも駆けつけます。元気になった牛が餌を食べる瞬間が、最高の喜び。

■産業動物獣医師とは? ■産業動物獣医師になるには?■ 収入・待遇は? ■ 仕事の味

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◇産業動物獣医師とは?  犬や猫などのペットではなく、牛や豚などの家畜たちを主に診療するのが「産業動物獣医師」です。農家のSOSを受けたら診療車に乗って駆けつけ、その場で手早く治療を行います。
 こうした仕事は、動物の命を助けるだけではなく、農家の経営を守ることや、食の生産を支えることにもつながっており、なくてはならない職業です。 ◇全国の状況・今の状況  獣医師は、全国におよそ35,000人。そのうち、産業動物獣医師として働く人は、およそ4,500人います。(20年12月末現在)
 最近は、犬や猫などのペットの獣医師を目指す学生が多い一方で、産業動物獣医師は人手不足の状態が続いています。
 1人でも多くの産業動物獣医師を育てるため、産業動物獣医師を志望する学生に対して奨学金を出す制度を設けている農業共済団体などもあります。 ◇どんな人が向いているの?  まず1番に、動物が好きであることは不可欠です。産業動物獣医師の仕事は、動物になめられたり蹴られたりすることも多く、糞尿をかけられることだって珍しくありません。動物への愛情、仕事への信念がなければ難しいでしょう。

 更に、人と話すのが好きなことが大切です。仕事は基本的に往診です。農家のお宅を訪ねて症状を正確に聞き取り、診療後には世間話をしながら仲良くなることが大切です。人とのコミュニケーションが得意な人が向いていると言えます。

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■産業動物獣医師になるには? ■産業動物獣医師とは?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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◇どうすれば産業動物獣医師に?  産業動物獣医師として働くためには、ペットの獣医師と同じ「獣医師」の免許が必要です。
 免許を取るためには、まず、全国に16ある獣医学部・学科のある大学で6年間学びます。そして、獣医師の国家試験に合格する必要があります。 ◇ステップアップの道すじ  堤さんの場合、最初の3ヶ月間は先輩獣医師の往診についていき、見学しながら勉強を重ねました。その後、自分の診療車を与えられて独り立ちしました。
 2〜3年目になると、手術などもこなせるようになることが求められます。先輩の技術を見学したり学会や勉強会で学んだりしながら、知識を磨きます。

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■ 収入・待遇は? ■産業動物獣医師とは?■産業動物獣医師になるには?■ 仕事の味

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◇収入のめやす  勤め先によってさまざまです。動物病院、農業協同組合、農業共済団体など、働く場所によって大きく異なります。
 堤さんの病院の場合、初任給はおよそ25万円です。 ◇産業動物獣医師のある一日

堤さんの一日
ある一日

◇生活サイクルと休日  堤さんは、平日は朝8:30〜19:00頃まで勤務し、土曜日は午前中のみ勤務しています。日曜日は休みです。
 ただし、動物の命に関わる仕事のため、急患の場合は休みの日や遅い時間帯でも出てこなければならないことがあります。

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■ 仕事の味 ■産業動物獣医師とは?■産業動物獣医師になるには?■ 収入・待遇は?

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◇おいしさ  もうだめかもしれない・・・と思われていた牛を元気にできたときは、動物の命を救えるだけでなく、農家の経営にも大きく貢献することができます。「先生に来てもらえてよかった!」と言われることがいちばんの喜びです。
 また、毎日往診していると農家の方達と家族のように仲良くなれます。お米や野菜などの心のこもった差し入れをもらうと、疲れも吹き飛ぶそうです。 ◇苦さ  家畜はペットとは違い、農家の経営と深く関わっています。牛乳を出せなくなったり子牛を産むことができなくなったりしたときには、処分をしなければいけません。
 堤さんは就職したばかりの頃は、厳しい現実を直視するのが辛いこともありました。しかし今は「動物の命を無駄にしないために、少しでも腕を磨いてしっかり治療しよう」いう信念を持って仕事をしています。

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NHK日本放送協会