あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑

no.97 パン職人

インタビュー
インタビュー
「おいしくなれよ」 世界一種類が豊富と言われる日本のパン。
「パンは生き物」といわれるように、種類によって製造方法が異なるだけでなく、その時の気温や湿度によっても出来が違ってきます。常に同じ味のパンをお客様に提供するためには、長い年月をかけて培われる知識と経験が必要です。
全国に74店舗をかまえる、ベーカリーチェーンに入社5年目の上石伸彦さん(22歳)。粉からつくる焼き立てのパンにこだわるこのベーカリーチェーンで、パン生地の仕込みを担当しています。気温や温度に最も左右され、パンの仕上がりの9割を決めるとも言われる重要な仕事です。
そんな上石さんの目下の目標はフランスパンを上手く作れるようになること。バターや砂糖といった副材料を一切使わないフランスパンは、味のごまかしが利かず、製造工程の一つ一つが出来に反映されてしまう、職人の腕が最も問われるパンなのです。
フランスパン作りに挑戦する上石さんの姿を通して、パン職人の仕事を紹介します。

暑さ、重さもなんのその。おいしいパンをつくるため、自分に厳しく、パンには優しく。

■ パン職人とは? ■ パン職人になるには?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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 今や私たちの生活になくてはならないものとなったパン。これを作るのが、パン職人の仕事です。実はこのパン作り、毎日レシピどおりに作っていればいいというわけではありません。
 パンの主な材料は、小麦粉、塩、水、そしてイースト。イーストとは酵母、つまり微生物の一種です。このイーストがパンの生地の糖分を栄養源に炭酸ガスを発生させることで、パン生地を膨らませるとともに、パンの風味の元となる成分なども作り出します。これが発酵です。日々の気温や生地を寝かせておく時間によって、発酵の進み具合は大きくことなります。そして、発酵の進み具合によって、パンの出来が大きく左右されるのです。
 パン職人は、五感をフルに使って、それぞれの生地に最適な発酵状態を見極め、いつも同じ味のパンを作っていかなければなりません。しかも、大きなパン屋では、一日に100種類以上のパンを時間通りに焼き上げなければなりません。時間に追われつつも、常に微妙な判断を求められる、とても奥が深い仕事です。 ◇全国の状況・今の状況  世界一パンの種類が豊富、といわれるほど、日本では様々なパンを食べることができます。全国には1万4000店以上のパン屋があると言われ、そのほか、スーパーやコンビニで販売されるパンを作っている大手パンメーカーも、工夫を凝らした様々なパンを製造しています。さらに、最近では、コンビニやレストランなどが、独自にパン工場・工房をつくり、オリジナルブランドのパンを製造しはじめるなど、パン業界は広がりを見せています。
 このように、パン職人の活躍の場が増える一方で、競争も激しくなってきています。そのため、焼き方や原材料にこだわったり、種類の豊富さや味で勝負したりなど、お客様にどうアピールしていくかが問われています。 ◇どんな人が向いてるの?  今回取材した上石さんの職場の方々の多くが、パン職人に必要な条件として「パンが好きなこと」「ものづくりが好きなこと」を挙げられました。
 上石さんの職場の場合、早番の時は遅くても4時から、普段の日でも7時までには仕事を開始しなければなりません。工房の温度は常に30度以上。一日中たちっぱなしで、かつ、重い粉や生地を運ぶなど、かなりの体力も必要とされます。また、材料の配合や温度の計算など、日々、数字とも向き合っていかなければなりません。
 しかし、その日の仕事の結果が、その日のうちに出る仕事でもあります。
 パンが好き、ものづくりが好き、そして、仕事の成果を日々感じていたい、という人が向いているといえるでしょう。

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■ パン職人になるには? ■ パン職人とは?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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◇どうすればパン職人に?  パン職人になるために、特に必要な資格はありません。
 パン作りの専門学校などでパン作りの基礎的な知識と技術を学んでから就職する道もありますが、普通の学校を卒業してから直接、パンメーカーやベーカリーショップに就職することも可能です。上石さんの会社の場合は、経験は全く問わず、高校卒業から大学院卒業まで、幅広く採用しています。
 また、アルバイトから始めて、経験を積んだ後、社員として採用される場合も多いようです。 ◇ステップアップの道すじ  少人数で営業している個人営業のパン屋などをのぞいて、パン作りの仕事は、工程により分業になっている場合がほとんどです。上石さんの会社の場合は、生地作り、生地の成形(パンの形を作る作業)、パンの焼き上げに分かれていました。生地の発酵の状態を判断する、限られた時間内に決められた量の生地をきれいに形にする、微妙な焼き上がりのタイミングを判断する。これらのことができるようになるには、それぞれ数ヶ月から数年の経験が必要です。一つ一つの工程をじっくり学び、経験と勘を養うことが大切です。そして、全ての作業が一通りできるようになれば、さらにオリジナルのパンづくりなど、創造性が求められるようになります。
 技術を身につければ、将来的には自分の店を開くこともできます。しかし、大型オーブンやミキサーなど、厨房器具や設備工事など、多額の開店資金が必要です。

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■ 収入・待遇は? ■ パン職人とは?■ パン職人になるには?■ 仕事の味

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◇収入のめやす  上石さんの会社の場合、高卒の初任給は16万円程度。
 大卒の初任給は19万円程度です。 ◇パン職人のある一日

上石さんの一日(早番の場合)

ある一日 ◇生活サイクルと休日  早番の時の勤務時間は4時から13時までですが、開店の10時までにパンを店頭に並べるためには、早番の生地作りが時間通りに終わっていないといけません。そのため、仕事のスピードに応じて、出勤する時間も自分で判断しなければなりません。上石さんは、3時には出勤していました。また、普通の勤務のときでも、7時までに出勤しなければなりません。勤務時間は16時まで。朝が早い分、仕事が終わるのも早いのが特徴です。
 焼きたてのパンは暑い夏より寒い冬のほうがよく売れるので、冬場は閉店近くまでパンを焼かなければならないことも。そのため、残業も冬場のほうが多くなります。上石さんの会社の場合は、完全週休2日制です。

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■ 仕事の味 ■ パン職人とは?■ パン職人になるには?■ 収入・待遇は?

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◇おいしさ  上石さん曰く、「パンは幅広い年代の人に食べられるもの。いろんな世代の人を幸せにできるのが喜び」。やはり、焼きたてのおいしいパンは人を笑顔にします。
 しかし、いいパンが焼けたと思っても、お客様がおいしいと言ってくれなければ意味がありません。自分が焼いたパンを、お客様がうれしそうに買っていく、そしてたまにお客様に直接、「おいしかったよ」といってもらえることが、やはり何ものにも変えがたい喜びだそうです。
◇苦さ  まだ経験の浅いうちは、マニュアル通りにパンを作っていくしかありません。しかも、常に30度を超える工房の中で、時間に追われながら、同じ作業を繰り返す・・・。パン職人を夢見て就職しても、すぐに辞めてしまう人が多いという厳しい世界です。
 しかし、実はパン作りは同じ作業の繰り返しではありません。いつも同じおいしさのパンをつくるためには、日々の気温や湿度の変化に応じて、生地に加える水の量や温度、発酵時間などを微妙に変えて、生地の発酵具合を調節する必要があります。この奥深さが、パン職人という仕事の最大の面白さの一つです。最初はきつい仕事に思えてしまうかもしれませんが、経験を積んで、こうした面白さが見えてくると、パン作りにはまってしまうそうです。
 また、パン作りにはまると、パンの生地が発酵するために最適な工房の暑さも、パンのためならしょうがない、と思えるようになってしまうんだそうです。

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NHK日本放送協会