あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑

no.145 漁船乗組員

インタビュー
インタビュー
「海の男になる!」 世界一魚を食べると言われる日本人、
その食を支えるのが漁船乗組員です。

全国の漁船乗組員の数は22万人。その数は減少傾向にあります。高齢化、早朝の重労働、海外輸入品との価格競争など・・漁業生産力の低下が心配されています。
今回紹介するのはそんな厳しい世界に飛び込んだ19歳の若者、山崎大輔さん。高校時代の漁業体験での豪快な水揚げと気さくな漁師達の人柄が忘れられず、農家を営む両親を説得し、この道を選んだのです。
山崎さんが働くのは、ブリで有名な富山県氷見。定置網漁を行っています。もうすぐ2年目になる山崎さんは、番組の取材中、若手漁師の登竜門である小型船の船漕ぎに挑戦・・・しかし、これがなかなかうまくいきません。
海の厳しさを実感しながら、一人前の漁師を目指して奮闘する若者の姿に迫ります。

大漁。その瞬間のために海と戦う漁船乗組員。この広い海に限りない可能性を求めて、今日も男たちは海を駆ける。

■漁船乗組員とは? ■漁船乗組員になるには?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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◇漁船乗組員とは?  一言で言えば船に乗って魚を捕まえる仕事ですが、世界中の海で大きな網を流したり、沿岸に定置網を仕掛けたりと様々な形があります。その種類は大きく2つに分かれます。

I: 沿岸漁業
 陸から比較的近い、日帰りできる程度の沿岸部で行われる小規模な漁業を言います。
日本の漁師の85%が従事していると言われ、獲れる魚の種類が多く、漁法や仕事内容も多種多様です。規模も漁船に乗って数十人で行う会社経営から、釣り漁や海士漁など夫婦や家族だけで行う個人経営まで幅広いのが特徴です。
今回の舞台である氷見では、富山湾を漁場とした定置網漁が行われています。
網を海中に常設し、入り込んだ魚を引き揚げる漁法です。毎日長さ数キロもの網を数十人で揚げていきます。獲れる魚の種類は、なんと400種類。ブリやマグロなどの大型回遊魚から、ホタルイカなどの珍しい魚まで獲れます。
また漁ではなく、陸に戻ると網の修繕作業も行います。数キロの網に傷がないか全員で確認していき、破れた箇所があればすぐに糸で縫い合わせます。一箇所でも破れていれば、網を引き揚げる際に魚が逃げてしまうんだそうです。
こうした地道な作業があって初めて、毎日無事に魚が獲れるんですね。
II: 沖合・遠洋漁業
 中・大型船の乗組員として働きます。
沖合なら、1日〜1週間にわたり漁に出かけます。遠洋の場合には、世界中の海が対象となり、外国人の乗組員も多く、航海は1年にのぼることもあります。また狙う魚も、カツオ、マグロ、イカなどの採算に見合う魚に限られます。多くの乗組員で長いスパンで漁をする点が、沿岸漁業との大きな違いです。
◇全国の状況・今の状況  魚大国ニッポン。しかし近年、その食を支える漁業の先行きが危ぶまれています。
 平成18年度の国内漁業就業者数は、22万人とこの20年で半分に減少し、近年は高齢化が進んでいます。男子就業者では65歳以上が約35%であるのに対し、25歳未満の若年就業者はわずか3%。また国内の漁獲量も20年でおよそ半分に落ち込んでいます。

 こうした中、将来の漁業を担う若者を増やすため、水産庁では6年前から就業対策を行っています。漁業就業に関する相談だけでなく、ホームページなどによる求人情報や周辺地域などの情報(その土地の空き家・学校・病院情報など生活環境に関する情報など)を提供しているほか、都市圏を中心に漁業就業支援フェアを開催しています。また、各都府県には地域漁業就業者確保育成センターが設置されており、地域の特性に応じた就業に関するサポートを行っています。 ◇どんな人が向いているの?  まず何より「魚好き」であることが求められます。「食べるのが好き」「釣るのが好き」…そういう人であれば楽しめる仕事じゃないでしょうか。
 海が舞台なので天候や季節によっては厳しい環境の中で働かなければなりません。下積み時代は力仕事も多いので、体力や根気が必要になってきます。

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■漁船乗組員になるには? ■漁船乗組員とは?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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◇ どうすれば漁船乗組員に?  まず自分が「どの地域で漁業をやりたいのか」「どんな漁業をしたいのか」「どんな魚をとりたいのか」といったことを整理することが必要です。
 希望地域と漁法を絞り、地元の漁協や自治体、漁業就業者確保育成センターに問い合わせて採用してくれそうな会社を探しましょう。
 そして、じかに船頭(経営者)にアタック、応募して選考を受けます。学歴や資格は問いません。沿岸漁業の場合、その地域に居住する必要があるため、その土地を愛していけるような意欲的な若者が採用されやすいそうです。
 採用は定期的にあるわけではなく、欠員が出た場合や漁の規模を拡大するときなどに限られます。 ◇ ステップアップの道すじ ステップアップの方法は大きく二つに分かれます。

(1) 所属している会社で、キャリアアップ
 所属している会社で漁業技術を身につけてキャリアアップを目指します。知識や技能は、先輩の指導を受けながら習得していきます。また船舶免許や漁業無線など各種資格を所得すれば、船の運転なども任されるようになります。
大輔くんの会社の場合、船頭になると給与は一般船員のおよそ2倍。しかし船頭になるには、技術だけでなく、周囲の人望を得ることも必要です。
(2) 独立を目指す
 自分で船を持って、独立を目指します。
独立したい場合は、漁業協同組合の組合員になり、漁業権を取得しなければなりません。組合員になるには、「年間90〜120日以上漁業を行った実績」や「その土地に定住して漁業を続ける意志がある」など条件がありますが、地域によって異なることもあります。
組合員になったら、船を買うために資金調達をします。小さな船でも数百万が必要です。独立後は経営者として加工、販売など仕事の幅を広げていけるチャンスが生まれます。


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■ 収入・待遇は? ■漁船乗組員とは?■漁船乗組員になるには?■ 仕事の味

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◇収入のめやす  会社の規模や漁の形態によって様々。
 大輔くんの会社の場合、初任給は20万円、水揚げが多ければ、さらに毎月歩合給も出ます。 ◇漁船乗組員のある一日

大輔くんの一日(11月)

ある一日

◇生活サイクルと休日  氷見の定置網漁では、季節ごとに様々な魚が網にかかるため年間を通して漁が行われます。最盛期はブリが揚がる11月〜3月。地域によっては休漁期がある場合もあります。
 休日は市場の休日と同じ(日曜、祝日、臨時休市)、シケなどで天候が荒れた場合は休漁になることもあります。
 出勤が早いため、就寝は夕方6時〜夜8時、その分昼前には仕事が終わるため、日中は遊びに出かけることも多いようです。

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■ 仕事の味 ■漁船乗組員とは?■漁船乗組員になるには?■ 収入・待遇は?

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◇おいしさ  季節を通していろんな魚に出会えるのが「おいしさ」だと言います。「何が獲れるか分からない」というワクワク感。ブリやマグロなどの高級魚を数多く揚げることができれば、一獲千金も夢ではありません。こういった魚たちが網に入ると、目の色を変える漁師も少なくないとか。
 とれたて新鮮の魚をどこよりも早く味わえるという楽しみもあります。 ◇苦さ  機械化が進んだとはいえ、早朝の力仕事が一番堪えるそうです。特に大量の魚が揚がると1時間以上に渡り、水揚げすることになります。
 大輔くんも入社直後は、その重労働で体中が筋肉痛になったとか。

 またキャリアアップを果たすのも難しい世界です。上下関係が厳しい中で、下積みに耐え、人望と技術を得た漁師だけが地位を築くことができるのです。

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NHK日本放送協会